2019年12月7日(土)

金型メーカー座談会
経営者5人が語る、どうなる2015年 最終回

金型産業 発展へ

日本金型工業会 5つの施策


  出席者  

迫田社長2_R

エムエス製作所
社長 迫田 幸博氏

小出社長2_R

小出製作所
社長 小出 悟氏

牧野会長1_R

長津製作所
会長 牧野 俊清氏

加藤相談役2_R

日進精機
相談役 加藤 忠郎氏

堀口社長2_R

野田金型
社長 堀口 展男氏


無題_R

 2月号では海外展開への考え方、部品の共通化などユーザーの変化について議論した。最終回となる本号では、昨年発表した「金型産業ビジョン」を中心に、金型工業会の取り組みなどについて報告してもらった。技能検定やブランドの重要性、海外展開のサポート策、企業資格など示唆に富む指摘が数多く出た。

…前号からの続き

-さて、回復傾向にあるとはいえ、リーマンショック後に金型の生産額が大幅に減っています。そこから徐々に回復していますが、ピーク時にはまだ及びません。どうご覧になりますか。

加藤 金型の出荷額を「工業統計」で1967年から、見てみると、金型は2兆円産業と言われていた91年がピークで1・96兆円でした。その後、バブル崩壊で急落して1・39兆円まで下がりました。それ以降また拡大して、98年に1・87兆円、06年には1・76兆円と2つのピークを迎えましたものの、その後は徐々に中国や韓国、東南アジアなどの金型の品質が向上し、減少傾向は変わらず、さらにリーマンショック後、ますます減ってきたという流れになっています。

技術 検定、技能五輪に協力

-型種別に見るとどうですか。

加藤 プレス型は合計にほぼ見合った形で推移していますが、プラ型は12年のデータでは大幅に下がっています。91年のピークの時を100%としたときに12年はプレス型が60・9%、プラ型が49・9%です。この差の理由を考えると、プラ型は海外への技術移転が比較的しやすいのが理由ではないかと考えます。プレス型は、順送型以外に自動車のボディの大きな金型があるので、順送型だけをとれば、もっと高い数字なのではないかという気がします。また、他の金型をみると、鋳造・ダイカストが一番高い。ピークからくらべて69.4%です。技術移転が難しいのでしょうか。

小出 ダイカストの場合、熱処理技術が難しい。日本の熱処理技術は世界でも1番ですから。

迫田 やはり技術移転が難しいのは、ダイカストと鍛造ですね。全てが揃わないとできない金型ですから。いくら金型メーカーが良い機械を持っても、周辺設備や電気や水も含めて、きちんとしたものが揃わないと良い金型が出来ませんね。

-プラ型の減少を牧野会長はどうみますか。

牧野 プラ型は、形が簡単に取れるせいか、キャッチアップされやすい性格があります。ただ、12年に落ち込んだのは、プラ型の場合は電機産業に対する比重がプレスに比べるとはるかに多いからだと思います。日本の家電メーカーは厳しい時代でしたし、大型テレビなどが国内ではほとんど生産されなくなってしまいましたよね。その影響が出ているのではないでしょうか。

総務財務 資格制度で信頼高める

-さて、「新金型産業ビジョン」についてお話し頂きたいと思います。金型工業会では5つの委員会(技術・国際・総務財務・経営労務・広報)を中心にビジョンの実現につなげるべく、活発に活動をしています。各委員会の取り組みや将来像などを、まずは技術委員会から教えてください。

牧野 金型づくりの根幹は技術開発ですから、積極的に活動しています。技術委員会は、本部と各支部に分かれてセミナーや技術情報の提供を行っています。支部で行うのは、地域に応じた技術情報の提供やセミナーなどで、本部のほうはISOとJIS規格の整合性など大きなテーマのものが多いですね。そして、支部活動の中核になるのが金型関連技術発表会です。各支部では、賛助会員の加工技術発表のほか、会員企業が自社の取り組みなどを紹介しています。例えば東部支部で昨年、注目度の高い3Dプリンタを取り上げました。パネルディスカッション形式で、メーカー側の一方通行でなく、パネラーや聴衆など双方向で議論が深められたと思います。

-ホームページからの技術情報発信も行うとお聞きしました。

牧野 様々な技術情報を発信できる仕組みは作りましたので、近々コンテンツを充実させていきます。今しばらくお待ちください。

-技能検定などにも協力しているのですか。

牧野 そうですね。技能検定の問題作成や採点などを行う検定員の推薦や派遣などで協力しています。項目は金型加工はもとより、仕上げやフライスなど多岐に亘ります。将来的には、技能検定だけでなく、技能オリンピックにも積極的に協力や参加していきたいですね。

