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【金型の底力】美濃工業 金型の内製化に着手

コストダウン、納期短縮図る

自動車用アルミダイカスト部品メーカーの美濃工業(岐阜県中津川市、0573-66-1025)は2021年3月、埼玉県熊谷市に「熊谷金型センター」を設立し、金型製造を開始した。20年10月には静岡県沼津市に金型設計拠点も新設。金型の内製化に取り組み、アルミダイカスト部品のコストダウンや納期短縮を図る。今後需要拡大が予測される自動車の電動化に対応した部品開発の効率化も狙う。

杉本  潤社長
小〜大物金型加工に対応
HV・EV向けダイカスト部品

自動車のECU(電子制御ユニット)ケースやインバータケースなどのアルミダイカスト部品を手掛ける美濃工業。従来までこうした部品の製造に必要な金型は全て協力企業から調達してきた。しかし近年、自動車メーカーからの納期短縮やコストダウン要求が高まり、「外注だけでは対応が難しくなってきた」(杉本潤社長)。

そこで20年に約4億円をかけて金型製造を手掛けていた工場を設備も含めて取得。すでに設置されていた門形マシニングセンタ(MC)や横中ぐりフライス盤などの大型加工機に加え、新たにMCやワイヤ放電加工機、形彫放電加工機、CAD/CAMを設備。小物部品向け金型の加工にも対応できる体制を整えた。

勤務する従業員は17人。「現場の作業者全員が金型製造の経験者だ」(杉本社長)。すでに400㎜×300㎜程度の小物金型を製作しており、現状はトラブルなくトライできているという。

また、金型製造拠点とともに本社技術部のテクニカルセンター構想の下、設計拠点も新設した。静岡県沼津市に拠点を構え、3人体制で金型設計や構造解析などを手掛けている。「設計から加工、組立まで金型製造の一連工程を社内で完結できる体制を構築している」(杉本社長)。

内製化によって、金型製作にかかる日数を大幅に削減できる。また、製品設計段階から金型の要件を考慮できるようになるため、上流工程から得意とするダウンサイジングや薄肉化などのVE(バリューエンジニアリング)提案が可能になる。

こうした強みを生かし、近年加速する自動車の電動化に対応する部品の取り込みを狙う。同社は現在、自動車の電動化部品の製造を強化するために、中津川市の旧本社工場跡地に22年夏ごろ完成予定の新工場を建設している。「金型の内製化で部品開発の効率化が図れれば、EV関連など新規部品も受注しやすくなると考えている」(杉本社長)。

新型の放電加工機

稼働を開始して約9カ月。今後の課題は金型の標準化だ。「安定した品質で金型づくりを行うためには、使用する部品や材料、組付のクリアランスなどといった社内規格が不可欠。標準化を進め、今年度中には整えていく。22年秋にはIATF16949の認証取得審査も受ける予定」(杉本社長)。

また、技術力の向上にも取り組む。現在、部門間の壁を取り払い、作業者の多能工化を進めている。人員も増強しており、「当面は40人程度まで拡大することを考えている」(杉本社長)。

21年度は年間20型の製作を目指す。現状は小物金型が主だが、今後はグループ会社の美濃工業栃木(栃木県小山市)が手掛ける3000tクラスの中・大物金型の加工や保全なども手掛けていく考え。

会社の自己評価シート

「未来に投資する力」に10点、「チーム力」に9点、「技術力」「人材力」「設備力」「営業力」に8点を付けた。一方で、「PR・発信力」は5点と今後の課題に挙げている。

会社概要

  • 本社  :岐阜県中津川市中津川964-103
  • 電話  :0573-66-1025
  • 代表者 :杉本潤代表取締役社長
  • 創業  :1951年
  • 従業員 :2717人(国内外グループ人員)
  • 事業内容:アルミダイカスト・ダイカスト製品の鋳造・加工・組立。

金型新聞 2021年12月10日

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