金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

MARCH

24

新聞購読のお申込み

金型が国内回帰

高付加価値の型を求めて

 金型の国内回帰を実感している金型メーカーが増加している。日本金型工業会のアンケートによると、昨年10―12月期に「海外から戻ってきた金型を作った、もしくは作ったことがある」と回答した企業が、4―9月期に比べ10%以上増えていることが分かった。ただ、円安を契機に日本で作る選択肢が増えたが、あらゆる金型が回帰しているわけではない。国内に戻る場合でも大型化したり、複雑化したりするなど、これまで以上に付加価値の高い金型作りが重要になっている。

ハイサイクル、一体化など

  日本金型工業会アンケート  

 日本金型工業会は三か月ごとに景況アンケートを実施している。昨年4月―9月の調査によると「海外から戻ってきた金型を作った、もしくは作ったことがある」と回答した企業は179社のうち22・9%の41社だった。しかし、10―12月の同じ調査では、174社中62社の35・6%に増加している。国内回帰の実感する企業は間違いなく増えてきている。

 では、どんな金型が戻ってきているのか。日本工業大学院の横田悦二郎教授は「回帰する金型は複雑化している場合が多い」と指摘する。「軽量化やユニット化などユーザーも付加価値の高い金型を求めている」とみる。

 国内で金型調達を進める、ある電機メーカーもその見方に同意する。「我々もグローバルでコスト競争にさらされている。円安で国内調達する方向にあるが、トータルで安いなら海外に出さざるを得ない。国内ではハイサイクル、一体化など付加価値の高い型を調達することになる」。つまり、日本で作るなりの理由が必要と言うわけだ。

 金型メーカーもそれを十分に実感している。松野金型製作所の松野行秀社長は「回帰している金型は間違いなく難易度が増している」と話す。ホクト精工の竹森勝彦専務も「戻ってきているものと、そうでないものを理解すべき」という。

 一方で、アンケート調査でも6割近くが「海外からの回帰はない」としているように、実感がない会社も少なくない。あるプレス金型メーカーは「自動車業界は地産地消。大きな変化はない」とみる。外需開拓に注力するプレス型メーカーは「海外の仕事を取りに行っている」ため、「戻っている実感はない」とも話す。黒田製作所の黒田隆会長は「海外に出ていかなくなっただけではないか。国内の金型の需給バランスが取れ始めたことが主な要因」と言う。

 顧客層や自社の戦略によって回帰の見方は異なるし、円安によって日本で作る選択肢が増えただけなのかもしれない。しかし、間違いないのは日本で作る金型は難易度を増しているということ。だからこそ、「付加価値の高い金型作り」に挑戦することはますます重要になる。

金型新聞 平成28年(2016年)2月10日号

関連記事

冨士ダイス 21年4‐9月期決算

半導体関連が好調 車載電池用金型も増加 冨士ダイス(東京都大田区、03-3759-7181)の2021年4‐9月期売上高は、前年同月比23.8%増の83億6300万円だった。半導体関連金型や車載電池用金型などの販売が好調…

進化への岐路
2020年 日本の金型

 2020年の金型業界はコロナ禍に翻弄された年になった。自動車産業を始めとしたユーザーの生産減や開発遅延などにより、金型需要は減少し、景況は悪化した。一方で、これまでと同じような活動ができないことで、ビデオ会議システムや…

6月の金型生産実績

6月の金型生産実績

前年同月比4.9%増の287億8、600万円 プレス型は9・8%増、プラ型は1・5%増 日本金型工業会(会長牧野俊清氏)は、経済産業省機械統計(従業員20人以上)による平成26年6月の金型生産実績をまとめた。それによると…

藤本敏樹氏著「金型産業連関表作成の試み」

金型の現状、データで俯瞰 日本の金型の動きを統計データに基づいて分析した論述は少なくない。そのデータベースとしてたびたび使われるのは政府が日本の金型生産をまとめた機械統計(従業員30人以上を対象に調査)や工業統計(同4人…

10月の金型生産実績

10月の金型生産実績

前年同月比 2.6%減の299億8,800万円 プレス型は20.3%減、プラ型は2.7%増 日本金型工業会(会長牧野俊清氏)は、経済産業省機械統計(従業員20人以上)による2015年10月の金型生産実績をまとめた。それに…

関連サイト