金型産業 発展へ 日本金型工業会 5つの施策 出席者 エムエス製作所社長 迫田 幸博氏 小出製作所社長 小出 悟氏 長津製作所会長 牧野 俊清氏 日進精機相談役 加藤 忠郎氏 野田金型社長 堀口 展男氏 2月号で…
価格の引き上げ急務 業界を挙げた取引環境是正へ【特集:どうする値上げ】
金型の製造コストが上昇している。金型の母材として多く使われる工具鋼や、各種金型部品などが相次いで値上げされたためだ。加えて、工場稼働に必要な電気料金も依然、上昇傾向にある。金型メーカー各社は、取引先への価格の引き上げ交渉などの対応が急務となっている。

金型メーカーの経営を圧迫
大同特殊鋼は工具鋼製品を4月契約分から5~15%値上げした。工具鋼を製造するための電炉生産に不可欠な電力などのエネルギーコストが高騰していることや、諸資材のコストが上昇したことなどを価格改定の理由として挙げている。プロテリアル(旧日立金属)も昨年4月に特殊鋼製品の値上げを実施。原材料価格に連動させた価格運用(価格スライド)の適用原材料を増やすなどの対応も行っている。
日刊工業新聞社によると、東京地区の工具鋼の相場は上昇傾向にあるという。5月の市中実勢価格は、炭素工具鋼で前月末比3万5000円高、特殊工具鋼は同2万円高、ダイス鋼は同3万円高と全て値上がりしている状況だ。
こうした材料費の高騰によって、各種金型部品の価格も上昇傾向にある。パンチ工業は昨年10月の注文分からカタログ品の価格を改定し、10~20%ほど値上げした。今年7月にも一部商品の価格を改定する。ミスミは7月3日注文分からパンチやダイ、ピンなどの一部商品を平均8%値上げするとしている。
また、工場の稼働に必要な電力料金の値上げも金型の製造コストに大きな影響を及ぼしている。国内大手電力会社は今年4月から、法人向け高圧・特別高圧の電力料金を相次いで値上げした。各社によって値上げ幅は異なるが、中部電力ミライズは8・6~9・4%ほど引き上げた。
ある金型メーカーでは、撤退が相次ぐ新電力会社から大手電力会社に切り替えたことで、電力料金が昨年比2倍以上に上昇したという。また、精密加工を得意とする別のメーカーでは、工場環境を一定に保つために空調設備を24時間稼働させており、同社の社長は「製造コストに大きく影響している」と話す。
エネルギーや原材料のコストは上昇基調が続いており、今後さらに金型メーカーの経営を圧迫する可能性もある。金型メーカーが適正な利益を確保し、事業を継続させていくためには、製造コスト上昇分を反映させた価格の引き上げなどが不可欠となる。金型メーカー各社の価格交渉力が問われるとともに、取引環境の是正など業界を挙げた取り組みも求められる。
金型新聞 2023年6月10日
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