迫田 当社は技能検定会場になっていますし、技能検定の受験には力を入れています。というのも、金型加工の技能者の格付けと言うか、証明書みたいなものが必要だと思うからです。
 金型の評価って、A社はいい、B社は良くないと、なんとなく定性的に判断されることが多いですよね。もちろん、それも分かるのですが、定性的なものだけではないと思うんです。国家資格の保有者が何人もいる会社と、ゼロの会社は同じではないはずで、客観的な評価や基準もあるべきです。一級の資格者がいるから良い金型かというのは別の話でもあるのですが、人を育てる機能と言う意味で客観的な基準はあった方がいいですね。

加藤 私もプレス金型の技能検定の問題作成に関係していますが、技能検定には課題もあると思います。というのも、多くの企業では、研削は研削、旋盤は旋盤と、分業化が進んでいます。ところが、金型の技能検定は全ての項目の勉強が必要です。実情は分業化しているのに、総合的な金型技術を要求することが今の流れに合っているのかという疑問視する意見があります。しかし、一方で、総合的に学ぶ良い機会だという意見もあり、委員会は今のところ、後者の見解で来ています。

経営労務 時流に合わせ動向調査

牧野 確かに技能検定は放電やマシニングなど機械ごとに分かれていますが、個別で受けている人が多いですね。

迫田 少し例えが悪いのですが、技能検定の推奨について社員に次のように説明しています。君たちは凄い運転技術を持った暴走族みたいなものだ。けれど、無免許だから捕まる。A級ライセンスという技能検定を取れば、もっと違う世界で勝負できるぞと言っています。実際に海外に行くとそのライセンスは活きますし、検定所有者は評価されます。ブランドと同じですね。

-金型の日本ブランド化は必要ですね。

堀口 ジャパンブランドのロゴマークをドバイの展示会で全面的に出したんです。すると「日本企業だ」と認識して人が来てくれるし、非常に評価が高い。それには中東の歴史的背景も関係しているとは思うのですが、彼らは日本以外の国々の人々には、嫌な思いをさせられた経験が多いからなんです。日本人はもっと来るべきだとかなり言われましたね。

国際 進出したい会社に情報

-国際委員でもある加藤相談役に国際委員会の活動についてお聞きします。

加藤 金型工業会のホームページには英文もあり、海外からの受注案件に対応するシステムを構築しています。とはいえ、言葉や商習慣などを一企業では対応しづらいことも多いので、海外展開のサポートをしてもらうために事業革新パートナーズさんに国際委員として参加して頂いています。

-その仕組みを詳しく教えてください。

加藤 サイトを通じ、海外のお客様から問い合わせが来ます。売り込みなどの営業メールもありますので、事業革新パートナーズさんがある程度フィルタリングし、必要な情報のみを登録した会員企業に流します。今は月10件以上の問い合わせメールが来ています。そこで、言葉の問題や商習慣などで不安な場合に事業革新パートナーズさんにサポートをお願いしているわけです。

-海外地区会も発足させましたよね。

加藤 タイ、上海、広州、インドネシア、ベトナム、フィリピンの6地区で、既に進出している会員企業や賛助会員が参加しています。進出企業同士での情報交換も意義が深いのですが、これから進出を考えている企業が、地区会を通じて情報収集できることなども考えています。とはいえ、地区会はまだ緒に就いたばかりで、もっと発展させていきたいと思います。

海外視察も毎年実施されており、昨年はメキシコでした。いかがだったでしょうか。

迫田 私も参加し、池上金型工業さんのメキシコ工場でメンテナンスをさせて頂くことになりましたし、成果はありましたね。元大統領なども積極的だったようで非常に歓待して頂きました。

牧野 日系自動車メーカーの進出が増える中で、メキシコ側も金型の重要性を認識していたのだと思います。

-総務財務委員長でもある小出社長に同委員会の活動についてお尋ねします。

小出 これまで戦力の集中と無駄を省くことを目的とした、工業会の運営の一本化というのが大きな役割でしたが、それにめどが立ったところです。最近では会員増強の一環として、九州地区会をスタートさせました。優良社員表彰は定例事業として継続しています。また、迫田さんが客観的な評価基準が必要と指摘されましたが、日本の金型づくりの認証制度の検討を始めたところです。

