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【インタビュー】ナカヤマ精密 半導体や電子部品の需要開拓

中山愼一社長

台湾のTSMCとソニーによる新たな半導体工場の建設が進む熊本県菊陽町。その地で半導体製造装置や電動車、電子部品向けの需要拡大を狙うのが、金型部品や精密部品を手掛けるナカヤマ精密だ。今年1月にTSMCの工場の隣接地に「第2テクニカルセンター」の建設に着手するほか、高精度や大型化に対応する設備投資を積極的に行っている。全方位で精密部品の需要拡大を狙う同社の取り組みを取材した。

熊本に新工場、高精度や大型化に対応

厚さ0.018㎜の超硬(社内技術サンプル品評会優勝作品)
現在のテクニカルセンター(同規模の第二テクニカルセンターを建設中)

高台にある熊本空港から車で約20分。広大な敷地が目の前に広がる。建設が進む熊本県菊陽町のTSMCとソニーの半導体工場だ。ナカヤマ精密が2022年秋に稼働を目指す「第2テクニカルセンター」はその隣接地にある。熊本工場(熊本県西原村)、テクニカルセンター(同県菊陽町)に続く、3つ目となる生産拠点で、敷地面積約1万2000㎡、建屋面積は2700㎡の広さに、総額約10億円の投資をする予定だ。

狙いは半導体製造装置向け部品や金型部品などの増産や生産体制の強化。BCP(事業継続計画)対策も狙いの一つで、熊本工場、テクニカルセンターと連携しながら、相互に生産をしあうなど、リスクを分散する。

新工場では、サブナノレベルの高精度加工に挑むほか、大型化を進め、受注の幅を広げる。そのために、高精度加工機に加え、大型のマシニングセンタ(MC)なども導入する計画だ。

高精度へのあくなき追求

同社が手掛ける、精密金型部品や電子部品、半導体装置向けの部品の高精度要求は年々高まっている。「これまで1~5μmでも高精度とされていたが、今やサブナノクラスのオーダーもある」(中山愼一社長)ほど。「光ファイバーの部品では、真円度で10ナノクラスの要求もある」という。

こうした要求に応えるため、同社では設備投資を重ねてきた。昨秋に熊本工場に導入したソディックの超精密ワイヤ放電加工機「EXC100L」もその一つ。10μmのワイヤ線での加工を可能にした特別仕様で「コーナRプラスアルファ5μmのクラスの世界最小のコーナRを目指す」(中山社長)という。ワイヤ放電以外にも、微細精密対応のMC、プロファイル研削、形彫り放電加工機など微細精密加工に対応できる設備を積極的に投資している。

世界最小コーナRを目指すソディックの超精密ワイヤ放電加工機「EXC100L」

中山社長は高精度化について「設備による部分は大きいがナノオーダーになると、それを使い切る能力も必要」という。そのために、新工場では振動に配慮するほか、±0.3℃に制御した恒温室も設ける。「ナノクラスだと我々ユーザーだけではなく、メーカーとコラボしながらものづくりを進める必要がある」とも指摘する。

大型化で受注の幅広げる

精密加工と同時に進めるのが大型化だ。同社は、これまで300㎜角までの部品を得意としてきたが、近年ではより大きいサイズを加工して欲しいという要求が増えているという。「これまでお断りするか、外注に出していたが、高精度で大型対応となると外注が難しく、中に取り込む」考えだ。すでに熊本工場にも、600㎜角に対応できる大型MCや放電加工機、研削盤などを導入している。

機上計測や自動化など効率化を加速

あらゆる加工機で機上計測を進める
自動化も加速する

高精度化と大型化に加え、高効率なものづくりも追求する。その一つが自動化だ。同社では、ATCやAWCによる自動化は当然のように進めているが、現在取り組むのは、どこまでを自動化するのかという切り分け。

中山社長は「2~3μmクラスの加工までなら自動化できる」とみており、「人の手が必要なものと、機械化できるものと2本立てで加工効率を追求していく」と話す。

さらに、機上計測も効率化のために強化する。MCはもとより、研削盤や、最近ではワイヤ機への高精細なカメラやレーザーなど搭載した機上計測を進めている。「短時間で、効率的に、高精度に測定できる機上測定は欠かせない。また精度の面からも脱着することを極力減らしたい」からだ。

新技術にも積極的に挑戦

新技術にも積極的に取り組む。昨年にはフェムト秒レーザー加工機を導入。テクスチャリングやシボのほか、刻印などの代替えとして活用を進めている。また、新工場では、DLCなどコーティング設備などの投資も予定しており、部品の高付加価値化を進める考えだ。

メイドインジャパンへのこだわり

ここまで国内生産にこだわり、高付加価値の加工に注力するのは「製造業は自らでものを作り続けることが基本」という想いがあるからだ。中山社長は、日本の製造業の衰退について「製造技術開発を怠った結果」とみる。「そうしないために、我々はメイドインジャパン、メイドイン熊本にこだわり続けたい」という。

こうした姿勢や積極的な設備投資に加え、足元では半導体関連の需要が好調で、前期の売上高は過去最高の30億円を突破した。ただここもあくまで通過点。中山社長は「2019年に創業50年を突破したが、この先も何十年と継続していける企業を目指したい」として、近く新たな目標を設定する考えだ。

会社概要
  • 本  社:大阪市淀川区西宮原2–1–3 SORA21新大阪14F
  • 電  話:06・4807・1500
  • 代表者 :中山愼一社長
  • 創業  :1969年
  • 従業員数:216人
  • 事業内容:超硬を主とする耐磨耗精密工具類の製造販売。金型、半導体・電子部品向け、コネクタ関連、医療用向けなど。

金型新聞 2022年1月10日

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