金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

DECEMBER

04

新聞購読のお申込み

スマート金型で生産性向上
産官学連携 岐阜大に開発拠点

 金型を使う量産工場では、なかなか成形不良が減らない。その原因は金型や機械、外部環境など様々。不良原因を突き止められないのは、一企業で成形時の膨大な情報を収集し解析する技術を確立するのは困難だからだ。そこで立ち上がったのが岐阜大学(岐阜県岐阜市)。同大学内に「スマート金型開発拠点」事業を立ち上げ、量産工場の成形不良率をゼロにする取り組みが来夏に始まる。金型、プレス・射出成形機(以下成形機械)で自動的に良品を生み出す生産システムを確立できれば、労働人口減少で悩む日本の製造業にとって展望は明るい。

 自動で成形不良をなくすシステムをスマート生産システムと呼ぶ。金型や機械で起こる様々な異常を予兆し、成形機械で自動制御や金型の自動交換で成形の不良率をゼロにできれば、人の手作業や煩雑な検査工程を省略できる。それには成形不良を予兆するスマート金型の開発と成形条件などを自動で制御できるスマートな成形機械の開発が必要だ。スマート金型開発拠点ではプレスと樹脂の型種を対象に金型内の温度や圧力、成形機械、外部環境の変化をセンシング技術で情報を収集する金型IoTプラットフォームを構築し、集めたデータを解析しながら、不良の原因解明と制御方法を開発していく。同事業の中心的役割を担う岐阜大学副学長の王志剛教授・工学博士(産官学連携担当)は「もし、成形不良をゼロにするシステムを開発できれば世界初となる」と意気込みを見せる。

 同事業の研究課題は4つ。①センサ・金型センシング技術の開発②金型IoTプラットフォームの開発③スマートプレス機の開発④スマート射出成形機の開発だ。①はセンシングや小型化・非接触化などセンサに関する研究など。②は金型IoTプラットフォームで成形条件や成形状況、材料などのデータベースの構築と解析技術で予防保全・成形条件を決めるアルゴリズムを開発する。③と④は成形機械の制御や計測技術の開発だ。

 だが、開発には想像以上に壁もある。「そもそも成形不良の原因が分かっていないため。想定される要因のデータ収集から始めなければならない」と王副学長は指摘。例えば、パンチで穴を1000個あける途中でパンチが曲がるという課題に対し、従来はパンチ本体の原因と捉えてきたが、本当の原因は機械や別工程など他にあるかもしれない。同事業では考えられる原因を1つずつ調べるため、多くの時間と労力を伴う。「だから産官学の連携が必要」と王教授は訴える。スマート金型開発拠点は文部科学省の平成28年度補正の「地域科学技術実証拠点整備事業」に採択され、岐阜県内外の量産メーカーをはじめ、成形機械、金型、センサ、ソフトウェアなどメーカー約10社が連携し、同大学の学生も参加する。

 開発施設は床面積1080㎡の3階建。1階スマート生産システム実験設備、2階測定室など、3階はサーバー室やCAE室で、3Dスキャナ、高速度カメラなどの機器、データ収集・管理・解析システムやサーボプレス、電動式射出成形機など設備する予定だ。

研究課題

課題1 センサ・金型センシング技術の開発
・センシングシステム単体の試験運用
・高応答金型センシング技術の開発
・高応答成形機センシング技術の開発
・センサの埋め込み技術(3Dプリンター)の開発
・センサの小型化・非接触化・省エネ化
課題2 金型IoTプラットフォームの開発
・IoTプラットフォームの試験運用
・成形材料データベースの開発
・成形条件・成形状況データベースの開発
・ビッグデータ解析技術の開発
・予防保全・成形条件決定アルゴリズムの開発
課題3 スマートプレス機の開発
・精密プレスモーション制御技術の開発
・センサ―インターフェース技術の開発
・プレス機状態の計測技術
・成形品リアルタイム計測技術
課題4 スマート射出成形機の開発
・射出成形機のモーション制御技術
・精密金型調整用アクチュエータの開発
・センサ―インターフェースの技術
・成形品リアルタイム計測技術の開発

金型新聞 平成29年(2017年)8月10日号

関連記事

三恵技研工業 増肉加工、超ハイテン冷間プレス【特集:プレス加工の未来】

自動車用マフラーやボディ部品などを手掛ける三恵技研工業(東京都北区、03・3902・8200)は近年、プレス加工の技術開発に力を入れる。主要顧客である自動車産業でEV化や現地生産化が進み、事業環境が大きく変化する中、増肉…

金型技術振興財団 助成事業の公募開始

金型技術振興財団(千葉県茂原市、047-27-3210)は2021年度の助成研究事業などの公募を開始した。締め切りは7月30日。 金型や成形技術などを対象にした研究開発助成は、1件200万円以内総額1000万円まで。助成…

沖電線が高速の放電ワイヤ

沖電線が高速の放電ワイヤ

高精度に形状加工  沖電線(川崎市中原区、044・766・3171)はこのほど、ワイヤ放電加工機で使う熱拡散電極線「OS-UZワイヤ」を国内向けに発売した。製造工程の簡略化で低価格を実現。高速加工ができ、生産性の向上が図…

【ひと】金型大使・天玲美音さん

金型の魅力を届ける元タカラジェンヌ 元宝塚歌劇団男役で、昨年から「金型大使」として活動を始めた。静岡県内を中心に金型メーカーを訪問し、エンターテインメントの世界で培った研ぎ澄まされた感性を武器に新たな角度から金型の魅力を…

UMモールドフェア、開幕間近

UMモールドフェア、開幕間近

5軸や金属3D、JIMTOF出品機が一堂     インテックス大阪5号館で1月30・31日  金型設備総合商社の植田機械は1月30、31日の2日間、大阪市住之江区のインテックス大阪で、最新の機械や工具を一堂に集めた「UM…

トピックス

関連サイト