金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

DECEMBER

22

新聞購読のお申込み

【金型の底力】カワマタ・テクノス 顧客深耕と成形事業を強化

顧客深耕と成形事業強化
事業承継に未来図

川又重雄社長(左)川又祐貴次長(右)

 ゴム金型の製造から成形まで手掛けるカワマタ・テクノスは事業承継を進めるため、事業改革に取り組んでいる。高い金型技術と成形を知る強みを活かし、既存顧客へのコンサルティング活動を強化。昨年は成形事業の質を高めるために、検査体制の自動化などに1・4億円を投資した。後継者育成では明確なロードマップを作成するなど、次世代の経営基盤づくりを進めている。

精密加工をした自転車のチェーンはφ0・06㎜

 事業承継で悩む金型メーカーが多い中、同社ではスムーズに承継するため、計画的に事業基盤の強化と後継者育成を同時に進めている。

 事業基盤強化の一つが、金型と成形を熟知する同社ならではのコンサルティング業務。例えば精度に不満足なユーザーには、金型だけでなく、成形機のたわみを見直すためにプレートを使った治具や、時には成形機の入れ替えまで提案する。錆の発生し易い素材を使う顧客には材料選定から助言する。全ては「次世代でも引き続き、お客様に満足してもらうため」(川又重雄社長)だ。

 こうしたことができるの高い金型技術と組織力があるからだ。特に加工精度には定評がある。熱硬化性ゴムは成形時に金型に入り込むため、ゴム型ではエア抜きが不可欠。旋盤で削った丸型の入れ子に、マシニングセンタでエア溝を切る必要がある。同社では、100個単位の入れ子全て1000分台で溝を切るという。

顧客に品質向上の提案も
検査の自動化などに1・4億円を投資

 独自の組織体系も高い生産性を支える。同社では4人の責任者が自ら顧客を持ち、打合せ、設計、機械加工を全て担う。それを支える共有組織として、旋盤と放電部隊がある。責任者は機械をセットした間に設計や打合せをこなす。かたや旋盤や放電も4人からの仕事がひっきりなしに来る。現場では「誰も遊んでいない」ため、生産性は高い。

 もう一つ次世代に向け強化するのは成形事業。「EV化など技術の進化で金型が減る可能性だってある。将来に備え、今のうちに成形事業の質を高め、経営の安定化につなげる」(川又社長)。

 それを担うのが、後継者の川又祐貴次長。現在同氏が主導して手掛けるのは検査体制の自動化。成形品を撮像し、合否判断を自動化するとともに、離れていても確認できる仕組みを構築中だ。昨年は検査装置や、その他の分野に1億4000万円投資した。祐貴次長は「できるだけ早くに形にしたい」とう。事業承継の次の段階が待っているからだ。

 川又社長は後継を決めた5年前に、第4段階からなる独自の育成ロードマップを作成。現在はその第2段階。検査体制を立ち上げた後に、祐貴次長は数字管理を担当する第3段階に移る予定だ。

 川又社長は言う。「継承を受けた時から本当の『社長』になるには時間が掛かった。社長になった瞬間から走れるほうがいい」。顧客との関係強化と成形事業の安定化、そして事業継承のロードマップ—。明確な意思を持って次世代に向けた準備を着実に進めている。

  • 本  社 :  茨城県つくばみらい市台1056–1
  • 電  話 :  0297-52-6195
  • 代 表 者 :  川又重雄社長
  • 創  業 :  1972年
  • 従 業 員 :  67人
  • 事業内容 :  ゴム金型の設計製造、ゴム部品の成形

Q.人材育成で何に取り組んでいますか

イメージさせること

 作っている部品にどんな性能が求められるのか、常にイメージするように言っています。それを理解していれば、その部位の精度がなぜ必要なのかと考えます。機械加工も同じ。最適な切粉の出方、刃物の摩耗をイメージする。最適条件で削れば音は安定します。今はそれが徹底できているので(キチンと削れていなくて)変な機械音を出すと誰かが「うるさい」と声を出すほどです(笑)。

金型新聞 2021年1月10日

関連記事

ミヨシ 未来見据えたひとづくり【金型の底力】

自社ブランドなどで魅力発信 東京都葛飾区の住宅街に工場を構えるミヨシは、アルミ製の簡易型やカセット型を主力とする。試作や小ロット生産向けに、成形までを一貫で手掛け、一歩進んだ人材育成にも力を入れる。こうした取り組みを基盤…

ササヤマ 機械加工棟を稼働し、効率化とDXを推進

自動車部品などのプレス金型を手掛けるササヤマ(鳥取県鳥取市、0858・85・3380)は、本社工場に増築した機械加工棟を稼働した。3次元レーザー加工機など新たに設備を導入したほか古海工場を集約。生産体制を改善し、金型の製…

日研工作所 大阪本社をエコ工場化

日研工作所(大阪府大東市)は、関西電力(大阪府大阪市)との共同事業として、同社本社工場(敷地面積:55,000㎡)に、太陽光パネル容量1.920MW(メガワット)の大規模な自家消費型太陽光発電設備を導入する。年間自家消費…

匠の技を自動化し、技能を伝承【特集:自動車メーカーの金型づくり】

自動化と人材育成—。自動車産業に関わらず、あらゆる製造現場において共通の課題となっている。人手不足は深刻化しており、課題解消に自動化、省力化は欠かせない。いかに若手に技能を伝承していくかも喫緊の課題となっている。一方で、…

明輝 岩手・一関工場で挑む金型加工の効率化、高精度化【Innovation〜革新に挑む〜vol.2】

バンパーやグリルなどの自動車部品を中心に、家電製品、一般産業用品といった幅広い産業分野のプラスチック射出成形用金型を手掛ける明輝(神奈川県厚木市、046-224-2251)。同社は20年以上に渡ってMOLDINOの切削工…

トピックス

関連サイト