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大型設備導入で生産体制強化 永井製作所が目指す新規開拓【金型の底力】

弱電部品やライフサイエンス部品、自動車部品など幅広い業種のプレス用金型を手掛ける永井製作所。ここ数年、積極的な設備投資を進め、生産体制の強化に取り組んでいる。昨年には事業再構築補助金を活用し、約1億円をかけてマシニングセンタ(MC)やワイヤ放電加工機、平面研削盤を導入した。加工の大型化を図り、新規分野の開拓を目指す。

昨年導入した立形MC
幅広い分野の金型を手掛ける

同社はもともと家電メーカーからの受注が9割を占め、空調機や冷蔵庫など白物家電向けのプレス用金型を手掛けていた。しかし、2000年以降、白物家電の生産を海外に移管する動きが進み、仕事が減少。さらにリーマン・ショックが追い打ちをかけ、厳しい経営状況へと追い込まれていった。

自動車など家電製品以外の金型を受注し、事業を継続する中、17年に3代目として永井慎也社長が就任。コストの適正化や営業の強化に取り組み、経営の立て直しを図った。「既存顧客の深掘りと新規顧客の開拓を進め、徐々に経営状況が改善していった」(永井社長)。

受注が回復する一方で、課題となったのが設備力。「設置から30~40年経過した設備がほとんどで、より高精度で高効率な金型づくりを行うには設備投資が不可欠だった」(永井社長)。

そこで立形MC「MB66VB」(オークマ)を導入。さらに補助金を活用し、AI自動補正機能搭載の大型ワイヤ放電加工機「α‐C800iB」(ファナック)、立形MC「MB56VB」(オークマ)を導入するなど、加工能力を大幅に向上させた。それにより仕事量も増加。売上高は10年前に比べ倍増した。

新設したミーティングルーム

21年には事業再構築補助金に採択され、立形MC「MB‐80V」(オークマ)や平面研削盤「PSG106CA」(岡本工作機械製作所)を新規導入した他、「α‐C800iB」を増設。200~400tクラスのプレス金型に対応できる生産体制を構築した。

「車の電動化や自動運転などで新しい部品はもちろん、EVスタンドなど派生する製品もこれから増えるはず。そうした新規分野の金型も受注できるように設備の大型化を進めている」(永井社長)。今後はトライプレス機の導入や工場の増改築なども視野に入れる。

こうした設備強化に加えて、昨年にはミーティングルームを新設。もともと放電加工機が設置されていた部屋を電波障害対策の鉄板などはそのままにリニューアル。「レトロ風でおしゃれな空間を目指した」(永井社長)。

デジタル化にも積極的に取り組む。昨年には県と共同で暗黙知だった金型製作のプロセスを形式知化する研究開発を行った。また、社内外とのコミュニケーションを円滑化するために、ミーティングボードを導入。現在は生産管理システムの導入を検討する。若手従業員がゲーム感覚で取り組める仕組みの構築を目指している。

一昨年には、「地域未来牽引企業」に認定。取引先への信用度の向上や、各種支援策などが受けられる他、知名度やブランド力が向上し、新卒を採用するなどの効果も出ている。「今後も新しい挑戦を続け、従業員が生き生きと働ける魅力ある会社を目指していきたい」(永井社長)。

会社の自己評価シート

未来に投資する力に10点。ここ数年、積極的な設備投資や若手の採用など、未来を見据えた取り組みを進めているのが理由。人材力や設備力も高い。一方、技術力や営業力、PR・発信力などは今後の課題。

会社概要

  • 本社:群馬県邑楽郡邑楽町中野3062
  • 電話:0276-88-3311
  • 代表者:永井慎也社長
  • 創業:1961年
  • 従業員:15人
  • 事業内容:プレス金型設計製作

金型新聞 2022年9月10日

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