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【検証】変わる金型基金 新たな船出2
3つの大きな課題解決へ

 日本金型工業厚生年金基金(上田勝弘理事長、以下金型基金)が今秋に制度移行を進める狙いは、現制度で抱える課題を解決するとともに、退職金の年金化など福利厚生の持続可能な制度の構築にある。以降2号にわたり、今の大きな3つの課題と制度移行によるそれぞれの解決策をみていく。

【前号:【検証】変わる金型基金 新たな船出 解散後、新制度に移行

 現制度では「定額加算」、「高い予定利率」、「終身年金」の3つが大きな課題となっている。まず、1つ目の「定額加算」とはどういうものか。金型基金では将来、支払われる年金のための掛け金は事業者が支払い、給付は各人が受け取る。定額加算は、掛け金は給与に比例するにもかかわらず、加入期間のみによって給付額が変わる仕組みだ。つまり、給与を多くもらっている役職者も、一般社員でも同じ期間働けば同じ額が給与される。 

 なぜこうなったかというと、業界特有の事情もある。基金設立時の1969年は右肩上がりで創業者も多い時代。「社員が辞めた時に多く年金を取ってほしい」という、経営者に比べ収入の低い社員に十分に加算があればいいという親心からだ。

 新制度では退職金を意識した給与に比例する形に変える。具体的には掛金率を8パターンから選べ、大きな掛金を払った企業にはその分給付も増やす。つまり多く給付している企業に勤める個人の給付も増える。

 2つ目が「高い予定利率」を安定的に運用できる水準に見直すこと。年金の給付額=掛金+予定利率に基づいた運用益でまかなわれる。予定利率が実際の運用利率を下回れば不足金が発生し、補うには掛け金を増やさなければならない。

 こうした背景から発足時に5.5%と非常に高く設定していた予定利率を2014年に4%に引き下げたが、それでも高い水準にある。今回の制度移行では、予定利率を2%程度に引き下げる計画だ。この数字の根拠は99年以降の平均運用利回りが2.24%だったため。実際の運用利回りより予定利率を低く見積もることで、不足金を出さずに、安定的に運用していくのが狙いだ。

 次号では、3つ目の「終身年金」が抱える課題とその解決策、制度移行するメリットなどについてみていく。

金型新聞 平成30年(2018年)2月10日号

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