勝負は中身だ 他社よりも一歩先へ 好循環生まれる体制を 〜技術開発の必要性〜 1939年生まれ、滋賀県出身。立命館大学法学部卒、61年に大垣市内にある会社に就職したのち、68年に同社(大垣精工)を創業。超精密プレス金型…
O2 代表取締役社長CEO ・松本 晋一氏 「疎連携」で個社を成長
IBUKI を売却
大企業の足りないパーツに
成長を加速し100億円企業へ

7年前に買収したプラスチック金型メーカーのIBUKIを昨年、自動車部品メーカーのしげる工業に売却しました。売上利益ともに過去最高の予測、中国企業と基本契約した、成形数に応じてロイヤリティを頂く金型のサブスクリプション(定額課金型)ビジネスも概ね合意に至っています。それでも売却を選んだのは、IBUKIの今後の成長を考え抜いた結果です。
私の夢は地方に100億円規模の企業を多く作って、日本経済の活性化につなげることです。その一つの挑戦がIBUKIでした。7年間で売上高は倍以上の10億円強になりましたが、このままコンサルティングを手掛けるO2傘下で100億円を目指すのは時間が掛かりすぎることも明らかでした。
そこでO2が親会社でなくても、成長できるシナリオを考えました。真っ先に出た案が量産を視野に入れた新しいビジネスです。ただ、金型メーカーが量産参入時に課題となるのは、設備力(資本)と安定した受注量の確保です。その両方をカバーするには大手企業の支援が必要になります。
加えて、売却を検討する際に重視したのは、売却先企業の戦略的なパートナーになりえるかどうかです。もっと言えば、売却先の企業にとって自社がその足りないパーツを埋めることができる存在になれるかどうか。部品メーカーには成形技術を重視するタイプと、金型技術が重要とする二通りがあると思います。後者の企業にとっては、金型技術は必要不可欠ですし、手に入れた金型企業は単なる金型部門にとどまらず、成長のためのエンジンになりえます。
そうした考えを検討した結果、IBUKIをしげる工業に売却することになりました。しげる工業はIBUKIを傘下にしたことで、国内回帰や内製強化、IBUKIに成形事業の一部を移管することを検討するなど、戦略的パートナーとして成長戦略を描いています。IBUKIとしても、それらの仕事を請け負えれば、O2の傘下でいるよりも早く、100億円企業に近づけます。
特定の部品メーカーの傘下になると、その企業の「色」が付き、他社と取引しづらくなるというマイナスもあります。それも検討しました。しげる工業はSUBARUの仕事が多いですが、独立系ですし、許容範囲のマイナスだと判断しました。それ以上にIBUKIの社員が今後の展開次第で成形技術を学べることのメリットのほうが大きいと考えました。また、しげる工業からは正田敦郎社長が代表権のある取締役に就くほか、役員が1人派遣されますが、社名変更も中東秀喜社長の交代もありませんし、独立を担保してくれています。
一方、O2とIBUKIは、資本関係はなくなりますが、業務提携先として「『疎』連携」の形で協力していきます。「疎」というのは寄り添うのではなく、離れていても、個々で成長する力を持った上での連携という意味です。
こう考えたのは自身への反省もあるからです。これまでIBUKIやAI企業のLIGHTzなど「ワンO2」として「『蜜』連携」を進めてきました。この関係には良い面もあったのですが、「グループが成長すれば個社の成長が小さくてもいいや」という甘えがあったことも否めません。これではダメで、個社がそれぞれ成長しなければ、全体の成長もあり得ません。
だからこそIBUKIとは疎連携を維持しつつ、O2も改めて単独で成長を加速させる考えです。これまでのコンサル事業やDX支援などを強化し、2024年に上場を目指したいと考えています。
金型新聞 2022年3月10日
関連記事
三井ハイテック モータ金型技術部 モータ金型組立グループ 特任技師 首藤公徳さん(62) 電気自動車や家電に不可欠なモーター。そのコアは鉄の板を打ち抜き、作られる。精密で複雑な形状のコアはパンチやダイが絶妙なクリアランス…
ものづくりのお役に立ちたい 未来を拓く新技術 来場者の技術革新に貢献 JIMTOFで展示された工作機械や機器、ソフトなど金型や部品加工における最新技術を一堂に集めて披露するUMモールドフェア。今回は新型の5軸加工機や…
プラスチック金型を手掛ける名古屋精密金型(愛知県知多郡東浦町、0562-84-7600)は7月、坂元正孝氏が社長に就任した。同社の工場は本社、熊本、宮崎とベトナム、インドネシアの5工場で金型を製作している。金型業界を取り…
各種工業用ヒーターや金型均熱システムなどを手掛ける平和電機(愛知県一宮市、0586-77-4870)は独自のエンジニアリング力を強みに、金型メーカーの様々なニーズに応える。近年はSDGsなど循環型社会への貢献を目指し、新…