2021年3月9日(火)

―成形をゆく―
イオインダストリー(静岡県湖西市)

機能樹脂部品の〝匠の技〟

プラ型、年間200型

 燃費消費量37.0k/Lと低価格が受けたスズキの新型「アルト」――。車体構造から見直しを図り、軽量化と原価削減を徹底して絞り込んだ。それは、競合他社をアッと言わせたが、その陰には長い年月をかけ技能を磨き技術を蓄積し、製品開発を続ける協力会社の支えがあることを忘れてはならない。ここに紹介するイオインダストリーはその中の1社。スズキ向けクルマの内外装の高意匠部品と自動車機能部品の成形品が90%を占める。拝見した成形品は、どれもこれも目を見張るものばかりだった。

①スズキ・アルトの各種成形品(名札の付いたもの)

①スズキ・アルトの各種成形品(名札の付いたもの)

ドアハンドル25%強

 同社は、製品開発のできる「機能樹脂部品メーカー」を自負する。安全・軽量で、コストと製作時間を削減し、最良で最高の成形品を作り出す“匠の技”を持つ。
 主要成形品は、クルマの内外装の高意匠部品と自動車機能部品。「樹脂で作った機能部品を要求仕様図から製品化する」(内山恵司技術グループ主担当役員)ことを得意中の得意としている。特にドアハンドルは、売上高の25%を占め、年間生産台数は、1台のクルマに前後左右4枚、バック1枚の計5枚のドアがあり、スズキは年間軽自動車70万台(2014年)のクルマを生産しているから単純に350万個の成形、塗装、組み立をする計算になる。
 ほかに樹脂サッシュ、サイドベンチレータ、センターベンチレータ、ボックスコンプ、ガーニッシュ、ウォッシャータンク、セレクター関連部品など内外装・樹脂機能成形品の数々があり、総数量を聞くと「納入部品アイテムが2000点、成形品アイテムは4000点にのぼる」。大変な数量を成形している。

②各種バイオエンプラ

②各種バイオエンプラ

 
③樹脂製ラーメントラスト構造の窓用ガイドレール

③樹脂製ラーメントラスト構造の窓用ガイドレール

中空ドアハンドル

 「常に挑戦し、常に新しいものを創造する」ことを企業理念にしている。現在、最も力点を入れているのは、「鉄(プレス)を樹脂(射出成形)にする。塗装していたものを樹脂だけで成形するなど“工程省き”」。例えば、スズキ「HUSTLER」(ハスラー)の内装カラーパネルは、樹脂で綺麗なオレンジ色が出ないところを三菱化学のバイオエンプラで、原料を直接着色し、世界初の高意匠成形に成功した。

 アウトサイドドアハンドルの中空化もその一つ。2012年9月に従来品の製品重量(72.0g)を50.5gまで30%低減することに成功し、現在、量産中。特長は、樹脂(中実)が羊羹のように中身の詰まったところに窒素ガス(ガスアシスト)を加え中空にした。言い換えれば、「成形機に窒素ガス発生装置を搭載し、金型内の樹脂成形品に窒素ガスを注入させ、中空化する」。つまりモナカの餡のない成形品を想像してもらえれば分かりやすい。ドアハンドルの裏側、中が空洞になっている。
 ところが同社の中空は他社と異にする。「通常、ガスを流して行くとガスはどんどん中に入り込む。肉が薄かろうが厚かろうが中に入り込む。弊社は歯ブラシのようなリブを作り、薄肉・厚肉・薄肉を作り、ガスを奥に行かせないように止めた」。成形品の現場では、窒素ガスがキチンと入っているかどうかをX線検査機で全数検査し、品質を確かめている。

④ドアハンドル及びバックドアハンドル

④ドアハンドル及びバックドアハンドル

 
⑤非破壊検査装置で全数検査

⑤非破壊検査装置で全数検査

 もう1例。樹脂製品の高強度・薄肉構造体化の成形は今年3月に成功した(特許出願済み)。
 それは自動車の窓用ガイドレール。現在、アルトに採用されているが、従来品は鉄(写真③右端)であり、同社がプラスチッック(真ん中)化し、さらに格子状のプラスチック(左端)にした。ミソはリブ構造。建築のラーメン(梁)トラス(接点)構造を開発した。この2例は金型メーカーがかなり苦労したようだ。「わが社は、約10社の金型メーカーさんとお取引している。今年は200型前後を発注したが、このリブ構造や格子状の金型製作は、ガスを中に送り込まない、強度を保つなどプラスチック技術をレスポンスで応えてくれるところが必要である」(緑川広貴技術グループ技術営業部次長、射出成形特級技能士)と言う。
 また、「強度を出すには厚肉にしなければならない。厚肉にすれば早く成形・冷却ができない。この相反することを克服するのに苦労をした」(松下義幸技術グループ開発室長)と振り返る。松下室長が自ら鉄橋や東京スカイツリーを見て回り、旧知の建設会社の人に相談し、更には、近隣大学の協力を得て射出成形での薄肉の構造体を作り上げ、金型メーカーに相談し、冷却時間の短縮を図った。これによりサイクルタイムを20%削減することに成功した。
 このほか、同社には製品コストを55%減にした2色成形型内組立のルーバーフィン、総工数7.2%減、金型費60%減、成形品コスト7.4%減のDie Slide Injection(DSI)成形など同社には数えきれない技術があり、実績を上げている。そこには常に新しい技術を開発する同社の技術者魂が生きている。ちなみに、同社は最大850tから10tまでの射出成形機を95台設備し、フル稼働を続けている。


会社メモ

松下室長、内山役員、緑川次長

松下室長、内山役員、緑川次長

 

会社名:イオインダストリー
所在地:静岡県湖西市新居町新居3380‐500
設 立:1963年8月
資本金:4,840万円(2015年4月)
代表者:岩田佳大氏
従業員数:434人(同)
売上高:131億円(2015年3月期)
主要製品:自動車用内外装意匠部品、自動車用機能部品
小沢渡工場:浜松市南区小沢渡町12‐1
企業理念(企業活性化の公式:E=mV2)


金型新聞 平成27年(2015年)10月20日号

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