2020年11月30日(月)

汎用機で技能伝承

若手に金型づくりの基礎

NC操作、発想力育む

 金型メーカーで汎用機を社員教育に活用する動きが広がっている。黒田精工では汎用機を設備した研修施設を新設。昭和精工やチバダイスでも汎用機をベースとした人材育成に力を入れている。汎用機を知る金型技術者が減り、技能伝承が難しくなる将来への危機感や、若手の技術力を上げる狙いがある。汎用機で手早く加工して効率を上げることや、加工の原理原則を理解しその知識をNC機に活かすなど汎用機を教える利点は大きい。

黒田精工の「クロダものづくり道場」
黒田精工の「クロダものづくり道場」

 「汎用世代からNC世代への伝承の最後のタイミングかもしれない」。精密プレス金型を手掛ける昭和精工の木田成人社長はこう話す。NC加工が主流となり、昔に比べ汎用機を使う機会が減り、汎用機を知る若手技術者が少なっている。
 そのため、将来的に汎用機を使える技術者がいなくなることを危惧し、3年前から古い汎用フライス盤を再利用したり、汎用研削盤を新たに設備した。そうしてベテランから若手への技能伝承に取り組んでいる。近く汎用の旋盤も購入する予定という。

 モータコア金型を手掛ける黒田精工では今年3月、千葉県の富津工場に「クロダものづくり道場」を新設した。ベテラン社員やOBを講師として招き、若手技術者だけでなく、営業や管理部門の社員にも汎用機を使って加工の基礎を教える講習会を開いている。
 黒田浩史社長は「ものづくりの会社として、技能を深める場が欲しかった」と人材育成の活動の一環として、この道場を立ち上げた。旋盤やフライス盤などあらゆる種類の汎用機を8台設備。2カ月に1回のペースで数日間の研修会を開き、受講者のレベルに合わせたプログラムを進めている。

 歯車金型メーカーのチバダイスでも旋盤や研削盤、フライス盤など約45台の汎用機を設備し、新入社員に入社後1年間で全ての機械を扱えるように教育する。社内の加工ノウハウを全てリスト化し、体系的に技能伝承できる環境を整えている。
 こうした教育を進めるのは、単なる技能伝承の側面だけでなく、NC加工技術を高める狙いもある。最適な工具選定や加工条件、加工パスの出し方などは、「自分の手で加工の生の感覚を経験しないと分からない」と黒田精工の渡邉英孝研修センター長は指摘する。

 NCプログラム上だけだと、工具に極度の負担を掛けるツールパスを組んでしまったり、加工効率の悪い工程を選んでしまう恐れがある。チバダイスの千葉英樹社長は「汎用機を経験してはじめて気づくことがたくさんある」と話す。
 昭和精工の林健一さんは入社後に汎用機を覚え、今はマシニングセンタ(MC)も使いこなす技術者の一人だ。汎用機から機械加工を覚えたことについて「汎用機だと加工順を考慮しなければ加工できないこともあるので、その経験やノウハウはMCでも活かせている」。

 工作機械や工具の進化は目覚ましい。ただ、それらを使うのはあくまで人。木田社長は「今後もMCが活躍するのは間違いないが、原理を知らなければ性能を極限まで引き出すことはできない」と汎用機を活用した人材育成の目的を話した。

金型新聞 平成27年(2015年)9月10日号

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