金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

JULY

26

新聞購読のお申込み

静岡理工科大学 理工学部機械工学科 教授
後藤 昭弘氏 〜鳥瞰蟻瞰〜

大学を上手く活用し、技術開発につなげる場に

強み見つけ、競争力を強化

 金型は集積技術です。機械加工や表面処理、材料、最近ではITなど、色々な技術が上手く組み合わさることによって、はじめて良い金型が出来上がる。大学では、金型メーカーよりも優れた金型を作ることはできませんが、それぞれの技術分野に長けた専門家や、一企業では保有するのが難しい分析機器などの高度な
設備が揃っており、金型メーカーだけではできない技術開発や課題解決を行うことができます。

 金型メーカーにはもっと大学を上手く活用してほしい。そう考えて、2019年2月に「金型技術研究会」を設立しました。機械加工や材料、AIやITなど金型に関連する技術研究に取り組む当大学の教授10人ほどが中心となって立ち上げ、講演会や見学会などの活動を通じて大学と企業や会員企業同士の交流を深めています。

 設立当初の会員数は、金型や部品加工メーカーなど30社ほどでしたが、現在は約60社と倍増しています。新型コロナウイルスの感染拡大によって、当初計画していた通りの活動はできていませんが、それなりに成果も出始めています。

 特に「大学と企業(金型メーカー)」というつながりが出来つつあります。研究開発では、すでにスタートしている案件も含めて5~6件ほどのテーマが動き始めています。また、ちょっとした困りごとの相談も数件ですが、依頼が来ています。例えば、「クラックの原因を調べてほしい」とか、「壊れやすい金型の寿命を伸ばすにはどうしたら良いか」とか。

 「大学に相談するのはハードルが高い」と思う金型メーカーの方も多いかもしれませんが、そんなことはありません。どんどん相談したり、利用してください。企業にとっては課題解決や技術開発につながりますし、大学にとっても新たな研究テーマの発見につながる。お互いにとってメリットは大きいはずです。

 金型メーカーを取り巻く環境は大きく変化しており、今後さらに厳しさが増すことも考えられます。そうした中でも競争力を維持していけるのは、どういう会社か。これまでに多くの金型メーカーと接してきて感じるのは、開発でも営業活動でも貪欲に取り組みを進めている会社は強いということです。“コロナ禍”でも5~6社訪問しましたが、元気な会社は今このタイミングでも何かしら新しいことに挑戦しています。

 他社には真似できない技術だとか、他社よりも早く安く作れる技術だとか。これから生き残るには、何か強みになるものを見つけることが重要です。ただ、それには個社の努力だけでは限界もある。そこで大学です。大学にある設備や人材を使うのも良いし、大学をハブとして金型メーカー同士が結び付き、共通のテーマを見つけて開発に取り組むのでも良い。こうした場を提供することが、大学の役割でもあり、私の望むところでもあります。

金型新聞 2020年12月10日

関連記事

デジタル技術駆使し、金型製作期間半減目指す【ササヤマ challenge!Next50】

ササヤマが今期スタートした新中期経営計画「SAIMS247」。その中核事業となるのが金型製作期間の半減だ。デジタル技術や経験を駆使し金型づくりの大改革が進む。 全ての部品をQRで管理 材料に書かれたシリアルナンバー。入力…

切削加工の領域を拡大 矢野雄介氏 (碌々スマートテクノロジー社長)【この人に聞く】

微細加工機メーカーの碌々スマートテクノロジー(東京都港区、03・3447・3421)は昨年、「碌々産業」から社名を変更した。創立120周年を迎え、これまで標榜してきた「微細加工機のリーディングカンパニーへ」から「微細加工…

【この人に聞く】三菱電機産業メカトロニクス事業部事業部長・清水則之氏「生産性高めるサービスを提供する」

 高精度、高性能な放電加工機で金型産業に貢献してきた三菱電機(東京都千代田区、03-3218-2111)。近年は、機械だけでなく、遠隔地からのメンテナンスサービスやAI技術の活用など金型づくりの高度化に対応するサービスや…

3Dプリンタ活用を支援する研究開発拠点を開設 酒井仁史氏(NTTデータザムテクノロジーズCTO)【この人に聞く】

独EOS社の金属3Dプリンタの日本代理店を務めるNTTデータ ザムテクノロジーズ(XAM)。昨夏に、大阪市内に金属3Dプリンタ15台のほか、多様な検査装置を備えた「デジタルマニファクチャリングセンター(DMC)」を開設し…

この人に聞く
ニチダイ 伊藤 直紀 副社長

 冷間鍛造金型などを手掛けるニチダイは2018年3月期、目標としていた売上高150億円を超え、19年3月期には売上高174億円と過去最高を更新。だが、昨年から続く米中貿易摩擦や新型コロナウィルスの感染拡大に加え、主要顧客…

関連サイト