金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

APRIL

01

新聞購読のお申込み

進化する金型のスマート化

 ITやセンシング技術を駆使した「金型のスマート化」が進んでいる。温度や圧力など様々なセンサを金型に取り付け、インターネットに接続することで、金型の状態がいつでもどこでも把握できるようになるほか、取得したこれらのデータを分析することで成形条件の最適化や不具合の予知などにも活用できる。熟練技能者の不足や製造現場のIoT化などによって、こうした「スマート化」の需要は増している。ここでは、「金型のスマート化」を推進する最新事例とそれを支える最新機器を紹介する。

旭(長野県諏訪市)

 ダイカスト金型メーカーのが「金型のスマート化」に取り組み始めたのは、3年前。コンサルタント企業の三井共同建設コンサルタント(東京都品川区、03-3495-1321)と共同で遠隔監視クラウドシステム「FieldChecker(フィールドチェッカー)」を開発してからだ。

遠隔監視システムを開発

 ダイカストでは、金型の温度が成形品の出来を大きく左右する。その一方で、きちんとした温度管理ができている現場は少なく、ほとんどが熟練技能者の経験や勘に頼っていた。「金型の不具合や成形不良が発生した場合、トラブル時の状況が分からず原因究明に手間取ることが多かった」(増澤久臣社長)という。

 こうした課題を解決するために旭では、「フィールドチェッカー」を開発し、このシステムを活用した金型を提案するようになった。提案するのは、金型に熱電対を取り付けて温度を計測し、金型の状態を数値化するというもの。「フィールドチェッカー」に接続することで、計測データを常時クラウドに上げ、リアルタイムで金型の温度が把握できる。

 クラウドとの接続には、SIM回線を使用するため、100V電源と電話回線があれば簡単に使うことが可能。また、金型の温度以外にも現場の室温や照度、カメラ映像のデータなども取得できる。

 ユーザーは、これらの取得したデータをパソコンやタブレットで、金型の状態や稼働状況を見ることができる。成形不良や不具合が発生した時には、データを分析し、原因究明や改善につなげることも可能。そのほか、「今まで見えなかった“チョコ停”なども見えるようになり、生産効率の改善などにもつなげられる」(増澤社長)。


 今後は各種センサのワイヤレス化を進めていく考えだという。現在、匠ソリューションズ(仙台市青葉区、022・342・1888)の温度センサ「TWINS‐T」を活用したシステムを構築しており、「より使いやすい形に改良していく」(増澤社長)。また、AI(人工知能)を活用し、自動で不良予測できる仕組みなども研究中だ。

 将来的には、同システムを使ったコンサル事業への展開を目指す。「製造現場のスマート化は間違いなく進んでいく。まずは取り入れて、その世界を知ることが重要。これからさらに知見を深め、新しい金型づくりにつなげていきたい」(増澤社長)。

金型しんぶん 2019年9月日10

関連記事

この人に聞く2015<br>天青会(金型工業会東部支部)<br>小泉 秀樹会長(ペッカー精工社長)

この人に聞く2015
天青会(金型工業会東部支部)
小泉 秀樹会長(ペッカー精工社長)

金型以外にも視野 原点から新たな発見  日本金型工業会東部支部天青会の会長に今年5月、就任した。「原点に立ち返って、色々な視点から根本を見直せるような活動をしていく」と今年度のテーマに「原点回帰」を掲げる。  天青会に入…

大型設備導入で生産体制強化 永井製作所が目指す新規開拓【金型の底力】

弱電部品やライフサイエンス部品、自動車部品など幅広い業種のプレス用金型を手掛ける永井製作所。ここ数年、積極的な設備投資を進め、生産体制の強化に取り組んでいる。昨年には事業再構築補助金を活用し、約1億円をかけてマシニングセ…

【我ら金型応援隊】トクピ製作所 超高圧で自動化促進

産業用高圧ポンプや高圧クーラントユニットの製造、販売を手掛けるトクピ製作所は、超高圧クーラントユニットの製造に注力している。 「HIPRECO」は、最大30Mpaの水圧で刃先からクーラント液を噴射。切屑を細かく分断、排出…

【この人に聞く】NTTデータエンジニアリングシステムズ・東 和久社長「価値創造のパートナーに」

NTTデータエンジニアリングシステムズ(東京都大田区)は7月、沖縄県うるま市に、5軸加工や自動化を支援する「Mold Future Space‐OKINAWA(MFS)」を開設した。まずは5軸加工機の販売から加工ノウハウ…

この人に聞く 2014 C&Gシステムズ 塩田 聖一社長

この人に聞く 2014 C&Gシステムズ 塩田 聖一社長

金型は成長産業 「金型は世界的には成長産業」―。そう話すのはCAD/CAMメーカー、C&Gシステムズの塩田聖一社長。コンピューターエンジニアリング(CE)とグラフィックプロダクツ(GP)の合併から4年半、年平均の成長率1…

関連サイト