金属AMによる造形で重要な要素となるのが金属粉末。近年では、造形しやすいマルエージング鋼だけでなく、ステンレス鋼や、ダイカスト金型での応用が期待されるSKD61相当材など、多様な粉末材料が登場している。こうした粉末の進化…
一瞬に鏡面、ねじ転造成形
髙橋金属(滋賀県長浜市)
▲左から型内ねじ転造加工技術の(表)と(裏)
日常の仕事を目一杯こなしながら次の成長の種である“高度コア技術”の開発をきめ細かに取り組むことで好業績をあげている企業が滋賀県長浜市にある。高度コア技術とは、「プレス加工でよくぞここまでも」と、手品でも見るような難易度の高い3次元形状の成形品を一瞬にしてつくり出す技術。年間数十点を開発のターゲットにしており、これまでに幾つも開発した。成形品には、既にお客様に納めているものもあれば、出番を待つものもある。また、半年掛けて設計し、残り数カ月で成形部品までこぎつけた難物のものもあれば熱中のあまり徹夜の連続の中でものにした成形品もある。「このエネルギーこそわが社の技術開発の源泉。種子はいずれ花を咲かせる」とは、髙橋金属の髙橋康之社長。その声が技術者の背中を押している。
同社の事業は3つ。板金・パイプ(A棟)、プレス(B棟)、完成品(C棟)事業で、工場単位に分けて展開し、技術は横断的に活用している。
直近の年間売上高は、単体で80億円。うちヤンマーグループが最も大きく、エンジン・建機・農機・コージェネレーション、次いで太陽光発電パネル組立、自社ブランド「TIWS」の環境商品の設計・販売、ステアリング、ガスケット、車体など自動車関連部品、介護・健康機器部品など各成長産業に広く跨る全天候型の経営を計っている。
同社の特長は、設計から調達・加工・組立・輸送・メンテナンスまで「ノンストップサービス」で貢献するところにある。金属塑性加工の総合メーカーと言われる所以はそこにある。
プレス事業は、80~500tまでの幅広い生産設備を持ち、数百個から数十万個までの多品種少量部品の複合加工、高度コア技術による代替加工を強みとしている。
例えば、プレス事業の高度コア技術開発。現在、板鍛造プレス、型内ねじ転造プレス、鏡面プレス加工、ファイバーレーザ溶接加工などに取り組んでおり、
技術営業部藤谷憲治部長が取り出した玉手箱から難易度の高い成形部品の数々が飛び出し、思わず腕を組み唸った。
▲精密反射鏡アルミ一体品、髙橋社長
同社を訪問するきっかけとなった鏡面プレス加工技術(リフレクター成形)は、通常、樹脂・アルミ材を樹脂成型、ダイカスト成形し、蒸着・メッキの数工程を経て完成品にする技術だが、同社はこれをプレス加工に置き換えた。
80tプレスに取り付けた金型を上下運動させると、内面が鏡面成形された部品が一瞬にして出てくる。しかも面粗度Ra0.02以下、全反射率85%以上という優れもの。この技術を同社は今、円筒面鏡面加工や小型鏡面、3次元形状&鏡面一体成形加工、平面部鏡面加工など応用展開を図っている。
また、板鍛造プレスは、切削加工をプレスと鍛造加工技術の組合せたネットシェープ技術に置き換える工法を展開している。切削レス、高精度、一貫生産を一気に可能にしている。
焼結合金と内径部の切削例では、トランスファー加工に置換え、被加工材SPHC‐P(t=2.6㎜)を板厚制御0.9~2.8㎜、面粗さRa0.2以下、真円度20mμm、異形状対称度10μmで仕上げることに成功した。
また、鋳物+切削+位置決めキーを200tサーボプレス加工に置き換えたワークでは、増肉成形加工=増肉比1.8倍、対抗穴部=同軸度30μm(6穴同時抜き加工)、内径部キー凸プレス成形を達成した。切削被加工材はSPHC‐P(t=3.2㎜)。
もう一例。外径ねじ転造加工技術のケースでは、今も主流は材料切断、ボンデ処理、鍛造加工、ショットを経てねじ転造しているが、同社はプレスの1ストロークで完結生産することを考えた。
単純な形状ほど加工が難しい例えのとおり、同社は400tナックルリンクプレスで型内ねじ転造加工をものにした。加工部の特長は、ねじ成形部=M34×1.5‐6g、ねじ成形時間=1.0秒。加工方法を何度も説明をしてもらったが、今も判らないままでいる。「種を明かせば簡単なこと。されど金型の構造はかなり難しい」(藤谷部長)。 同社は、ニッチで難しい、ないしはそのアイデアが浮かばない加工領域を常に形にする挑戦をしている。ユーザーが、そのアイデアから従来工法をプレス工法に置き換えるヒントを提案している。「今はその工法はないが、それができることでものづくりが一変する、と言うレベルの技術に限定し、完成すれば社内で共有する」とは、髙橋社長の開発定義。藤谷部長は「この高度コア技術から誕生したものは、仕事の中に落とし込む」のが高橋金属流と言う。
そして、「このコア技術は、金型なくして成り立たない。お客様が求める成形品は、わが社の金型が保証している金型を内製している」とした。
髙橋金属
住 所:滋賀県長浜市細江町864‐4
設 立:1958年
資本金:9,832億円
社 長:髙橋康之氏
従業員:単体240人(グループ550人)
年 商:単体80億円(グループ105億円)
売上構成:産業機械45%、環境18%、自動車7%、自社商品10%、他20%
製造拠点:日本、中国蘇州、タイバンコク
事業内容:金属プレス加工、板金加工、パイプ加工、プレス金型製作、他品種小ロット完成品の組み立て、環境関連商品の自社開発
金型新聞 平成27年(2015年)2月10日号
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