金型の大型化ニーズが進んでいる。電気自動車の開発や環境規制により車の軽量化を図るため、大型部品のアルミ化や樹脂化、超高張力鋼板の採用が増加しているからだ。工作機械メーカーの中でも、金型の動向から大型加工機に注力し始めて…
「世界のオギハラ」再建
-長谷川 和夫社長に聞くー
米に工場、生産力強化
自動車ボディ向けプレス金型を手掛けるオギハラの社長が今年1月に交代した。新社長はアメリカ現地法人副社長の長谷川和夫氏。製造部門を経験し、長く海外畑を歩み、海外自動車メーカーの金型調達や開発にも携わるなど、「世界の金型を知り尽くした」人物。生産体制の改革やグローバル化、アルミ材向けの金型技術力の向上など同社の強みを最大限に高め、付加価値の高い金型づくりを目指す。
アルミやカーボン 新部材用の金型に挑む
オギハラは、自動車ボディ向けでは世界有数のプレス金型メーカー。2009年に自動車部品メーカーのタイサミット社(タイ)の傘下に入り、11年には自動車メーカーの比亜迪汽車(中国)に館林工場を譲渡した。ピーク時は900人弱だった従業員数も現在は400人に、生産額も約半分(100億円)に減少したが、技術力や生産性向上を図るなど、再建を進める。長谷川社長は「親会社も同じメーカーだから、ものづくりの大変さをよく知っている。技術者の交流も盛んで、対等で良好な関係を築いている」と強調する。
そんな親会社が社長に指名したのが長谷川和夫氏。指名された理由について長谷川社長は「金型を熟知していたから」という。オギハラに入社後、設計、加工、金型調達までを経験し、欧州やアジアの自動車メーカーの金型開発に携わるなど、30年以上に渡り金型に関わってきた。だからこそ、長谷川社長に求められているのは「より付加価値の高い金型づくりができる仕組みを構築すること」だ。
そのひとつが、昨年から始めているすべての金型製造工程をシミュレーションする「フルサイクルシミュレーション」という取り組み。機械加工が始まる前に全工程の検証を完了し、納期短縮と生産コストの削減で生産効率の向上を目指す。
現在、オギハラが手掛ける金型の約9割が輸出向け。そのため、海外で多く採用されているアルミ材向けの金型技術に強みを持つ。アルミ材はハイテン材と同様に成形性が悪く、プレスでは難しい材料とされる。長谷川社長は「アルミ材向けのプレス金型技術では世界一」と自負する。省エネや電気自動車の普及など、軽量なうえに強度の高いアルミ材のニーズは増えるとみられ、「今後もアルミ材向けの金型を伸ばしていく」と話す。
グローバル展開も加速させる。現在、拠点は日本、タイ、中国、アメリカの4つ。アメリカ以外は金型工場を持つが、年内には中国との合弁金型工場を増設するほか、アメリカの量産工場も増設する予定だ。
グローバル化は人材面にも及ぶ。語学力の向上のためにインセンティブを設け、社員の語学習得へのやる気を促す。「いくら機械化が進んでも何をどう削るかは人が考える。グローバルで同じ品質の金型をつくるために、世界中に派遣できる人材を育成していく」。
長谷川社長は、「日本と海外での住み分けができつつある」とし、「日本に求められるのは、納期、難度、品質などレベルの高い金型」。そうした金型づくりを実現するため「特長を極めることが不可欠」、生産体制の改革、アルミ材向けの金型技術、グローバル化とオギハラにしかできないものを追求。
「今後カーボンやアルミ、ハイテン材など素材も進化し、求められる金型は変わっていく。そうした変化に対応できなければならない」と技術、人材、海外展開などあらゆる面で挑戦を続ける。その上で、「すべての従業員に喜んでもらえる会社にしたい」という目標を掲げる。
プロフィール
1954年生まれ、静岡県出身。77年日本大学卒業後、オギハラ入社、86年オギハラ・アメリカ・コーポレーション(現タイサミット・アメリカ・コーポレーション)、2013年同副社長、16年1月オギハラ社長に就任。
金型新聞 平成28年(2016年)5月14日号
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