金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

NOVEMBER

21

新聞購読のお申込み

【金型の底力】東京鋲螺工機 燃料電池セパレータ用金型の開発に着手

超硬金型、第2世代へ
セパレータ用金型に挑戦

高味 寿光社長

 冷間鍛造、冷間圧造用の金型を手掛ける東京鋲螺工機は、燃料電池用セパレータ用の超硬合金金型の開発に着手した。これまで超硬合金を直彫切削した金型を「Tokyo‐ACE」と名付け商品化してきたが、セパレータ向け超硬金型はサイズも精度もワンランク上。高味寿光社長は「課題もあるが、『Tokyo‐ACE』の第二世代として早々に技術を確立させたい」と意気込む。

セパレータ用金型

超硬切削のノウハウ活かし目標を達成

 東京鋲螺工機はその社名通り、ねじやリベット、ピン、接点などのダイス金型を主力に手掛ける冷間鍛造、圧造用金型メーカー。中でも、強みとするのが超硬合金の直彫切削加工だ。2011年に微細加工機とダイヤモンド工具を活用し、超硬合金用の金型の量産に成功。「Tokyo‐ACE」と名付け商品化している。

 その特長は、長寿命は当然ながら、短納期で製造できること。成形と同時に鏡面磨きを行うため「2週間かかっていたものが2日でできる」(高味社長)。こうした特長からベアリング部品や電気接点などで採用されてきた。 

 そんな同社が現在挑戦しているのが、超硬合金を使った燃料電池用セパレータ向けの金型だ。高味社長によると「現在のセパレータ用金型はSKD11(HRC60)でワークサイズは300×150㎜。形状精度は±3μmで、溝形状は0・6×0・25㎜、面粗度はRaで3nm」だという。

 「超硬材料でいきなりこの数値を全てクリアするのはハードルが高い」ため、段階的に加工目標を設定した。まず、材質は超硬(HRC81)で、サイズは実際セパレータの8分の1、形状精度±5μm、溝形状1.15×0・25、Ra3nmを目標とした。これまでの超硬切削ノウハウを活かし、荒取りを電着工具、中仕上げまでをダイヤモンドコーティング工具、仕上げはダイヤモンド工具メーカーと共同開発した特殊工具を採用した。

次世代への技能伝承を進める

 結果はどうか。従来に比べ、切削除去量が多いため、工具欠損があった一部を除き、形状精度はほぼ±3μを達成。表面粗さもRa3nmをクリアした。

 しかし課題も残る。その一つが約120時間かかったという加工時間。また、工具の品質安定と使用本数も大きな課題だ。負荷が高い部位で欠損した可能性が高く「加工条件を見直す必要がある」。

 また、多数のダイヤモンド工具を使ったことで、コスト高になり「放電との組み合わせなど、色んな選択肢を排除せず検討していきたい」という。

 現時点で採用の段階にはないが、高味社長は「燃料電池車1台でセパレータは約800枚必要。SKD11では約20万枚しか打てない。超硬では10倍以上の200万枚以上を打てるはず」とみる。年内には条件を見直して新たな実験を行い、早期の採用を目指す。

 「今回の挑戦で超硬切削ノウハウは高まっている。サイズも精度も向上させた『Tokyo—ACE』の第二世代として早々に技術を確立させたい」。

  • 本  社 :  埼玉県新座市野火止7-13-3
  • 電  話 :  048・478・5081
  • 代表者  :  高味寿光社長
  • 創  業 :  1961年
  • 従業員  :  28人
  • 事業内容 :  リベット、接点などのヘッダー金型、超硬パンチ、ピン、ダイスの製造など。

Q.人材育成で何に取り組んでいますか

定年なくし、技能伝承

 当社には元々70歳を超える技術者は何人かいたのですが、「心と体が健康ならいつまでも働いて欲しい」との思いから、昨年に定年制度をなくしました。とはいえ、こうしたベテラン技術者がいる間に彼らのスキルを若手に伝承する必要があります。だから、現在は若手に課題を与え、年長者のスキルをOJTで学んでもらう環境を作っています。

金型新聞 2021年3月10日

関連記事

ミスミグループ本社 24年3月期売上高1.5%減の3676億円

世界的な設備投資需要が低迷 ミスミグループ本社(東京都千代田区)の2024年3月期決算は、売上高が前年同期比1・5%減の3676億4900万円となった。製造業を中心にグローバルで設備投資需要が低迷し、減収。今期の売上高は…

イースタン技研 河西正彦会長が死去

放電加工周辺機器の販売やプレス金型製造などを手掛けるイースタン技研(神奈川県大和市、046-269-9911)会長の河西正彦(かわにし・まさひこ)氏が8月19日午後3時47分、死去した。79歳。東京都出身。通夜・告別式は…

新日本工機 金型仕上げ品評会 自動車4社が金型を評価

新日本工機(大阪府堺市、072-271-1201)は11月13日、JIMTOF会場内で、自動車メーカーの技術者らが、同社のマシニングセンタで加工した金型を評価する「金型仕上げ品評会」を開いた。 ブースに設けられたスペース…

DMG森精機 EVで金型向け受注が好調

DMG森精機 EVで金型向け受注が好調

 DMG森精機は2020年度通期決算で、売上高3283億円(前年比32.4%減)、営業利益107億円(同71.4%減)と発表した。コロナ禍で受注環境が悪化したものの、デジタルツインショールームやオンライン展、オンラインセ…

キヤノンモールド 工数削減し、生産能力向上【Innovation〜革新に挑む〜vol.8】

金型の付加価値を追求 キヤノングループで500人の従業員を抱える国内最大手のプラスチック用金型メーカー、キヤノンモールド。茨城県内に2つの生産拠点を構え、キヤノン製品向けの金型の他、自動車部品や医療機器など幅広い分野の金…

トピックス

AD

FARO 樹脂成型品や自動車シートの測定での3次元測定アームの活用と新製品Qua...

樹脂成型品の工程管理・不具合解析 樹脂成型品の工程管理や不具合解析の現場では、実際の製品や試作品と設計図との差異把握や、製品や金型の工程ごとの変化量把握、不具合解析や要因分... 続きを読む

関連サイト