パンチやダイ、強力ばねなどプレス金型部品を取り扱うオネストンは2021年に創業50周年を迎えた。プレス部品専門商社として基盤を築き、近年は「1個づくり」の特殊部品対応やリバースエンジニアリングほか、アメリカ・ケンタッキー…
【鳥瞰蟻瞰】スワニー 社長・橋爪良博氏 一気通貫の体制で生産性向上

分業せずに生産性向上
一人で開発から製造まで
育成には失敗できる環境が大事
大企業に限らず日本の製造業の多くが分業でものづくりを行っています。複数の人員が役割を分担して行う分業という仕組みは、効率良く生産するための有効な手段として古くから用いられてきました。ただ、全ての企業にとってそれが有効かというと必ずしもそうとは限らないと思います。
私はスワニーの代表に就任するまでの十数年間、大手メーカー数社で設計を担当していました。そこでは分業が徹底されていたのですが、全体が見えず社内コミュニケーションに多くの時間を取られていました。大企業であればこのやり方でも生産性を上げることができるのですが、小規模な企業ではそうはいきません。
当社は現在従業員14人で、製品設計や部品試作、金型製作、小ロット生産などを手掛けています。この会社でどれだけ生産性を上げることができるか。小規模な企業ならでの方策として考えたのが、従業員一人ひとりが一気通貫で開発・製造を行う体制でした。
現在、当社では1人の従業員が試作から量産まで設計・製造・出荷を担当しています。一般的に受注すると設計や製造が打ち合わせを重ねながら試作、量産と進めていきますが、当社の場合は全て担当者1人が責任者として進めていくため、課題への対策検討や改善対策など全てにおいて対応がとにかく早い。成形品にもよって変動しますが、通常3~5週間かかるところ、当社なら最短1日で試作品を作ることができます。
また、こうした体制は生産性を上げるだけでなく、従業員の技術力の向上にもつながります。1人で仕事を進めると、途中で失敗しても、どんどん修正し、何度も繰り返すことができ、これが一人ひとりのノウハウや経験になるからです。
そして、ここで大事になるのが、いかに失敗できる環境を作るかということです。よく「たくさん失敗しろ」という話を聞きますが、実際に失敗できる環境にある会社は少ないと思います。高額な設備、厳しい納期、関わる人員の多さなど、失敗するにはあまりにもリスクが大きい。当社ではこうしたリスクを極力減らす工夫をしました。
その一つが設備のハードルを下げることです。対話式のCAM、導入しやすい価格でコンパクトかつ取り扱いが容易なマシニングセンタや射出成形機など、誰でも簡単に、そして気軽に扱える設備を導入し、どんどん挑戦できる環境を整えました。
また、デジタルツールの活用も積極的に進めました。3DCAD/モデリングソフトや3Dプリンタなどのデジタルツールは、コミュニケーション能力が高く、専門知識のない人とでもやり取りがしやすいという利点があります。加えて、デジタルデータを活用することで迅速に試作品としてアウトプットしたり金型に展開したりもできます。これらの取り組みによって、早い段階で失敗と修正を繰り返すことができるようになっています。
今、海外製品との競争激化や市場変化などによって、日本でものづくりを行う意義が改めて問われています。一人ひとりが一気通貫でものづくりを行うことができれば、工程全体を見て最適化が図れ、まだまだ日本の競争力を高めることができると考えています。当社では、「メイド・イン・ジャパン」を再構築すべく、さらに独自のものづくりに取り組んでいきます。
金型新聞 2021年9月10日
関連記事
ものづくりのお役に立ちたい 未来を拓く新技術 来場者の技術革新に貢献 JIMTOFで展示された工作機械や機器、ソフトなど金型や部品加工における最新技術を一堂に集めて披露するUMモールドフェア。今回は新型の5軸加工機や…
自動車のシートや骨格部品などのプレス金型を手掛けるササヤマは金型の競争力を高めるため、金型づくりのDXとベトナム子会社のデータ製作力の強化に取り組む。デジタル技術で金型づくりを効率化し、ベトナム子会社を同社グループのデー…
今年3月、岩手大学と自動車部品メーカーのトヨタ紡織は生産技術開発を中心とした連携で包括協定を結んだ。両者は今後6年に渡り、生産技術のほか、幅広い分野で共同研究を進めていく。「大学全体で連携し、技術開発だけでなく、学生の…
人手不足や採用難で悩む金型メーカーは多い。対応策として海外人材や女性など多様な人材活用の重要性が指摘されている。しかし、そうした人材を生かすには職場の環境や社員の意識を変えるなど簡単ではない。プラスチック金型メーカーの東…