プレス用金型の設計・製作を中心に事業を展開するヤマト技研。近年は金型のメンテナンスや部品加工なども手掛け、事業領域を拡大する。新規分野のニーズに対応するため、プレス成型解析や、同時5軸マシニングセンタ(MC)、5面門型M…
【金型の底力】カワマタ・テクノス 顧客深耕と成形事業を強化
顧客深耕と成形事業強化
事業承継に未来図
川又重雄社長(左)川又祐貴次長(右)

ゴム金型の製造から成形まで手掛けるカワマタ・テクノスは事業承継を進めるため、事業改革に取り組んでいる。高い金型技術と成形を知る強みを活かし、既存顧客へのコンサルティング活動を強化。昨年は成形事業の質を高めるために、検査体制の自動化などに1・4億円を投資した。後継者育成では明確なロードマップを作成するなど、次世代の経営基盤づくりを進めている。

事業承継で悩む金型メーカーが多い中、同社ではスムーズに承継するため、計画的に事業基盤の強化と後継者育成を同時に進めている。
事業基盤強化の一つが、金型と成形を熟知する同社ならではのコンサルティング業務。例えば精度に不満足なユーザーには、金型だけでなく、成形機のたわみを見直すためにプレートを使った治具や、時には成形機の入れ替えまで提案する。錆の発生し易い素材を使う顧客には材料選定から助言する。全ては「次世代でも引き続き、お客様に満足してもらうため」(川又重雄社長)だ。
こうしたことができるの高い金型技術と組織力があるからだ。特に加工精度には定評がある。熱硬化性ゴムは成形時に金型に入り込むため、ゴム型ではエア抜きが不可欠。旋盤で削った丸型の入れ子に、マシニングセンタでエア溝を切る必要がある。同社では、100個単位の入れ子全て1000分台で溝を切るという。


独自の組織体系も高い生産性を支える。同社では4人の責任者が自ら顧客を持ち、打合せ、設計、機械加工を全て担う。それを支える共有組織として、旋盤と放電部隊がある。責任者は機械をセットした間に設計や打合せをこなす。かたや旋盤や放電も4人からの仕事がひっきりなしに来る。現場では「誰も遊んでいない」ため、生産性は高い。
もう一つ次世代に向け強化するのは成形事業。「EV化など技術の進化で金型が減る可能性だってある。将来に備え、今のうちに成形事業の質を高め、経営の安定化につなげる」(川又社長)。
それを担うのが、後継者の川又祐貴次長。現在同氏が主導して手掛けるのは検査体制の自動化。成形品を撮像し、合否判断を自動化するとともに、離れていても確認できる仕組みを構築中だ。昨年は検査装置や、その他の分野に1億4000万円投資した。祐貴次長は「できるだけ早くに形にしたい」とう。事業承継の次の段階が待っているからだ。
川又社長は後継を決めた5年前に、第4段階からなる独自の育成ロードマップを作成。現在はその第2段階。検査体制を立ち上げた後に、祐貴次長は数字管理を担当する第3段階に移る予定だ。
川又社長は言う。「継承を受けた時から本当の『社長』になるには時間が掛かった。社長になった瞬間から走れるほうがいい」。顧客との関係強化と成形事業の安定化、そして事業継承のロードマップ—。明確な意思を持って次世代に向けた準備を着実に進めている。
- 本 社 : 茨城県つくばみらい市台1056–1
- 電 話 : 0297-52-6195
- 代 表 者 : 川又重雄社長
- 創 業 : 1972年
- 従 業 員 : 67人
- 事業内容 : ゴム金型の設計製造、ゴム部品の成形
Q.人材育成で何に取り組んでいますかイメージさせること
作っている部品にどんな性能が求められるのか、常にイメージするように言っています。それを理解していれば、その部位の精度がなぜ必要なのかと考えます。機械加工も同じ。最適な切粉の出方、刃物の摩耗をイメージする。最適条件で削れば音は安定します。今はそれが徹底できているので(キチンと削れていなくて)変な機械音を出すと誰かが「うるさい」と声を出すほどです(笑)。
金型新聞 2021年1月10日
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