金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

APRIL

19

新聞購読のお申込み

匠の技を自動化し、技能を伝承【特集:自動車メーカーの金型づくり】

自動化と人材育成—。自動車産業に関わらず、あらゆる製造現場において共通の課題となっている。人手不足は深刻化しており、課題解消に自動化、省力化は欠かせない。いかに若手に技能を伝承していくかも喫緊の課題となっている。一方で、既存分野の効率化や、次世代の自動車づくりに対応した人材の育成も不可欠だ。自動車メーカーの金型現場ではどのような取り組みを進めているのか。自動化における各社の取り組みを取材した。

熟練技能をプログラム化、作業工数50%に短縮

自動車メーカーの金型づくりで特に進んでいるのが設計と機械加工の自動化。「金型図面の作成は人への依存度が高い反面、形式知化が進んでおり、自動化できる部分が多い」と話すのは本田技研工業プレス金型設計課の村田好隆氏。本田技研工業では2018年頃から金型設計の自動化に取り組む。

同社では金型図面作成の流れを図式化したフローチャートを作成。現在、部品の配置など20%ほどの作業を自動化し、実用化を進めている。この自動化によって、設計に必要な人員を10%ほど削減できるという。将来的には、自動化率を50%まで高めることを目指している。

自動設計のフロー(トヨタ自動車)
設計の自動化を進める(本田技研工業)

同じく設計の自動化に取り組むトヨタ自動車では、形式知化できていない部位でも熟練設計者の設計フローをプログラム化し、自動設計データを構築することで自動化を進めている。フェンダーの抜き工程では従来の設計に比べて作業工数は50%ほど削減できたという。トヨタ自動車モビリティツーリング部開発設計室の曽羽竜也氏は「部品や工程にもよるので、一概には言えないが、将来的には8割程度まで自動化率を高めたい」。

機械加工の自動化では、SUBARUが20年から技術ロードマップを策定し、技術開発に取り組む。すでにプロファイル加工やエアー穴加工などを自動化。別々の加工指示で行っていた複数の加工を一つにまとめて連続加工する「複数加工種同一加工化」も可能にした。

複数加工種同一加工化を実現(SUBARU)
遮熱アルミシートで温度変化を抑制(SUBARU)

また、加工精度を向上させるために、工場環境の改善にも取り組む。工場窓や鉄壁に遮熱アルミシートを貼り付け、温度変化を抑制する工夫を施した。今後は設備投資も行い、さらに加工精度を向上させる。SUBARUツーリング課の八木橋健也課長は「現在の自動化率は65・5%。2025年までに自動化率100%を目指している」。

CBN工具で高面品位を実現し、手磨きの工数削減

設計や加工での自動化が進む一方、磨きや組立はまだまだ人の感覚や細やかな動きを必要とする部分が多く、自動化が難しい。そうした中、日産自動車ではこの磨き工数を減らし、なるべく人の手を介さずに機械加工で完結できる取り組みに注力する。

 その一つがバニシング加工。CBN工具を使い、手磨きと同等の面粗さまで仕上げる工法で、21年頃から適用を始めた。機械加工のみで、Ra0・35μmを実現した。日産自動車圧型技術課の福元賢巳主管は「砥石を使っての磨き工数を省くことが可能になった。金型製作にかかるトータル時間の短縮につながっている」。

バニシング加工を施した加工面(日産自動車)

金型新聞 2023年8月10日

関連記事

ミスミとパンチ資本提携

相互供給や海外開拓で協業 ミスミグループ本社(ミスミG)とパンチ工業は10月7日、資本業務提携したと発表した。ミスミGがパンチ工業の第三者割当を引き受けるなど相互に株式を持ち合う。両社の強みを生かし、国内で商品を相互供給…

工場長に求める条件とは?! 金型メーカー経営者にアンケート【特集:工場長の条件】

チームで業務遂行する力 金型づくりが高度化し、先が読みづらい時代。だからこそ、工場長の役割がより重要になり、また求められることも変化しているのではないか。そう考え、本紙では「経営者が今の工場長に求める条件は何か」を探るた…

縁舞SPACEAGENT 人工衛星部品を製作

 金型メーカーなどと連携 金型設計や金型、部品、試作加工などを手掛ける縁舞(埼玉県志木市)が、航空宇宙部品に特化した別会社のSPACEAGENT(スペースエージェント、北海道大樹町)や金型メーカーなどと連携し、北海道科学…

進む自動化・見える化 複数の加工工程を集約する生産システムの構築【特集:2022年金型加工技術5大ニュース】

金型づくりの世界では、自動化やAM、脱炭素向けなどの最新技術が数多く登場し続けている。その進化は止まることがなく、4年ぶりに開催されたJIMTOF2022でも多数の最新技術が披露され、注目を集めた。今年最後となる本特集で…

自動化で変わる人材 マルチ技術者を育成【自動化で変わる金型メーカー】

生産性の向上、人手不足への対応、人を介さないことによる品質向上—。目的や狙いは様々だが、金型メーカーにとって自動化は待ったなしだ。しかし、自動化には様々な変化が伴う。機械設備の内容もこれまでとは異なるし、自動化を進めるた…

トピックス

関連サイト