-具体的にどういうものでしょう。

小出 日本金型工業会認定の技術資格や企業資格のようなものが作れないか検討に入ったところです。個人的な考えですが、AクラスとかBクラスという企業単位の評価ができればいいと思います。また、個人でも技能検定より高度化したものになればいいと考えています。例えば、金型をトータルで把握している資格者が工場長にいるということで、企業の信用度のアップにつなげていくことなどが考えられます。そのほか、正会員向け、賛助会員向け、会員外向けに、それぞれメールマガジンを配信していますが、中身をさらに充実させていきたいですね。

-メルマガの内容はどのようなものですか。

小出 法制度が変わったとか、補助金の申請情報だとか、様々ですが、間違いなく会員企業には役にたつと思います。

-経営労務委員会の取り組みは。

迫田 短期的には三か月ごとの金型景況調査と、長期的には年一回の金型業界動向調査を行い、その結果を分析して会員企業にお渡しています。また、個別企業で把握しづらい賃金体系や労働時間も調査報告しています。私もこれで全国の金型業界を知ることが多々あります。今は日本国内だけですが、グローバルな状況も報告できるようにしていきたいですね。

-金型産業ビジョンも経営労務委員会の担当ですよね。

迫田 今申し上げた取り組みよりも長いスパンの報告が金型産業ビジョンです。業界としての一つの考え方を先生方や関係者にまとめて頂き、みなさんの参考になればと思っています。今回のビジョンを読んだとき、私が考えていたことが大きく間違っていないという安心感にもつながりましたね。とはいえ、経営は実行ですから、経営を実行させるための参考になればいいと思います。

広報 ジャパンブランドを世界に

-景況や動向調査などは会員限定の情報提供ですか。

迫田 そうです。会員になると、そういう情報が定期的に得られるのもメリットだと思います。

-法律相談もしているのですね。

迫田 金型メーカーは中小規模が多く、経営的な問題が発生した際に相談するところも分からないことが多いと思います。そうした際の窓口機能を果たせればと思います。

堀口 労務相談はこれから重要になってくると思いますね。戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン)を申し込む際に指摘を受けたのですが、社内規定は3年経つと古いらしいのです。しかも法制度は年々変化します。例えば仕方ない事情で社員を解雇した際、これまで問題にならなくても今は問題視されることもあるそうです。だから今後法律相談は重要になると思います。西部支部でもそうした勉強会を開こうと考えています。

-最後にジャパンブランドをアピールしていくうえで、重要な広報委員会の活動について委員長の堀口さんにお聞きします。

堀口 まずホームページで、会員企業の紹介や絞り込み検索などを行っています。それからインターモールドと金型展の開催です。今年の金型展は70社を超える金型メーカーが出展するほど盛況になりそうです。

-映像での業界PRにも…。

堀口 将来の金型技術者育成を目的とした金型初心者向けのDVD「たい焼き同好会の金型探し」を作成し、評価を頂きました。今年は海外向けに、日本の金型品質をアピールするCM映像を作成しているところで、遅くとも年度内に紹介できる予定で、かなり良いものになりそうです。それから金型ユーザー向けの展示会にも出展しています。昨年は幕張で開かれた国際プラスチックフェアにも日本金型工業会として出展しました。日本国際工作機械見本市への出展も検討しています。
そのほか会報も一つです。年4回機関誌「金型」を発刊しており、「次号はまだか」という声も頂けるほどです。また、若手の技術者育成を目的とした「学生金型グランプリ」も継続しています。最近では、展示会で日本の金型をアピールするために、ジャパンブランドのロゴを印刷した、ピンバッジも作成します。会員には無料で配布する予定です。
 海外の展示会ではパンフレットだけでは興味を持って頂けないので、製品サンプルやおまけみたいなものが必要です。今後日本の金型を海外でPRすることは重要になりますからね。

-委員会の活動をお聞きしてきました。産業ビジョンにあります「営業力」、「他分野への展開」などは各企業の努力になると思うのですが、「海外」、「技術開発」はかなり充実した活動をされていますね。「人材育成」についてもDVDなど一企業ではできない長期的な取り組みも実施しています。「連携」についてはどうですか。

牧野 金型工業会に入会して頂いて同業者と切磋琢磨し、忌憚のない意見交換をできることが全てだと思います。迫田さんも今回、工業会活動の中で池上金型の社長と出会ってメキシコに進出されましたし、そういうことに尽きると思います。

-最後に牧野会長にひとことお願いします。

牧野 グローバル化が進んでいるなかで、従来の枠組みや、やり方では経営は難しくなっています。新しい枠組みの中で、変革をしていかなければならない。そんな中で、新金型産業ビジョンにおいて6つのキーワードを示しました。自らの戦略を構築していく際の参考になればいいと思っています。

本日は長い間ありがとうございました。

金型新聞 平成27年(2015年)3月10日号

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