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名古屋精密金型 植物由来の樹脂でタンブラー製作
自動車用ヘッドランプなどプラスチック金型を手掛ける名古屋精密金型(愛知県知多郡東浦町、0562・84・7600)は昨年、渡邊祐子氏が社長に就任し、金型メーカーの新たな可能性に挑戦。地元である東浦町の特産品であるぶどうを原料とする環境配慮型プラスチック(植物由来の樹脂)でオリジナルタンブラーを製作。摘果ぶどうを活用した商品作りで地域創生やSDGsを念頭に、『100年後も地域に貢献しながら金型を作り続ける』企業を目指す。
100年後も地元で金型作る
「当社は創業50周年を迎える。今後は地域貢献やSDGsに取り組み、100年後も地元で金型を作り続ける企業を目指したい」と渡邊社長は抱負を語る。同社は1975年に名古屋市で創業し、九州事業部(熊本工場・宮崎工場)、ベトナム工場を展開。金型設計や大物加工から微細加工まで幅広い加工技術、職人技の鏡面磨きを得意とし、培った金型技術でユーザーの課題を解決してきた。
同社が新たに着目したのが地域密着とSDGs。東浦町はぶどうの名産地だが、巨峰は間引き剪定するのが通例で、取り除いたぶどうは廃棄される。渡邊社長は「プラスチック業界も同じく、マイクロプラスチックなど環境や廃棄に課題を抱えており、東浦町から相談されたのがきっかけ」と語る。

そこで渡邊社長は補助金を活用し、摘果ぶどうを原料とする樹脂の開発に着手。研究開発用の金型を製作し、多方面からアドバイスを受けながら改良を重ね、オリジナルタンブラーを製作。本体はぶどう色で、ほのかな香りも漂う。渡邊社長は「ぶどう農家や自治体とも話し、地域のブランディングにつながる商品に育てたい」と意気込む。これまでなかったSNS発信やSDGsの展示会にも出展し、「自社商品の金型を持つ成形メーカーなど同じ志を持つ異業種交流も深まった」と、成形メーカーの倉庫に眠っていた金型をDIYで再活用するなどSDGsの輪を広げている。
変化したのが社員たちだ。渡邊社長は「実はプロジェクトチームはない」という。その理由を「プロジェクトだと関われる人が限定される。SDGs宣言通り、誰ひとり取り残さないことを掲げた」と説明。プロジェクトでなくても製造現場や女性社員たちが協力し合い、自主的に商品展示や広報活動を展開。九州事業部も地域に根差した取り組みを始めるなど社内に新しい波が起き始めている。「100年後も企業を存続させるには地元への貢献が前提」。地域に愛される企業をテーマに、ぶどうだけでなく、米や焼酎粕が原料のタンブラーにも挑戦。今後はバイオマス含有率の向上や耐熱性強化など研究を進め、日用品として商品化を図る。
金型新聞 2024年2月10日
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