金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

MARCH

15

新聞購読のお申込み

O2 代表取締役社長CEO ・松本 晋一氏 「疎連携」で個社を成長

IBUKI を売却
大企業の足りないパーツに
成長を加速し100億円企業へ

7年前に買収したプラスチック金型メーカーのIBUKIを昨年、自動車部品メーカーのしげる工業に売却しました。売上利益ともに過去最高の予測、中国企業と基本契約した、成形数に応じてロイヤリティを頂く金型のサブスクリプション(定額課金型)ビジネスも概ね合意に至っています。それでも売却を選んだのは、IBUKIの今後の成長を考え抜いた結果です。

私の夢は地方に100億円規模の企業を多く作って、日本経済の活性化につなげることです。その一つの挑戦がIBUKIでした。7年間で売上高は倍以上の10億円強になりましたが、このままコンサルティングを手掛けるO2傘下で100億円を目指すのは時間が掛かりすぎることも明らかでした。

そこでO2が親会社でなくても、成長できるシナリオを考えました。真っ先に出た案が量産を視野に入れた新しいビジネスです。ただ、金型メーカーが量産参入時に課題となるのは、設備力(資本)と安定した受注量の確保です。その両方をカバーするには大手企業の支援が必要になります。

加えて、売却を検討する際に重視したのは、売却先企業の戦略的なパートナーになりえるかどうかです。もっと言えば、売却先の企業にとって自社がその足りないパーツを埋めることができる存在になれるかどうか。部品メーカーには成形技術を重視するタイプと、金型技術が重要とする二通りがあると思います。後者の企業にとっては、金型技術は必要不可欠ですし、手に入れた金型企業は単なる金型部門にとどまらず、成長のためのエンジンになりえます。

そうした考えを検討した結果、IBUKIをしげる工業に売却することになりました。しげる工業はIBUKIを傘下にしたことで、国内回帰や内製強化、IBUKIに成形事業の一部を移管することを検討するなど、戦略的パートナーとして成長戦略を描いています。IBUKIとしても、それらの仕事を請け負えれば、O2の傘下でいるよりも早く、100億円企業に近づけます。

特定の部品メーカーの傘下になると、その企業の「色」が付き、他社と取引しづらくなるというマイナスもあります。それも検討しました。しげる工業はSUBARUの仕事が多いですが、独立系ですし、許容範囲のマイナスだと判断しました。それ以上にIBUKIの社員が今後の展開次第で成形技術を学べることのメリットのほうが大きいと考えました。また、しげる工業からは正田敦郎社長が代表権のある取締役に就くほか、役員が1人派遣されますが、社名変更も中東秀喜社長の交代もありませんし、独立を担保してくれています。

一方、O2とIBUKIは、資本関係はなくなりますが、業務提携先として「『疎』連携」の形で協力していきます。「疎」というのは寄り添うのではなく、離れていても、個々で成長する力を持った上での連携という意味です。

こう考えたのは自身への反省もあるからです。これまでIBUKIやAI企業のLIGHTzなど「ワンO2」として「『蜜』連携」を進めてきました。この関係には良い面もあったのですが、「グループが成長すれば個社の成長が小さくてもいいや」という甘えがあったことも否めません。これではダメで、個社がそれぞれ成長しなければ、全体の成長もあり得ません。

だからこそIBUKIとは疎連携を維持しつつ、O2も改めて単独で成長を加速させる考えです。これまでのコンサル事業やDX支援などを強化し、2024年に上場を目指したいと考えています。

金型新聞 2022年3月10日

関連記事

この人に聞く
オークマ 家城 淳社長に聞く

 令和元年に新社長に就任したオークマ・家城淳社長。市場が不透明化している中、「機電情知一体」「日本で作って世界で勝つ」を掲げるオークマの今後について家城社長の思いを聞いた。  家城淳社長愛知県出身。85年大隈鉄工所(現オ…

笹山勝社長に聞く SAIMS247が目指すこと【ササヤマ challenge!Next50】

新中期経営計画「SAIMS247」。その狙い、そして目的は。笹山勝社長に聞いた。 「短納期」を強みに、海外での競争に打ち勝つ SAIMS247の3カ年の目標は金型の製作期間半減。その真の狙いは金型の競争力の再強化です。当…

瑞穂工業 新社長 大澤史和氏に聞く

超硬工具や各種超硬素材の製造販売を手掛ける瑞穂工業(大阪市西淀川区、06・6471・4721)は4月、大澤史和氏が代表取締役社長に就任し、新たな船出を迎えた。同社は1944年創業以来、超硬工具や金型の製造に携わり、独自の…

澤越俊幸さん 3Dプリンタの普及にまい進する[ひと]

日本AM協会専務理事 澤越 俊幸さん 金型、航空機、自動車、電子部品—。日本のものづくりに3Dプリンタ(AM)を普及させる。それを目標とする一般社団法人の専務理事を務める。会員企業や研究機関とスクラムを組み、セミナーによ…

大野 和夫さん 金型作りは好きでないと続かない【ひと】

「金型作りは上手くいかないことがある。そんな時は、トイレの個室で考える。そうすると良いアイデアが浮かぶ瞬間が訪れる」と、アイデアが浮かぶ時や場所を見つけるのも技術者の役目と話す大野和夫さん(68歳)。金型製作歴40年以上…

トピックス

関連サイト