金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

FEBRUARY

17

新聞購読のお申込み

企業と学生つなぎ交流の場をつくる 鳥飼祐介氏(経済産業省企画調整係長)【鳥瞰蟻瞰】

経済産業省 企画調整係長 鳥飼 祐介氏 

素形材産業の人手不足は、業界共通の課題です。製造業全体の平均から見ても、求人倍率が高い傾向にあります。中途採用や外国人労働者に頼り、人手を確保している企業が多い。

しかし、人手を確保できれば誰でも良いわけではありません。後継者の育成や技術の伝承が進まなければ、事業存続が危ぶまれます。これらを行うには、若い人材を長い期間かけて育てなければいけない。若手人材として有望なのが工業高校の新卒学生。純粋で素直な子が多く、教えがいがあるため需要は高いです。

一方、少子化の影響を受け、定員割れしている工業高校が軒並み増えています。学生に対し、倍近くの求人が出ており、採用競争は激化。中小企業が多い素形材産業は地元の大企業と比べ、学生に目を向けてもらう機会が少なく、採用に苦慮している企業が多いと聞きます。

また、工業高校生は鋳造や鍛造以外の素形材産業について学ぶ機会が少ないみたいです。例えば金型という言葉は知っていても、どのように作られているかは知らない。これでは進路選択の候補にも挙がりません。

このような現状を踏まえ、人材確保のサポートとして、素形材産業を知ってもらうことがスタートだと考えました。生徒が金型製作の魅力を知り、興味を持ってくれれば採用につながります。そこで、企業が製造現場の「ものづくり」を教える「出前授業」を始めました。

出前授業では企業が工業高校に訪問し、1コマ50分で授業を行います。教科書に載っていない製造現場の最新技術などを知ることができるため、多くの生徒は面白いと感じてくれているようです。

私の仕事は、企業と工業高校を「つなげる」ことです。出前授業をしたい企業の要望をヒアリングし、工業高校との交流の場を作ります。授業後のアンケートを取ると、継続的な交流をしたいという生徒の声は多い。このような機会を学校、企業の双方が求めていることを改めて実感しました。

進路を選ぶ際、高卒生は「一人一社制」という就職慣行があります。学校などの推薦により決められた企業に就職活動をし、採用されればそこにしか行けません。高校生は、学問を優先すべきであるという考えに加え、学校側の負担も踏まえた慣行であると理解しています。しかし、就職後のミスマッチも多く、厚労省などの資料によると高卒生の早期離職率は約4割と非常に高い。

私も工業高校出身で、学生時代は工業化学を学んでいました。私の学生時代も進路選びの際に得られる情報は少なかった。さまざまな企業の話を聞く機会があれば、もっと視野が広がったのではないかと思っています。

工業高校の後輩達には、普段学んでいること以上に多くの産業があることを知り、進路の選択肢を増やしてもらいたい。そして色々見聞きし、考えた上で本当に自分がやりたい仕事に就いて欲しい。その一助になればと思い、素形材産業と工業高校の交流を行っています。

人材確保のため、出前授業のような地道な活動も必要ですが、全体的な視点からも対策を考えなくてはなりません。サプライチェーンの中には、金型メーカーや成形メーカーなど複数の企業が存在します。同業他社が多くいる中、シナジーがある企業との事業提携、資本提携をし、人材交流や人材確保、技術の伝承をするのも一つの選択肢ではないでしょうか。

今の出前授業は企業単体の活動がメインですが、業界単位で取り組みたいと考えています。これにより、素形材産業の認知度向上を目指します。また、工場見学やインターンシップなど、活動の幅も広げたいです。さまざまな活動を通じて、素形材産業の人材確保につながるサポートを今後も続けていきます。

金型新聞 2023年2月10日

関連記事

海外人材の採用と育成の心得 佐藤 修一氏(東栄精工 社長)【この人に聞く】

人手不足や採用難で悩む金型メーカーは多い。対応策として海外人材や女性など多様な人材活用の重要性が指摘されている。しかし、そうした人材を生かすには職場の環境や社員の意識を変えるなど簡単ではない。プラスチック金型メーカーの東…

黒田彰一氏(黒田精工元社長) 死去

日本金型工業会の会長など歴任  日本金型工業会や国際金型協会(ISTMA)、アジア金型工業会協議会(FADMA)の会長などを務め、日本のみならず世界の金型産業の発展に貢献し続けた黒田彰一氏(黒田精工最高顧問)が9月30日…

【鳥瞰蟻瞰】長野県南信工科短期大学校 准教授・中島 一雄氏「調べ、試し、失敗を繰り返しながら挑戦」

技術者の教育には考えさせることが重要DXで一層必要になる 分かっているものに取り組んでいても技術者としての成長はありません。自らで調べ、試し、失敗を繰り返しながら挑戦していくことこそが技術者の根幹であり、何よりも重要なこ…

【鳥瞰蟻瞰】ワークス代表取締役・三重野 計滋氏 時代が求める金型づくり

日本の技術力は世界一魅力のある金型を創り連携し海外に売り込もう  国内の需要が縮小し、海外との競争はますます厳しくなり、自動車の電動化が産業構造をも変えかねない状況の中、日本の金型に未来はあるのだろうか。このような悲観論…

直彫加工のニーズに応え、横型の微細加工機を開発 塚田良彦氏(東洋機械製作所 取締役Th事業部長)【この人に聞く】

長年、工作機械や放電加工機メーカーのOEMやODMを手掛けてきた東洋機械製作所。鋳造から機械設計、製作、塗装、組立までを手掛ける能力の高さから多く機械メーカーの製品の設計や製造を請け負ってきた。そんな同社が35年ぶりに自…

トピックス

関連サイト