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三陽製作所 薄板に極小穴の離れ業 【金型の底力】

車の電動化はチャンス

タンデムラインや順送プレスなど設備も充実

「先代から金型があれば、どこでも生産できる。だからこそ、金型技術が最も重要な要素になる」と話す近藤章夫専務。同社は二輪・四輪向けプレス金型及びプレス加工で、主にエンジンやミッションなど内燃機関の部品で実績を持つ。国内は本社工場(愛知県)と岐阜工場、海外は中国やベトナムに展開。タンデムライン(500tまで)や順送プレス(60~400t)、単発プレスなど豊富な設備で難易度の高いプレス加工に取り組んでいる。

同社の得意技はバルブボディプレートと呼ばれる油圧制御部品。A4サイズの板厚1~2㎜の薄板硬質材にプレス加工で0・6㎜極小穴を実現。従来、切削加工するのが一般的で、パンチで打抜こうとすると突き刺さらない現象が起こる。それを良好な平坦度を保ちながら200穴をプレス加工で量産技術を開発。「1ショットは出来ても量産は難しい」と近藤専務。

需要が高まる板鍛造や車のEV化に対応

加えて、高精度な深絞り加工を行うソレノイドのカバーやプレート、中央絞り部を径公差30μm以下の精密仕上げを施した電動アクチェーター部品などを、金型技術や素材、熱処理を応用し、切削やファインブランキング工法からプレス加工への工法転換を図り、顧客の生産性向上に貢献。

近年、大きな実績を生んだのがバルブボディプレートにある穴の油路の改善事例だ。油流れの悪さが車両異音の原因になり、自動車メーカーではプレス後の穴に切削加工で面取りを行っていたが、ワーク形状や切粉処理、刃物代が課題に。営業部の新實淳部長は「プレスでは出来ないと言われたが、やれる」と回答。高硬度な板材に穴精度20μのストレートな油路を作るため、1000点以上の金型実績を活かし、被削材の再検討、理想の形状を求め、顧客と綿密に図面形状をすり合わせ、プレス加工で量産を確立。「量産時まで品質保証できるのが当社の強み」と近藤専務。センシング技術にも取り組み、『型構造を造り込み、センシングで保証する』を基に、荷重値や穴数など計測し、プレス機にフィードバックすることで良品を生み出す仕組みを構築した。

穴断面の形状コイニングのトライ品

こうした顧客課題を金型技術で解決する同社の本当の強みは何か。近藤専務は「営業と技術の距離の近さ」を挙げる。営業が顧客の課題を見つけても持ち帰らなければ消えてしまい、持ち帰った課題を技術が取り組まなければ現物にならない。新實部長は「営業で難しいのは2回目の訪問。当社ではすぐに各部署が集まってアイデアを出し合い形にする。2回目の訪問時には顧客に現物を見せて、さらにニーズを深堀りする」。各部署との距離が近く、総合力で顧客の課題に向き合い、解決する。それを繰り返すことで、より高い技術を共有・蓄積できる。これを確立したからこそ、高難度な課題に向き合える。

直近は板鍛造(冷鍛順送)に対応する高剛性ナックルリンクプレスやモータコアを視野に高速精密クランクモーションプレスを導入。「電動化はチャンス」と近藤専務。早速、モータコア巻き線機メーカーからヘアピンコイルの金型とエナメルとの固着の課題を聞き、表面処理を工夫するなどヘアピンコイルの曲げ型、成形型、剥離型を販売。近藤専務は「これが当社のビジネス。顧客の見えない課題を捉え、金型で解決に導くことが我々のスタンスだ」。

近藤 章夫 専務

会社概要

  • 本社: 愛知県刈谷市井ヶ谷町庄司50-18
  • 電話: 0566・36・5611
  • 代表者: 鈴木豊社長
  • 創立: 1957年
  • 従業員: 120人
  • 事業内容: プレス金型設計・製作、プレス部品加工など。

金型新聞 2024年9月10日

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