金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

DECEMBER

13

新聞購読のお申込み

【金型の底力】カワマタ・テクノス 顧客深耕と成形事業を強化

顧客深耕と成形事業強化
事業承継に未来図

川又重雄社長(左)川又祐貴次長(右)

 ゴム金型の製造から成形まで手掛けるカワマタ・テクノスは事業承継を進めるため、事業改革に取り組んでいる。高い金型技術と成形を知る強みを活かし、既存顧客へのコンサルティング活動を強化。昨年は成形事業の質を高めるために、検査体制の自動化などに1・4億円を投資した。後継者育成では明確なロードマップを作成するなど、次世代の経営基盤づくりを進めている。

精密加工をした自転車のチェーンはφ0・06㎜

 事業承継で悩む金型メーカーが多い中、同社ではスムーズに承継するため、計画的に事業基盤の強化と後継者育成を同時に進めている。

 事業基盤強化の一つが、金型と成形を熟知する同社ならではのコンサルティング業務。例えば精度に不満足なユーザーには、金型だけでなく、成形機のたわみを見直すためにプレートを使った治具や、時には成形機の入れ替えまで提案する。錆の発生し易い素材を使う顧客には材料選定から助言する。全ては「次世代でも引き続き、お客様に満足してもらうため」(川又重雄社長)だ。

 こうしたことができるの高い金型技術と組織力があるからだ。特に加工精度には定評がある。熱硬化性ゴムは成形時に金型に入り込むため、ゴム型ではエア抜きが不可欠。旋盤で削った丸型の入れ子に、マシニングセンタでエア溝を切る必要がある。同社では、100個単位の入れ子全て1000分台で溝を切るという。

顧客に品質向上の提案も
検査の自動化などに1・4億円を投資

 独自の組織体系も高い生産性を支える。同社では4人の責任者が自ら顧客を持ち、打合せ、設計、機械加工を全て担う。それを支える共有組織として、旋盤と放電部隊がある。責任者は機械をセットした間に設計や打合せをこなす。かたや旋盤や放電も4人からの仕事がひっきりなしに来る。現場では「誰も遊んでいない」ため、生産性は高い。

 もう一つ次世代に向け強化するのは成形事業。「EV化など技術の進化で金型が減る可能性だってある。将来に備え、今のうちに成形事業の質を高め、経営の安定化につなげる」(川又社長)。

 それを担うのが、後継者の川又祐貴次長。現在同氏が主導して手掛けるのは検査体制の自動化。成形品を撮像し、合否判断を自動化するとともに、離れていても確認できる仕組みを構築中だ。昨年は検査装置や、その他の分野に1億4000万円投資した。祐貴次長は「できるだけ早くに形にしたい」とう。事業承継の次の段階が待っているからだ。

 川又社長は後継を決めた5年前に、第4段階からなる独自の育成ロードマップを作成。現在はその第2段階。検査体制を立ち上げた後に、祐貴次長は数字管理を担当する第3段階に移る予定だ。

 川又社長は言う。「継承を受けた時から本当の『社長』になるには時間が掛かった。社長になった瞬間から走れるほうがいい」。顧客との関係強化と成形事業の安定化、そして事業継承のロードマップ—。明確な意思を持って次世代に向けた準備を着実に進めている。

  • 本  社 :  茨城県つくばみらい市台1056–1
  • 電  話 :  0297-52-6195
  • 代 表 者 :  川又重雄社長
  • 創  業 :  1972年
  • 従 業 員 :  67人
  • 事業内容 :  ゴム金型の設計製造、ゴム部品の成形

Q.人材育成で何に取り組んでいますか

イメージさせること

 作っている部品にどんな性能が求められるのか、常にイメージするように言っています。それを理解していれば、その部位の精度がなぜ必要なのかと考えます。機械加工も同じ。最適な切粉の出方、刃物の摩耗をイメージする。最適条件で削れば音は安定します。今はそれが徹底できているので(キチンと削れていなくて)変な機械音を出すと誰かが「うるさい」と声を出すほどです(笑)。

金型新聞 2021年1月10日

関連記事

サンワ金型 トライ用プレス機に材料送り装置を導入

顧客の生産立ち上げ支援 プレス金型やプラスチック金型などを手掛けるサンワ金型(愛知県安城市、0566・92・6150)は社内のトライセンターにある300tトライ用プレス機に材料送り装置を導入。ニーズが増えている小ロット試…

ニチダイ 鍛造型の状態可視化するダイセットを開発

センシング機能でDX推進 冷間鍛造金型を手掛けるニチダイはダイセット内に荷重や変位、振動など各種センサを組み込み、金型の状態を可視化するセンシング機能を持った『インテリジェントダイセット』を開発。これにより、型寿命や製品…

【人事】黒田精工

6月29日付 (敬称略、カッコ内旧職) ▽常務(取締役)金型事業部長兼長野工場長石井克則▽取締役技術本部長米川泉▽取締役管理本部長兼経理部長兼情報システム部長荻窪康裕▽顧問(常務)佐古斉文▽退任(取締役)牧元一幸 牧元氏…

芝浦機械 ファンクショナル・フルイッドを子会社に

芝浦機械(東京都千代田区、03・3509・0200)は、金型冷却装置を手掛けるファンクショナル・フルイッドの全株式を取得し子会社化した。金型冷却装置における実績や独自のノウハウを取り込むことでユーザーへの連続安定成形の提…

明輝 黒柳告芳会長死去、海外・車への進出を主導

プラスチック金型メーカー、明輝(神奈川県厚木市)の黒柳告芳会長が5月5日、死去した。78歳。通夜および葬儀は近親者にて執り行った。7月24日13時半から東京會舘(東京都千代田区)で「献花式」を予定している。 黒柳氏は日本…

トピックス

関連サイト