自動車の電動化や軽量化ニーズの高まり、短納期化、熟練作業者の減少など、プレス加工を取り巻く環境は大きく変化している。プレス加工メーカーへの要求も高度化しており、これまで以上に技術革新を進め、変化するニーズに対応することが…
金型メーカー座談会
経営者5人が語る、どうなる2015年 第二部
出席者
![迫田社長1_R](https://kanagata-shimbun.com/wp/wp-content/uploads/2015/02/迫田社長1_R-252x300.jpg)
エムエス製作所
社長 迫田 幸博氏
![小出社長1_R](https://kanagata-shimbun.com/wp/wp-content/uploads/2015/02/小出社長1_R-267x300.jpg)
小出製作所
社長 小出 悟氏
![牧野会長2_R](https://kanagata-shimbun.com/wp/wp-content/uploads/2015/02/牧野会長2_R-268x300.jpg)
長津製作所
会長 牧野 俊清氏
![加藤相談役1_R](https://kanagata-shimbun.com/wp/wp-content/uploads/2015/02/加藤相談役1_R-267x300.jpg)
日進精機
相談役 加藤 忠郎氏
![堀口社長1_R](https://kanagata-shimbun.com/wp/wp-content/uploads/2015/02/堀口社長1_R-239x300.jpg)
野田金型
社長 堀口 展男氏
1月号では各社の取り組みや現状などを報告してもらった。本号では、ユーザー業界の変化、海外展開のやり方のほか、それらを支援する金型工業会の取り組みなどについて議論が深まった。
―海外に複数拠点を持たれているのも、需要があるからですね。ただ、各国への進出の仕方が異なります。
迫田 中国とインドネシアは単独で進出しましたが、タイは金型工業会の方と、メキシコも金型工業会員の池上金型工業さんと組んで進出しています。中国とインドネシアは金型製作、タイとメキシコはメンテナンスを手掛けています。
―タイとメキシコはメンテナンスだけですか。
迫田 両国とも人口が少なく、金型のインフラが整っておらず、金型を生産するより、メンテナンスをしてお客さんをサポートするという戦い方にしていこうと考えました。人が多ければ将来的に車を買う人も多いですから、市場として拡大が期待できるので、中国とインドネシアは自前で工場を持ちました。また、金型専業だと、海外で仕事をキープするのは難しいですから、2社3社と集まって協力関係を結んで受注の安定化につなげています。
―ほかに海外に出る目的はありますか。
迫田 今の自動車業界は世界同時立ち上げというのが主流です。国内は国内、海外は海外という話ではなく、同じ型を複数拠点分全て一括での受注になります。仕事が取れればいいですけど、取れなければゼロという戦いになっていますので、海外に拠点を持っていなければその土俵にすら立てない。まずは土俵に立つために、海外に拠点を持っています。
―一括受注とは。
迫田 ある部品に関しては全ての生産拠点分ということです。安価に作れ、品質の均等化を図るには一つの会社に任せるのが一番良いとユーザーも判断したようです。一社に渡して展開した方がユーザーも楽ですよね。ユーザーの拠点の近くに我々の拠点がないと仕事がもらえなくなりますので、そういう意味でも海外に拠点を持つことは重要です。部品メーカーもそういう流れになっていると思います。品質の安定があれば、量を増やしてコストを下げるという基本的な考えは変わらないので、拠点を増やして仕事を追いかけているというのが現状です。
―課題はありますか。
迫田 生産能力です。いかに効率良く生産するか、いかに金型を短期間で作るかという戦い方がこれからの課題です。
―取り組んでいることは。
迫田 生産方式、設計、機械も全て日本と同じやり方、仕組みで海外も展開することです。海外の従業員も日本で研修しているので、思想も共通にしています。そうすると意思の疎通が図れ、よりスムーズに生産できます。
―生産方法について具体的に教えて下さい。
迫田 簡単に言うと、生産工程の見える化です。さすがに一個流しは難しいですが、3品流しという方式を取っています。どこの工程が遅れているのか、どこに人が足りないかなどが見えるようになり、生産状況がよく分かります。従来のように、従業員が各々で作業をしていると、売上が伸びていなくても忙しいから良いと勘違いしていまいます。見える化をすることによって、経営者だけでなく作業者も全体の状況を把握できるようになり、生産性が向上しました。さらに進めて、海外にも展開しようとしています。
―部品の共通化というと、エアバック問題がありましたが影響はありますか。
迫田 ありますね。今まで以上に安心できる金型が求められるようになると思います。とくに保安部品や機能部品というのは、日本の自動車メーカーはシビアになっていくと思います。そうした時にきちんとした金型ができるというのはやはり必要です。金型は安ければ良いみたいな安易な考え方はなくなると思います。メキシコに行った時に、車体メーカーのトップの方も海外の金型のレベルを熟知していて、やっぱり日本の金型は良い技術を持っているというのは認識されています。ただ、コストメリットを考えると、部品共通化の流れは変わらないと思いますね。いかに品質を安定させて供給していくかが課題で、それを解決した会社がより大きくなり、出来ない会社は生産量が減り、儲からなくなって淘汰されていくと思います。
金型新聞 平成27年(2015年)2月10日号
関連記事
目次金型メーカーアンケート型取引に関する政府の動向金型メーカーの実例紹介型取引適正化推進協議会座長 細田孝一氏に聞く記者の目 取引環境改善も道半ば 金型メーカーアンケート 政府が2016年の世耕プランで、取引環境の改善を…
自分の強み生かす道を 本田技研工業 完成車新機種推進部 主任技師 田岡 秀樹氏に聞く 高級車か、低価格車か、2極化も 金型なくして新車開発ならず 自動運転、ライドシェア、電気自動車(EV)の進化―。自動車業界では急激な変…
自動車の電動化が金型に及ぼす影響は大きい。エンジンなどの減少が懸念される一方、軽量化ニーズでアルミの採用が期待されるなどダイカスト金型は変化を迫られている。では電動化でダイカストはどう変わっていくのか。昨秋のダイカスト展…
今なおリーマン・ショック前の7割の生産額―。プラスチック金型は、リーマン前の水準に戻った鍛造型や8割のプレス金型などと比べると回復していない。技術力、そして生産力でも圧倒的に世界をリードした「日本のお家芸」の復活のカギ…