金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

MAY

29

新聞購読のお申込み

がんばれ!日本の金型産業特集
井上製作所 井上 行雄 社長

金型・成形・組み立て、社内一貫
技術
金型の技術生かし独自製品

金型メーカーが成形まで行うケースは増えているが、井上製作所は成形からプラスチック金型の製造に進出した会社だ。強みは、金型から射出成形、印刷、組立まで全て一貫生産できること。原価管理などに細かい成形を熟知したコスト感覚を武器に、グローバルコストで負けない製品づくりを目指している。また、金型の外販もしており、成形メーカーのノウハウを生かした金型づくりができることも強みだ。
メーンの製品は様々なメーター用カウンター。元々は自動車向けを得意としていたが、水道やガス、タンカーの流量計などのメーターにも着目し、売上を拡大。ここで金型が果たした役割も大きい。成形だけであれば製品点数に応じて金型が多くなりがちだが、同社ではメーターの種類に応じて金型も標準化、金型点数を減らした。さらに、ロングセラーの製品に関しては、金型の長寿命化を図ることでコストダウンにもつなげている。
それでも、グローバル化で国内は減少傾向。そこで営業強化のため、2011年に若手を中心に「新製品開発プロジェクト」を立ち上げ、独自製品の開発に着手。現在は、光が当たると反射し自ら発光する特殊な樹脂を使った、ラジコン用のホイールキャップ「煌(きらめき)」を開発し、商品化に向けて改良を重ねている。「技術をアピールするだけでは、仕事をもらえない時代」と製造部副部長の井上健一郎氏。金型をコア技術の一つに、他には無い商品を開発し、勝ち残りを狙う。

人
多能工化で技術力高める

「金型部門の従業員は多能工化しています」と話す井上社長。それには社長自身の経験がある。1974年、父である先代の社長が、金型も自社で製作できるように、大学卒業後すぐ井上社長を金型メーカーへ修行に出した。そこで金型づくりのノウハウを学び、5年後会社に戻り、金型工場を自ら立ち上げた。井上社長は、「自分が多能工として教えられたので、従業員たちにも同じように指導しています」と話す。一人で金型が作りきれるような人材を育成し、生産性、技術力の向上を図っている。
また、TQC(全社的品質管理)活動に力を入れている。重視しているのは管理手法そのものだけでなく、品質への考え方だ。例えば、備品一つにしても本来とは違う置き方がされていた場合、そうなった原因を一から徹底的に究明させるなど、考え方から品質を意識させている。そして各職場で、サークルを作り、優秀なサークルには、年に1回表彰する。ほかにも、作業工程など改善策を提案し採用されると、インセンティブを与える「改善提案制度」を実施。「いかにやる気を持って仕事をしてもらうか」を第一に考えている。
こうした取り組みは、一貫生産を強みとする井上製作所ならでは。従業員一人一人が全工程に責任を持ち、仕事に取り組むことで、技術力強化に繋げている。総合的な技術力で、国内市場でグローバル企業に負けない製品づくりを目指す。

井上行雄社長002
会社メモ

代表者=代表取締役社長・井上行雄氏
資本金=9000万円
売上高=6億円
創業=1948年
従業員数=60人
本社=埼玉県上尾市領家1195-1
Tel048・781・8811 Fax048・781・8810
HP=http://www.inoue-ss.com
▽設備機械=マシニングセンタ「FNC-86」(牧野フライス製作所)など2台、ワイヤーカット放電加工機「NA1200」(三菱電機)など2台、形彫放電加工機「EA12」(三菱電機)など2台、フライス盤「KSJP-55」(牧野フライス製作所)など4台、射出成型機「SE180DUZ」など26台、そのほか多数。
主な製品=プラスチック金型、各種メーター用カウンターや精密ギアなどプラスチック成形品、そのほか自社商品の開発にも取り組んでいる。

金型新聞 平成26年(2014年)4月16日号

関連記事

「型技術者会議」が6月23、24日に太田区産業プラザで開催

型技術協会は6月23、24日、「型技術者会議2022」を大田区産業プラザPiO(東京都大田区)で開催する。事前申し込み制で、申し込み締め切りは6月6日まで。参加費(講演聴講)は主催・協賛団体会員が1万1000円、一般が2…

植田機械植田修平社長に聞く<br>第8回UMモールドフェアの見どころ

植田機械植田修平社長に聞く
第8回UMモールドフェアの見どころ

未来拓く技術を提案  JIMTOF2016で注目を集めた金型や精密部品に関連する最新の加工技術が一堂に集まるUMモールドフェア。今回は新型の5軸加工機や金属3Dプリンタをはじめ、IoT(モノのインターネット)の活用技術が…

ソディック 大型型彫り放電加工機を発売

加工時間を45%短縮 ソディックはこのほど、加工時間を45%短縮し、消費電力を30%削減させた大型の型彫り放電加工機「AL100G」を発売した。効率化や脱炭素ニーズに対応する。 新開発の「SP電源」や、荒加工速度向上する…

自動車金型、2024年秋に需要回復か【特集:自動車金型の未来】

自動車の金型が試練の時を迎えている。半導体不足に端を発する新車開発の相次ぐ延期で受注が減少している。一方、電気自動車(EV)シフトが技術と産業構造に変革を迫る。生き残るカギは変化のうねりを見極め培ったノウハウや強みを生か…

3Dプリンティング&AM技術の総合展「TCTJapan2025」 いよいよ開幕

1月29~31日、東京ビッグサイトで開催 最新の3Dプリンティングやアディティブマニファクチャリング(AM)関連技術が一堂に会する「TCT Japan 2025」が1月29~31日の3日間、東京ビッグサイト(東京都江東区…

トピックス

関連サイト