金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

MAY

05

新聞購読のお申込み

熟練の技生かし金型の修正を減らす方法【変わるトヨタの型づくり】

PART2:匠の技をデジタルに帰す

金型の修正ゼロへ

新プロセス
従来プロセス

匠がデジタル技術を駆使すれば金型の修正を減らせないか—。モビリティツーリング部は、そんな取り組みにチャレンジしている。熟練の技を生かし、デジタルの金型モデルでトライと修正を重ね、品質を作り込む。解析精度を高めることでリアルの金型修正を減らしている。

金型の匠がパソコンに向かい、金型モデルを作製する。使っているのは3次元モデリングソフト「フリーフォーム」。手に持つペン型ツールの先端で実際にモデルに触れているかのような感覚を得ながら、金型モデルのデジタルデータを作製していく。

金型モデルを作製したら、そのモデルを使ってプレス加工のCAE解析をする。プレス加工で発生するシワや歪み。解析でそうした不具合が出たら、モデルデータの形状を作り直す。解析と作り直しを重ね、デジタルの金型モデルの品質を高めていく。

この取り組みの目的は、リアルの金型の修正回数の低減だ。モビリティツーリング部が手掛けるのは、自動車のボディなど外装部品のプレス金型。外装部品はデザイン性の高い曲面や起伏があり、その形状を絞りや抜き、曲げで実現するのが難しい。

蓄積した技術はあるが、金型は毎回、一品一様のためその答えをすぐに導き出せない。そのため長年の経験で培った匠のノウハウや知識によって解決策を探っていく。それでもトライと修正は約3回以上、必要だった。

この取り組みはデジタル上で、これら一連のプロセスを金型製作に着手する前にするというもの。2020年取り組み始めてまだ1年半だが、目に見えてその成果が出ている。修正回数は3回以上から1回に。この取り組みは今年後半に発売する自動車のサイドメンバーアウターの金型づくりで実施したという。

本来は修正の低減が狙いだが、そのほかにも効果が出ている。デジタル上で金型モデルを作製するため、自由な発想を盛り込みやすく、リアルの溶接肉盛り作業も不要になった。またそれらの作業をデジタルで『視える化』できたため匠の技能の伝承にも役立っている。

モビリティツーリング部がここ数年、目標の一つにしているのが「金型製作時間をいかに早くするか」。この取り組みは、その一環。とはいえ今なお道半ばだ。リアルとデジタルのストロークの状態の違いや、シワの出方が一致しなかったり、金型製作過程でプレス不具合の原因をつくる場合もあるなど課題が残る。荒井清志課長は、「課題を乗り越え、やり直しゼロを目指す」と話す。

ただ、デジタルツールは一つの手段であり、それを使いこなす技能や知識を高めることが重要という。その根底にあるのはプレス成形、そして金型の本質をいかに理解しているか。根源的な技術力はこれからも磨き続けていく。

金型新聞 2022年6月9日

関連記事

【特集】金型企業年金新制度へ 3氏に聞く、新制度の背景とメリット〜「経営」と「社員の人生」支える仕組み〜

【特集】金型企業年金新制度へ 3氏に聞く、新制度の背景とメリット〜「経営」と「社員の人生」支える仕組み〜

掛け金率選択制に 税控除など利点大きく 社員の第2の人生豊かに 日本金型工業厚生年金基金は昨年11月2日、いったん解散し「日本金型工業企業年金基金」として生まれ変わった。高い予定利率などの旧制度の課題を解決するとともに、…

リーダーの条件Part3
いま活躍するリーダーの心得

 新型コロナで需要が減速し、自動車の電動化で産業構造が変わるかもしれない。先の見通しにくい混沌とする時代に、リーダーはどういったことを心掛け、自らの指針としているのか。時代をリードに考えを聞いた。 伊藤製作所 伊藤 澄夫…

牧野フライス製作所 執行役員 高山幸久営業本部長に聞く【特集:進む設備の大型化】

大型機組立工場新設の理由 牧野フライス製作所は昨年末、山梨県富士吉田市に大型加工機の組み立て工場を新設すると発表した。12年ぶりの新工場で、総額210億円を投資し、大型加工向けを強化する。2026年初めに本格稼働する予定…

【検証】変わる金型基金 新たな船出4<br>退職金の一部を年金化

【検証】変わる金型基金 新たな船出4
退職金の一部を年金化

 3回にわたり、日本金型工業厚生年金基金の制度移行の概要や、基金の課題をみてきた。様々な課題を解決すべく、有期年金化したり報酬比例としたりするなど、企業の負担を増やさず、支給期間を選べる柔軟な制度に変更する予定だ。では、…

守りから攻めへ<br>ー本紙金型メーカーアンケートー

守りから攻めへ
ー本紙金型メーカーアンケートー

生産性向上や技術開発 守りから攻めの設備投資に転じる金型メーカーが増えている。日本工作機械工業会によると、金型メーカー向けの受注額の4―9月期累計は前年度比で4割超増加した。これまでの買い控えの反動や、補助金や減税などの…

関連サイト