岐阜県金型工業組合は第52回通常総会を開き、役員改選を行った結果、加藤丈詞氏(カトーメテック社長)が新理事長に選ばれた。また、副理事長には大垣精工の小森二郎氏、朝日興業の森良二氏に加え、丸順の川瀬典男氏が新たに選出された…
令和4年全国新春金型座談会 オンラインで開催
どうなる金型業界
日本金型工業会(小出悟会長・小出製作所社長)は1月6日、令和4年全国新春金型座談会をオンラインで開催し、約100人が聴講した。小出悟会長をはじめ副会長や各委員会委員長の計7人が出席し、「どうなる金型業界」をテーマに意見を交わした。
変化する金型業界 要求への対応力を強化
EV化やカーボンニュートラル、情報セキュリティ、SDGsなどで金型業界が大きく変わるという認識は共通している。加えて早瀬氏は「非常に厳しいコスト競争に直面するだろう」と警鐘を鳴らした。その上で小出氏は、「金型は無くてもいいとは絶対にならない」とし、「今までやってきたことを一度全て捨て去ったうえで時代を見渡し、必要なもの不要なものを考えなければならない」と強調。「自動車産業以外の選択肢を増やすこともある」。
鈴木氏も「お客様あっての金型業界。グローバルな競争を余儀なくされ、デジタル化や自動化など総合的に自分たちのレベルを上げていかなければならない」とし、「自社の強さを理解してもらえるような提案やモノづくりを発信していかなければならない」と述べた。山田氏も、「いち早く情報を入手し、自分の足元を見直して、どのように変化を遂げていけば良いかを考えるべき」とし、工業会としての貢献にも言及した。
岩渕氏は「単純に金型を作るのでなく、色々な業種の方々と一緒になってお客様の要望に応えることが使命」とし、平林氏は「個々の特徴ある技術をもって連携するなど企業規模を大きくして要求に応えていく必要があるのではないか」と提案。一方、池上氏は「量産用ツールとして世界の金型需要が増える中、1社1社がどこで尖って、どのように世界中からコンタクトしてもらえるかがキーワードになると思う。お客様から声をかけて頂ける会社であり、それに対応・チャレンジできる地力を持つことが大事」と語った。
人材 職能に応じた賃金体系
各社とも、人手不足は大きな課題。小出氏は、「単純化された仕事は自動化の前段階として女性や高齢者の働きも期待できる」とすると同時に「カーボンニュートラルや情報セキュリティ、自動化などは、専門的知識を持つ人材が必要であり、工業会としてもサポートを検討している」と述べた。
女性については、鈴木氏が、「複数の女性が同じ職場にいると定着しやすい」とした他、「求めるスキルは専門性と多能工。コスト面から、外注を活用すると共に、今よりも1つ上のレベルを目指す社員を一人でも増やすことが非常に重要」と語った。
岩渕氏は、「職種・職能に応じた価値を決めていかないと、人の採用・定着に繋がらない」と予測し、「人の面でのソーシングも協力し合うことが必要」と投げかけた。平林氏も「今いる人材をしっかり教育して、価値創造できるように求めていきたい」とした上で、「優秀な人材は、若手でもそれに見合った対価が必要になるので、賃金体系の見直しも必要」と述べた。
池上氏は「付加価値を生み出すマネージャーは、外部から来て頂く」方法もあるとした。
企業連携 工業会も連携環境を構築
小出氏は「金型専業なので、量産メーカーとの連携は取りたいと思っているし、そうしないと良い金型ができない」とした上で「違う領域に入ろうとすると、補ってもらえるパートナーを何らかの形で見つけたり、精通している人を再雇用したりして知識を蓄え、それが進めば企業対企業の色々なことができるのではないか」と述べた。
鈴木氏は「秘密保持契約を結びながら、まず、技術的な提携を考えながら進めていきたい」と語り、山田氏も「自社で壁を作らず、皆さんの協力を頂き、協力できるものは協力するという考えで進めている」と述べた。平林氏は、コロナ禍での体験から「忙しい会社に社員をシェアすれば、仕事のない会社はある程度人件費を抑えることができる。今後、状況に応じて実施する」と、近隣企業との社員シェア実施について語った。
池上氏は、社長就任以来ずっと誰かと連携してきたとし、「今後は、自社では手に負えないデジタルの問題やCNなど、前向きな会社と一緒に学んで連携していきたい」。岩渕氏は「工業会全体で材料や表面処理ほか金型づくりのインフラに関わる人たちとの協業関係を作っていくことが重要」と言及した。
生産性向上 自社に即した効率向上策
人材不足対策の一つとして長崎に進出した小出氏は「長崎には『君たちの頭で独自に考えて、やれることをやれ。最終的には月700時間稼働を目指せ』と言っている」という。また、ピーニング装置を導入して、表面改質事業を始め、生産効率化を期待している。鈴木氏は、ロボット活用による24時間稼働やミス防止による効率向上など「買った設備を鈴木仕様に改造することで差別
化に繋がる」と強調した。
山田氏も、多能工化を挙げる一方、長時間無人稼働、段取りの効率化を進めている。「持っている設備の性能をフルに引き出すことで改善の余地はある」とも。
岩渕氏は、高コストの高度化した機械は取り扱いも難しく、加工中にミスをすると復旧に時間とコストがかかるが、「現場には恐れずにチャレンジしてもらうことが大切」と述べた。
また「機械の稼働率を上げるために、同業他社との間で仕事を融通し合うことも必要」とも語った。
早瀬氏は「大物パネルだけでなく、付属する小さい部品も一括で金型を供給するようにしたい」と語った。平林氏は、測定・検査分野の省人化に投資している。「生産オペレータがスイッチを押すだけで自動プログラムにより測定できる自動測定機」や「カメラと照明を使った自動外観検査装置」などだ。
池上氏は、リーマンショック後、償却範囲で投資を行い、稼働率などの見える化に取り組んできたが、「少ない予算の中で、一番いい機械を買う」ように指示しているという。そして「ナノ加工機にチャレンジし、必要とされる時に備えたい」と語った。
金型新聞 2022年2月10日
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