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【特集:新春金型座談会2026】日本の金型メーカーが勝ち残るカギは何か(Part2)

山中社長が考える勝ち残るカギ 「市場拡大」

技術力で多大な開拓の余地

司会 国内需要が縮小するなかで海外市場の開拓は多くの金型メーカーの課題です。山中社長(ヤマナカゴーキン)は勝ち残るカギに「市場拡大」を挙げられました。海外の市場開拓についてどのようにお考えですか。

山中 横田社長がおっしゃるように日本の金型メーカーは設計力や技術力が総じて高いし、量産立ち上げを含めるサービス対応力はとても優れています。その価値を必要とされる国や地域に展開すれば、まだまだ市場開拓の余地があると思っています。

司会 貴社で直近の海外展開の動きは何ですか。

山中 昨年インドに販売拠点を新設しました。インドは自動車の一大生産地として産業集積が進んでいます。インドで求められているのは、最先端ではなく少し過去の技術。これまで当社が培ってきた技術で競争に勝つことができる。チャンスを感じ進出しました。

司会 貴社における海外事業はどのような位置づけですか。

山中 全事業(国内・海外)の売上高の約半分を占めています。国内で開発した鍛造金型をタイや中国の工場に送り、自動車の鍛造部品を生産し海外の取引先に納めています。

司会 自動車部品はどのようなものですか。

山中 エンジンやミッションや足回りの部品です。当社は1961年に創業し長きにわたって自動車の鍛造金型と鍛造部品を手掛けてきました。鍛造のシミュレーションソフトも駆使し、金型開発から鍛造品量産までトータルの技術を持つのが強みです。

その技術力を生かし、海外ではシンガポールやタイ、そしてインドの販売拠点で海外市場を開拓しています。成長する海外市場ではまだまだ事業を拡大できると感じています。

司会 井口社長(東海エンジニアリングサービス)は海外市場の開拓をどのようにとらえていますか。

井口 超精密光学レンズ、レンズ用金型や金型用CVD‐SiC材料を事業とする当社にとって中国や台湾などの海外向けは全売上高の中でも大きな割合を占めています。世界のレンズの量産はアジア圏に圧倒的なボリュームがあり、開拓する市場として外せません。

特に中国は大きな可能性を感じます。数千万円する案件でも即断即決で交渉に応じてくる。ビジネスに対してとても貪欲です。

司会 中国など海外には開拓できる需要がたくさんあるということですね。

横田 一方で私が中国企業との取引で感じるのは技術者が技術習得に対してとても熱心なことです。Tダイや押出成形の案件で技術的な提案や情報交換をする際、貪欲に教えを請われる。日々勉強しているから技能の習熟が早い。教え甲斐があると感じることが多いです。

フィルム・シート成形装置(アクスモールディング)

技術流出に一定の線引き

司会 技術指導をし過ぎたり最先端の金型を販売したりすると技術流出の懸念はありませんか。

山中 当社は事業のコア技術である金型の技術流出を防ぐため金型は国内でしか作りません。タイや中国工場で金型を作らないようにしています。

井口 当社は海外企業とも一定の技術の共有は必要だと思っています。アジアが世界におけるレンズの一大生産地ですから、レンズ生産の技術が進歩し生産規模が大きくならないと金型の世界のマーケットも大きくならない。

しかし当社が持つ固有のコア技術の流出は防ぎます。中国のレンズメーカーから金型開発の依頼を受けて、その金型技術が世に出回っても構わないと判断すれば受注しますが、当社の競争力を支える技術を要するものは受注しない。営業や技術と常に情報共有しそのバランスを考え線引きしています。

横田 私も技術の流出は防ぐべきと思いますが、いくら防ごうとしてもいずれ広まってしまう。それにTダイの金型や押出成形では中国のメーカーも当社と同業なわけで、技術交流した方がTダイと押出成形の業界は発展すると思います。ですからもっと技術をオープンにしてもいいと思っています。

中国の同業にはTダイや押出成形の技術論文や資料を提供して説明してあげることもあります。そうすることでそのお返しに仕事をくれることもある。対抗するのではなく高め合うことで世界のTダイ業界が発展し当社も成長すると考えています。

営業生産性高め、国内も伸ばす

司会 一方、国内市場はいかがでしょうか。

山中 市場がシュリンクしていますがやり方次第で仕事を獲得できます。そのカギとなるのは営業の生産性を上げることです。既存や新規の取引先と接する機会を増やし、課題を教えてもらい、解決策を提案する。そうすることで受注件数は確実に増えると思います。

金型メーカーの多くは営業が苦手で、営業の生産性が低い。当社もそんな1社でした。そこで当社は社内用の営業支援ソフトを開発しました。取引先の鍛造部品や金型開発のニーズを顕在化させてから案件化するまでのプロセスを見える化するものです。

自社開発した営業支援ソフト「SaleScience」(ヤマナカゴーキン)

司会 見える化するのは、案件化までのプロセスですか…。

山中 そうです。というのも日本の金型メーカーは技術力が高いので、案件化すれば受注率は高い。しかし取引先に潜在しているニーズを表面化させ、案件化するまでが苦手です。このソフトは営業が取引先に訪問しニーズを案件化するプロセスを管理できるようにしました。

案件化する件数を増やせば受注の確率も上がります。受注目標額から逆算すれば、目標案件化件数を満たすために取引先に年間で何回訪問すればいいか導き出せる。このソフトを活用することで訪問回数を増やし営業生産性を上げる。そうすることで受注率は確実に高まります。当社はこれによって新規部品の売上高を年率10%伸ばしています。

案件化までのプロセスを体系的に理解する営業は少ない。それを見える化し、仕組み化することで営業力を高めることができます。営業で悩む金型を含めたものづくりメーカーは多いと思い、当社が開発した営業支援ソフトは昨年、外販も始めました。

Part3に続く

金型しんぶん2026年1月10日号

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