円安が後押し 海外との住み分け明確に 金型業界は回復を続けている。2015年の1―9月累計の金型生産額は前年同期比で9・3%増の2865億円となった。まだリーマンショック前のピークに比べ8割弱の水準だが、金型メーカーが…
金型が国内回帰
高付加価値の型を求めて
金型の国内回帰を実感している金型メーカーが増加している。日本金型工業会のアンケートによると、昨年10―12月期に「海外から戻ってきた金型を作った、もしくは作ったことがある」と回答した企業が、4―9月期に比べ10%以上増えていることが分かった。ただ、円安を契機に日本で作る選択肢が増えたが、あらゆる金型が回帰しているわけではない。国内に戻る場合でも大型化したり、複雑化したりするなど、これまで以上に付加価値の高い金型作りが重要になっている。
ハイサイクル、一体化など
日本金型工業会アンケート
日本金型工業会は三か月ごとに景況アンケートを実施している。昨年4月―9月の調査によると「海外から戻ってきた金型を作った、もしくは作ったことがある」と回答した企業は179社のうち22・9%の41社だった。しかし、10―12月の同じ調査では、174社中62社の35・6%に増加している。国内回帰の実感する企業は間違いなく増えてきている。
では、どんな金型が戻ってきているのか。日本工業大学院の横田悦二郎教授は「回帰する金型は複雑化している場合が多い」と指摘する。「軽量化やユニット化などユーザーも付加価値の高い金型を求めている」とみる。
国内で金型調達を進める、ある電機メーカーもその見方に同意する。「我々もグローバルでコスト競争にさらされている。円安で国内調達する方向にあるが、トータルで安いなら海外に出さざるを得ない。国内ではハイサイクル、一体化など付加価値の高い型を調達することになる」。つまり、日本で作るなりの理由が必要と言うわけだ。
金型メーカーもそれを十分に実感している。松野金型製作所の松野行秀社長は「回帰している金型は間違いなく難易度が増している」と話す。ホクト精工の竹森勝彦専務も「戻ってきているものと、そうでないものを理解すべき」という。
一方で、アンケート調査でも6割近くが「海外からの回帰はない」としているように、実感がない会社も少なくない。あるプレス金型メーカーは「自動車業界は地産地消。大きな変化はない」とみる。外需開拓に注力するプレス型メーカーは「海外の仕事を取りに行っている」ため、「戻っている実感はない」とも話す。黒田製作所の黒田隆会長は「海外に出ていかなくなっただけではないか。国内の金型の需給バランスが取れ始めたことが主な要因」と言う。
顧客層や自社の戦略によって回帰の見方は異なるし、円安によって日本で作る選択肢が増えただけなのかもしれない。しかし、間違いないのは日本で作る金型は難易度を増しているということ。だからこそ、「付加価値の高い金型作り」に挑戦することはますます重要になる。
金型新聞 平成28年(2016年)2月10日号
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