自動車の大型プレス用金型及び部品を製造するJ‐MAX。特に、ハイテン材・超ハイテン材用の金型で高い技術を有し強みを発揮している。「2030年度までに、CO2排出量を2013年度比半減、50年度にはカーボンニュートラル実現…
熟練の技生かし金型の修正を減らす方法【変わるトヨタの型づくり】
PART2:匠の技をデジタルに帰す
金型の修正ゼロへ


匠がデジタル技術を駆使すれば金型の修正を減らせないか—。モビリティツーリング部は、そんな取り組みにチャレンジしている。熟練の技を生かし、デジタルの金型モデルでトライと修正を重ね、品質を作り込む。解析精度を高めることでリアルの金型修正を減らしている。
金型の匠がパソコンに向かい、金型モデルを作製する。使っているのは3次元モデリングソフト「フリーフォーム」。手に持つペン型ツールの先端で実際にモデルに触れているかのような感覚を得ながら、金型モデルのデジタルデータを作製していく。
金型モデルを作製したら、そのモデルを使ってプレス加工のCAE解析をする。プレス加工で発生するシワや歪み。解析でそうした不具合が出たら、モデルデータの形状を作り直す。解析と作り直しを重ね、デジタルの金型モデルの品質を高めていく。
この取り組みの目的は、リアルの金型の修正回数の低減だ。モビリティツーリング部が手掛けるのは、自動車のボディなど外装部品のプレス金型。外装部品はデザイン性の高い曲面や起伏があり、その形状を絞りや抜き、曲げで実現するのが難しい。
蓄積した技術はあるが、金型は毎回、一品一様のためその答えをすぐに導き出せない。そのため長年の経験で培った匠のノウハウや知識によって解決策を探っていく。それでもトライと修正は約3回以上、必要だった。
この取り組みはデジタル上で、これら一連のプロセスを金型製作に着手する前にするというもの。2020年取り組み始めてまだ1年半だが、目に見えてその成果が出ている。修正回数は3回以上から1回に。この取り組みは今年後半に発売する自動車のサイドメンバーアウターの金型づくりで実施したという。
本来は修正の低減が狙いだが、そのほかにも効果が出ている。デジタル上で金型モデルを作製するため、自由な発想を盛り込みやすく、リアルの溶接肉盛り作業も不要になった。またそれらの作業をデジタルで『視える化』できたため匠の技能の伝承にも役立っている。
モビリティツーリング部がここ数年、目標の一つにしているのが「金型製作時間をいかに早くするか」。この取り組みは、その一環。とはいえ今なお道半ばだ。リアルとデジタルのストロークの状態の違いや、シワの出方が一致しなかったり、金型製作過程でプレス不具合の原因をつくる場合もあるなど課題が残る。荒井清志課長は、「課題を乗り越え、やり直しゼロを目指す」と話す。
ただ、デジタルツールは一つの手段であり、それを使いこなす技能や知識を高めることが重要という。その根底にあるのはプレス成形、そして金型の本質をいかに理解しているか。根源的な技術力はこれからも磨き続けていく。
金型新聞 2022年6月9日
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