ジーエルサイエンス 0.1μmの超薄膜コーティング「InertMask」の適用効果〈AD〉
ジーエルサイエンスでは、離型性が高い超薄膜コーティング「InertMask」の用途開発を行っている。元々、分析技術の精度向上などを目的に開発したコーティングだったが、開発品の評価段階で非粘着性や防汚性に優れていることが判明。プラスチック成形用金型の離型性向上や、ダイカスト冷却ノズルのカルキ汚れ蓄積による詰まりの防止などの実績がある。その効果について紹介する。

「InertMask」とは
InertMaskは金属表面の不活性化を目的に開発された機能性薄膜。
金属表面を柔軟性の高いガラス系の薄膜で覆い不活性化すると、金属吸着性の高い化合物 (アミン類など) の安定した分析が可能になる。加えて、樹脂の離型性の向上、汚れの付着抑制、撥水性の向上など様々な機能を付与することができる。自社開発した成膜装置によって、ステンレスチューブの内側や複雑な形状の金属部品にも均一にコーティングすることができる。
「InertMask」の期待される効果
InertMaskを樹脂成形の金型へ処理することのメリットは
・膜厚が0.1~0.5μm程度と薄いため、既存の金型へそのまま適用可能
・離型性の向上
・高い防汚性や防錆性
・高い耐熱温度(~300℃程度)
・CVDのため、複雑な形状の部品でも全体に均一に成膜が可能など―がある。
さらに、成形品への付着を懸念して離型剤を使用できないような場面でも、密着性の高い膜構造になっているため、使用できる可能性がある。
実証実験結果
テープ剥離試験で、高い離型性を実証
上記の中でも、金型への適用でメリットが大きいのが、「高い離型性」だ。離型性の簡易的な評価として180°テープ剥離試験を実施し、比較対象としてPTFE(polytetrafluoroethylene)を同時に評価した(図1)。使用したテープの粘着力は8.83 N/25 mm、試験機のロードセル容量は50 N、試験速度は300 mm/minで実施し、50~200 mmの範囲の平均値を記録した。

ステンレス板にInertMask処理をすることでテープの剥離性が大幅に向上していることがわかる。PTFEと比較してもInertMaskの方がテープの剥離性は優れていると言える。
樹脂でも高い離型性 300℃で加熱した場合も簡単に剥がせる
また、ポリプロピレン樹脂のペレットを使って、樹脂に対する離型性の簡易評価を行った(図2)。ポリプロピレン樹脂のペレットを各種テストピースの上で加熱溶融し、冷却固化後にピンセットで剥離した。InertMask処理を行ったものでは、300℃で事前に加熱していた場合でも樹脂を簡単に剥がすことができる。一方で未処理のテストピースでは剥離に力が必要で、剥離後のテストピースに跡も残った。

腐食評価試験で高い防汚性、防錆性を実証
錆の発生や汚れ詰まりの抑制効果もInertMaskメリットで、ダイカストの冷却ノズルの錆の発生や、カルキによる汚れ詰まりの効果が見られた。InertMaskによる錆や汚れの抑制効果を評価するために複合サイクル試験を行った。複合サイクル試験は部材の腐食などを評価する加速試験で、塩水噴霧、乾燥、湿潤といった環境を繰り返すことで腐食を促進させる。図3にその試験条件と結果を示した。InertMask処理によってステンレスの錆の発生が抑制されていることがわかる。

InertMaskは塩水に耐性のある撥水性の膜で、ステンレス表面に成膜することによりステンレスが塩水に直接触れるのを防ぐことができ、錆の抑制につながったものと思われる。工業用水などが流れる冷却ノズル内でも同様のことが起こることからInertMask処理が有効であると考えられる。
最後に
当社は分析を支える機器や消耗品の販売がメイン事業。中でも、質の大きさ・吸着力・電荷・質量・疎水性などの違いを利用し、物質を成分ごとに分離する「クロマトグラフィー」に関連する製品に強みを持つ。その製品は主に水質、環境、医薬、食品などの分野で広く使われてきた。InertMaskは、その主要技術であるシリカゲルの表面化学修飾の技術をベースとして開発した。これまでは他分野で採用が多いが、見てきたように、離型性や防汚性、防錆性など、金型分野にも効果が大きいと確信している。サンプルや試験などにも応じるので、お気軽にお問い合わせいただきたい。
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金型新聞 2023年10月1日