金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

DECEMBER

08

新聞購読のお申込み

センシング機能のダイセットで不良品発生を防ぐ ニチダイ【特集:利益を生むDX】

DXの本質は利益を生み出すことにある。以降では、DXによって「売上げを上げて利益を生み出す」方法と「コストを下げて利益を生み出す」企業のそれぞれの取り組みを取材した。

金型の長寿命化、自動化へ 

インテリジェントダイセットの実証実験

冷間鍛造金型を手掛けるニチダイは荷重や変位など各種センサを組み込み、金型の状態を可視化するセンシング機能を持った『インテリジェントダイセット』の開発を進めており、金型の破損や製品不良を事前に予測することで、不良品を生み出さないという新たな付加価値の創造を目指す。

「DXの本質はデジタル技術を活用して、新たな価値を生み出すこと」と語るのは新事業開発部の森満帆主任。2018年に新規開発プロジェクトを立ち上げ、デジタル化による新しい金型の価値作りを始めた。従来、冷間鍛造は型寿命のバラツキや不良発見に作業者の目視確認が必要など課題も多く、金型の状態の可視化が求められていたが、過酷な環境に対応するセンサがなく、デジタル化が難しかった。

各種センサの情報を可視化

同社は独自にセンサやシステム開発など行い、試行錯誤の末、ダイセットに変位センサ(ストローク全体を10μm、上下金型間を1μm単位で計測)、荷重センサ(ロードセル)、温度センサ、AEセンサ(振動)、ネットワークカメラを搭載し、各種データを可視化する「ものづくりマネジメントシステム」を構築した。「既存のロガー装置では種類の異なるセンサから同期データを抽出するのは困難。連続で生産される現場に即した装置を開発する必要があった」と森主任。これにより、ショットごとのデータから過去の実績も遡って、比較・分析が可能になった。

同社は数年内のインテリジェントダイセットの実用化を目指しており、森主任は完成までの3段階を示した。「1つは可視化、2つ目はデータ処理、3つ目はフィードバック制御。現在は可視化とデータ処理を並行で進め、量産時の大量のデータをAIに頼らず、人が理解しやすい表現を模索している」と話す。また、過去情報などから未来を予測することで最適なメンテナンス時期やスケジュール管理に結び付ける。将来は計測データを元に、成形時の加工条件をコントロールし、金型の長寿命化や生産現場の自動化に貢献することが目標。すでに社内及び一部ユーザーで実証実験も始まった。「まだ予測精度やAI活用など道半ば。今後はこれらの要素技術を開発する」と森主任は語った。

会社概要

  • 本社:京都府京田辺市薪北町田13
  • 代表者: 伊藤直紀社長
  • 設立: 1959年
  • 従業員: 660人(連結)
  • 事業内容:精密鍛造金型の開発・製造・販売、精密鍛造品及びその関連する成形品の開発・製造・販売など。

金型新聞2023年2月10日

関連記事

愛知溶業 蒸気タービンの溶接補修で技術連携、米社とMOU締結

『金型にやさしい溶接修理』を掲げ、金型のリユース、長寿命化を推進する愛知溶業(愛知県一宮市、0586・75・3112)は重工業向けレーザー溶接を手掛ける米国Phoenix Laser Solutions社(以下フェニック…

VEST プレスの現場に最適解を【金型応援隊】

VESTは、「プレスの何でも相談室」をテーマに、メカ式プレス機械や周辺機器の販売、買取、順送ラインの構築など幅広い事業を展開する。 高橋実代表はプレス機械メーカー出身で、業界歴は40年を数えるプレスのエキスパートだ。自ら…

かいわ 自社で商品生み出す道に

培った技術活かす 自動車の電動化、医療関連や半導体関連需要の拡大などで、国内のものづくり産業に求められるものも大きく変化している。自動車の電動化ではモータやバッテリーなどの電動化部品や材料置換による軽量化部品などが増えて…

日本精機 AM技術でギガに挑む【特集:ギガキャストの現在地】

ソディックと共同開発、大型3Dプリンタを導入 AM技術を武器にギガキャスト向け金型で需要開拓を狙うのが、ダイカスト金型メーカーの日本精機だ。まずは、高い熱交換機能が求められるギガ向け金型で、AMで造形した入れ子部品の採用…

鋳造に独自の新工法
マツダ

特集 次世代車で変わる駆動部品の金型鋳造に独自の新工法  次世代自動車の技術は電動化に限らない。注目されるのがエンジンの進化だ。燃費性能を追求する新型エンジン「スカイアクティブ」。多くの自動車メーカーが電動化に力を入れる…

トピックス

関連サイト