時には経営者、時には教え諭す教育者—。工場長には多様な役割が必要だ。こうしたマルチタスクをこなすために、どのようなことを意識しながら、責務を果たしているのか。現役工場長に、工場長としての哲学を聞いた。 役割は成果を出すこ…
センシング機能のダイセットで不良品発生を防ぐ ニチダイ【特集:利益を生むDX】
DXの本質は利益を生み出すことにある。以降では、DXによって「売上げを上げて利益を生み出す」方法と「コストを下げて利益を生み出す」企業のそれぞれの取り組みを取材した。
金型の長寿命化、自動化へ

冷間鍛造金型を手掛けるニチダイは荷重や変位など各種センサを組み込み、金型の状態を可視化するセンシング機能を持った『インテリジェントダイセット』の開発を進めており、金型の破損や製品不良を事前に予測することで、不良品を生み出さないという新たな付加価値の創造を目指す。
「DXの本質はデジタル技術を活用して、新たな価値を生み出すこと」と語るのは新事業開発部の森満帆主任。2018年に新規開発プロジェクトを立ち上げ、デジタル化による新しい金型の価値作りを始めた。従来、冷間鍛造は型寿命のバラツキや不良発見に作業者の目視確認が必要など課題も多く、金型の状態の可視化が求められていたが、過酷な環境に対応するセンサがなく、デジタル化が難しかった。

同社は独自にセンサやシステム開発など行い、試行錯誤の末、ダイセットに変位センサ(ストローク全体を10μm、上下金型間を1μm単位で計測)、荷重センサ(ロードセル)、温度センサ、AEセンサ(振動)、ネットワークカメラを搭載し、各種データを可視化する「ものづくりマネジメントシステム」を構築した。「既存のロガー装置では種類の異なるセンサから同期データを抽出するのは困難。連続で生産される現場に即した装置を開発する必要があった」と森主任。これにより、ショットごとのデータから過去の実績も遡って、比較・分析が可能になった。
同社は数年内のインテリジェントダイセットの実用化を目指しており、森主任は完成までの3段階を示した。「1つは可視化、2つ目はデータ処理、3つ目はフィードバック制御。現在は可視化とデータ処理を並行で進め、量産時の大量のデータをAIに頼らず、人が理解しやすい表現を模索している」と話す。また、過去情報などから未来を予測することで最適なメンテナンス時期やスケジュール管理に結び付ける。将来は計測データを元に、成形時の加工条件をコントロールし、金型の長寿命化や生産現場の自動化に貢献することが目標。すでに社内及び一部ユーザーで実証実験も始まった。「まだ予測精度やAI活用など道半ば。今後はこれらの要素技術を開発する」と森主任は語った。
会社概要
- 本社:京都府京田辺市薪北町田13
- 代表者: 伊藤直紀社長
- 設立: 1959年
- 従業員: 660人(連結)
- 事業内容:精密鍛造金型の開発・製造・販売、精密鍛造品及びその関連する成形品の開発・製造・販売など。
金型新聞2023年2月10日
関連記事
Ⅹ線CT解析ソフトを活用 採用が増えている金属AMによる金型の入れ子部品。ただ、明確な品質保証データがないことが採用への大きな壁となることは多い。造形後のワークからだけでは内部の巣の有無や、密度などの数値データを把握する…
プラスチック射出成形用金型メーカーの豊洋エンジニアリング(福岡県遠賀町、093-293-0114)は4月1日、「T・D・Cモールド」に社名を変更した。創業から30期目を迎えるのを機に、精密金型や微細加工を得意とする企業の…
金型技術でアート作品 レンズの金型を手掛けるワークス(福岡県遠賀町、093・291・1778)は、高度な金型技術を活かしたアート作品を展示するウェブサイト「METAL ART GALLERY」を開設した。展示するのは精密…
人材育成で競争力強化 50tから1300tまでの大小さまざまなプラスチック金型を手掛ける榛名モールド。金型の設計製作から試作、量産までを自社で行い、一貫生産体制を実現している。2023年にプラスチックトレイやケースなどを…


