金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

OCTOBER

15

新聞購読のお申込み

ハマダ工商 AMで新たなものづくり【金型の底力】

樹脂やプレス金型の製作から少量の成形まで手掛けるハマダ工商は今年2月、事業再構築補助金を活用し、金属3Dプリンタを導入した。水管を自由に設計した冷却効果の高い金型で、反りを抑えた防犯レンズカバーの成形品を提供するのが狙いだ。「今後は金属3Dプリンタでしかできないものを作りたい」と話す、浜崎幸男社長に同社の取り組みを取材した。

ヒケや反りを抑えた防犯レンズのカバーの金型を造形

同社は1982年、金型設計の受託メーカーとして浜崎社長が創業した。浜崎社長は元々、部品メーカーで設備や金型の設計業務を担当。「当時の設計はドラフターによる手書きで、図面の不具合を加工でカバーしていた時代。設計が早く、図面の修正や成形まで手配できたことから、色んなユーザーから指名されていた」(浜崎社長)。

さらに、勤務先の社長から「加工を学べ」と言われ、CAM(当時は自動プロ)を習得。「NCが一般的ではない時代。職人にCAMの加工を見せた際『もう我々の時代じゃないなあ』とつぶやいたのが忘れられない」という。それ以上に感じたのが「誰もしていないことは儲かる」ということ。

特許を取得したヘリカルギア

こうした経験から、創業後は、設計の受託にとどまらず、ZAS型、ゴム、樹脂、プレスと相次いで金型製作に着手。だが「金型も事業の一つに過ぎない。儲けるには他社がしないことをする必要がある」との考えから、自社ブランド製品に参入。雨や風などに反応して自動で窓が開閉する「オートクローザー」や、ヘリカルギア・ウォームギア分割製法(特許取得済)を開発した。

そんな浜崎社長が金属3Dプリンタの有用性を検討し始めたのは7年ほど前。CAMを学んだ際に「他社にできないものづくりは儲かる」という原体験があったのだろう。また、「必要な材料しか使わないので省エネのものづくりができる。SDGs(持続可能な成長目標)という時代の流れにも合致する」(浜崎社長)。

導入したソディックの金属3Dプリンタ

そして今年2月、4度目となる事業再構築補助金を活用し、ソディックの金属3Dプリンタ「OPM250L」を導入した。狙いは樹脂金型に自由水管を造形し、ヒケや反りを抑えた防犯レンズカーの成形品を作ること。「防犯レンズの性能は上がっていても、それを最大限生かすために、カバーの透過度を高める必要がある。ヒケや反りを抑えるには自由水管が造形できる3Dプリンタによる金型が必要」(樹脂部・金属部の安江高志部長)とし、すでに試作品を製作した(写真)。

ただ、金属3Dプリンタの活用は、防犯レンズカバーだけにとどめるつもりはなく、多様な領域に展開していく考えだ。浜崎社長はすでにいくつかの用途を描いている。まずは肉厚の偏った成形品向けの金型。「自由な冷却が造形できるのでこれまで造形しづらかった部品を作ることができる」。あとはアンダーカットのある部品。「『どうやって作ったのか』と思わせる、3Dプリンタでしかできない部品を作りたい」という。

CAMの時のように、誰もできない加工は他社にない武器になるだけでなく、「価値を作る手段にもなり得る」と話す浜崎社長。70歳を迎え「もう引退したい」と笑うが、挑戦する意欲はまだまだ衰えていない。

浜崎 幸男.社長

会社の自己評価シート

今回の金属3Dプリンタの導入に限らず、自社製品を開発するなど、「チャレンジ精神」や「未来への投資する力」は強いと自己分析。一方で、「営業力」、「PR・発信力」は評価が低いと判断しており、展示会などへの出展も進めている。

会社概要

  • 本社: 愛知県岡崎市天白町清水2-1
  • 電話: 0564・54・0552
  • 代表者: 浜崎幸男.社長
  • 創立: 1982年
  • 従業員: 30人
  • 事業内容: 樹脂、プレス金型、試作金型の設計製造。少量の樹脂成形、機械加工による試作品成形、自社製品の製作など。

金型新聞 2023年8月10日

関連記事

「金型業界で働く女性の声や悩みにも耳を傾けて」名古屋精密金型営業部部長・渡邊祐子氏

インターモールド大阪では4月20日、女性雇用のメリットや現場の男女共同参画などを討論する特別イベントが開かれる。労働人口減少により製造業は女性の活躍が課題で、金型業界も働き方改革など取組みが始まっている。日本金型工業会で…

【この人に聞く】NTTデータエンジニアリングシステムズ・東 和久社長「価値創造のパートナーに」

NTTデータエンジニアリングシステムズ(東京都大田区)は7月、沖縄県うるま市に、5軸加工や自動化を支援する「Mold Future Space‐OKINAWA(MFS)」を開設した。まずは5軸加工機の販売から加工ノウハウ…

中村精工 DXで年間20社以上の新規開拓を実現

新たに福岡工場が稼働 射出成形事業を強化 自動車向けプラスチック金型の設計・製作を手掛ける中村精工(岐阜県岐阜市、058-388-3551)は1月、成形事業及び金型メンテナンスを行う福岡工場(福岡県飯塚市)を立ち上げ、1…

この人に聞く
碌々産業 海藤 満社長

加工技術者に新たな呼称  ミクロン台の誤差に収まる精度、鏡のように美しい仕上げ面—。こうした加工は、卓越した技術力と並々ならぬこだわりを持った技術者が高精度な機械を駆使して初めて実現する。この職人と呼ばれる人たちを「マシ…

「顧客の課題をもっと聞きたい 専門部署を設立」牧野フライス製作所社長・宮崎正太郎氏【この人に聞く】

牧野フライス製作所は今年4月、6年ぶりに社長交代を発表した。6月に新社長に就いた宮崎正太郎氏は、就任後わずか3か月で増産体制の強化や開発テーマの絞り込みなどを相次いで発表。さらに、顧客の課題を聞くための部署を新設するなど…

トピックス

関連サイト