工程集約で短納期化 自動車や家電、住宅設備向け精密プラスチック金型を手掛ける三洋技研(名古屋市西区)は1987年に設立し、顧客の開発案件から金型設計・製作、トライ(30~150t)までの体制を確立。熱可塑性樹脂から熱硬化…
ウチダ 肉盛り溶接を自動化【金型の底力】
超ハイテンと大型化技術極める
1・5Gpaクラスまでの超ハイテン材向けのプレス金型を強みとするウチダ。このほど新日本工機と共同で、金型の最終調整に必要な肉盛り溶接工程の自動化を実現した。狙いは「溶接に関わっていた技能者を金型の調整など付加価値の高い工程に充てる」(内田祥嗣社長)ためだ。自動化で生み出した時間を活かし、「超ハイテンと大型化技術を『極める』」考えだ。
「一歩先んじよ」—。ウチダは社是にあるこの言葉通り、一歩先んじた投資でその地位を固めてきた。1934年に内田鉄工所として創業。本格的に金型に参入したのはモータリゼーションの拡大を見越した64年。72年には当時では金型メーカーでは珍しい200tトライプレスを導入した。今や800t、1600tのトライプレスを持ち「こうした先行した投資が現在の当社を支えている」(内田社長)という。

先んじる動きは現在も強みとするハイテン材向けも同じだ。98年にはハイテン材向け金型に着手。2002年には「世界で初めてセンターピラーで980Mpaの量産金型に成功した」という。最近では1・5Gpaの超ハイテン向けの金型を手掛けている。
こうした超ハイテンでの課題はスプリングバックの大きさによる成形の難しさ。1m超のセンターピラーやサイドメンバーでも、パネルの寸法誤差は±0・5㎜以下に収める必要がある。

このレベルの精度を実現するために、1回目のトライでOKとなることはあり得ない。「3~5回程度は肉盛り溶接で、金型形状を修正する必要がある」。肉盛溶接は仕上技能者が手動で行っていたが「肉盛りそのものに価値はない。技能者は金型の修正や解析など人でしかできない工程を注力してもらう必要がある」。
そこで一昨年から新日本工機と共同で、肉盛り工程を自動化できるシステムを構築した。ロボットに掴ませた主軸の中央部からレーザーを照射し、周辺部から粉末を噴射することで肉盛りする仕組みだ。

自動化できたメリットは大きい。まずは作業時間。「段取りを含めて3分の1程度になった」と言う。肉盛り面も安定したほか、「20人の仕上担当の2人は常に溶接していたので、その作業がなくなり、その時間を他の工程に充てられる」。現在は、ハイテン用の金型で多く使われる、SKD11でも肉盛りできるように取り組みを進めている。
こうした効率化は「全てハイテンと大型化技術を『極める』ため」(内田社長)だ。ここ数年は超ハイテン化が加速し、「今後も超ハイテン部品は増える。当社の強みを発揮できる領域」という。

「大型化」の要求も増えるとみる。「部品の一体化で、金型サイズも年々大きくなっており、この傾向も加速している」。肉盛りの自動化で技能者の空いた時間や、経営資源を超ハイテンと大型化の2つの領域に集中させる考えだ。
その一環として、来年度には愛知県刈谷市に仕上専用の工場を新設する。「1600tのプレス機を導入し、仕上に特化した工場にする」(内田社長)予定だ。超ハイテンと大型化技術を極める一方、顧客満足度の向上も合わせて図る考えだ。
会社の自己評価シート

会社概要
- 本社: 大阪府大東市新田本町12–6
- 電話: 072・874・3377
- 代表者: 内田祥嗣氏
- 創立: 1934年
- 従業員: 120人
- 事業内容: 自動車用ボディー部品のプレス金型の設計製作全般
金型新聞 2024年6月10日
関連記事
専業メーカーと連携し提供 中小企業向けコンサルティング事業などを行うKGM経営戦略製作所(東京都千代田区、050-5532-7032)はこのほど、金型のレーザー溶接肉盛補修サービスを開始した。タイと日本国内の専業メーカー…
プレス加工や金型などを手掛ける樋口製作所(岐阜県各務原市、058・383・1141)は熟練技能者の思考・考え方をAIに学習させ、3Dモデルをアップロードするとシステムが自動でプレス加工(塑性加工)可否を特徴形状別で判断す…
モーターコアの大型化に対応 モーターコア用の金型などを手掛ける黒田精工(川崎市川崎区・044・555・3800)は世界最大級のプレス機の本格稼働を開始した。モーターコアの複雑化で大型化する金型に対応する。複雑なモーターコ…
金型のメンテや技術で協力 ダイカスト金型メーカーの七宝金型工業(愛知県津島市、0567・24・8787)はイタリアの金型メーカーであるCOSTAMP社と業務提携した。国内で需要増が見込まれるギガキャスト金型において、七宝…


