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JULY

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金型メーカー座談会
経営者5人が語る、どうなる2015年

活路を創造、混沌に挑む

 日本の金型業界にも少しずつ明るさが戻ってきた。とはいえ、受注水準はいまだリーマンショック前の8割程度だ。そんななか、日本金型工業会は「新金型産業ビジョン」を策定した。そこでは、金型業界の向かうべき道として、海外展開、営業力、他分野へ進出をキーワードにそれを支える要素として人材育成、技術開発、連携の強化などを掲げた。本年の新春金型座談会では、日本金型工業会の会長や支部長らにお集まり頂き、景況感や、ビジョンの方向性、工業会の取り組みなどについて語ってもらった。



  出席者  

エムエス製作所 迫田幸博社長
 愛知県清須市に本社を持つゴム成形金型メーカー。メーンは自動車用シール部品の金型。海外に拠点を複数持ち、中国とインドネシアでは金型を製造、タイとメキシコは金型のメンテナンスを手掛ける。従業員は40人。日本金型工業会経営労務委員長。

小出製作所 小出悟社長
 ダイカスト用金型を製造する専業メーカー。自動車のエンジンやミッション関係部品向けが主体。本社は静岡県磐田市。海外は韓国、中国、インドに拠点を持ち、バングラデシュにも進出予定。従業員は89人。日本金型工業会副会長、中部支部長兼総務財務委員長。

長津製作所 牧野俊清会長
 カメラ関係の光学部品を主力に自動車、医療関連などのプラ型を手掛ける。国内は川崎と新潟に工場を持つ。中国には深圳と無錫に成形工場を持ち、一部金型も製造する。従業員は国内110人、中国750人。日本金型工業会会長。

日進精機 加藤忠郎相談役
 プレス金型とプレス成形を主体に、自動車他各種リフレクターの金型も手掛ける。東京大田区が本社で、長野県に主力工場を持つ。海外工場はプレス加工主体で、タイ、フィリピン、中国の無錫と深圳。タイとフィリピンでは金型も内製。従業員は国内100人、海外600人。日本金型工業会副会長、東部支部長。

野田金型 堀口展男社長
 大阪府高石市で自動車向け金型メーカーとして創業したが、近年は一体品の削り出しなど部品加工の分野にシフト。角材からエルボを削り出し製作する「エルボ加工」で数々の賞を受賞している。従業員は11人。日本金型工業会副会長、西部支部長兼広報委員長。


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▲長津製作所 牧野氏 生産性高め、他分野も

-昨年の受注状況や今年の見通し、今後の取組みなどをお聞きしたいと思います。はじめに牧野会長お願いします。

牧野 昔はカメラと携帯電話の2本柱でやっていましたが、携帯電話は非常に少なくなりました。カメラもここ1~2年で減少しているので、自動車や医療など他の業界から仕事を頂いています。そうした影響から昨年は前半の方は悪かったのですが、後半から持ち直してきています。現在の工場稼働率はほぼ100%です。

-忙しいですね。業界全体としてはいかがだったでしょうか。

牧野 ひとことで言えば、マダラ模様ですよね。その時々で仕事が増えた、減ったという話をよく聞きました。ただ、大型のプレス金型メーカーは忙しいようですね。

-今年の見通しはいかがでしょうか。

牧野 希望的観測も込みですが、円安ですので、最終ユーザーが国内で発注を増やすなど金型に対するポジティブな方向性が明確になって、良い年になってほしいと思います。ただ、今の段階では長いスパンでの予約などがないので、残念ながら先が見えないのが実状です。

-そんな状況で取り組んでいることは。

牧野 仕事を合理化して、生産量を増やせるように社員を中心にしながら活動をしています。また、従来の仕事が減少傾向にあるので、他業種、光学機器以外の仕事も取り組んでいます。また、超精密分野の仕事が増えればいいなと考えています。

-超精密とはどういう分野のものですか。

牧野 1ミクロンからナノレベルの精度を要求される光学関係の仕事ですね。たとえば車載カメラなど写真以外の分野ですね。

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▲日進精機 加藤氏 海外展開で国内受注のケースも

-加藤相談役お願いします。

加藤 お客様が海外にシフトしており、国内は金型とプレス加工ともに前年と比べて、ほぼ横ばいでした。海外の売上が大幅に増えており、国内の3倍にもなっています。仕事はモータや回転体の仕事が多かったのですが、自動車関係が大分増えてきました。 

-海外工場では日本人が金型を製作しているのですか。

加藤 すべて現地の人間で作っています。勿論日本人が指導していますが。簡単な金型は現地で設計しますが、少し難しい金型になると日本から図面を供給して製作しています。これからは、海外工場の品質と生産性の向上が必要ですね。プレス機械などは、日本では、一人が複数台担当するのが当たり前ですけれど、海外は一台に一人ついています。それを複数台持てるようになれば、生産性が大分上がります。また、フィリピン工場は金型技術力のレベルアップを特に図っています。

-海外に進出されたのは、ユーザーの要望ですか。

加藤 違います。東南アジアは将来、京浜工業地帯のようになるのではないかと読み、仕事がはっきりしていない中、95年にタイに進出しました。逆に、紐付きではないということで、日系の企業を中心に様々なお客様とお付き合いができました。国内外に工場があるのが強みで、海外に工場があるということで、国内の受注に繋がるケースもありますね。

-今年の見通しは。

加藤 今年も同じような状況が続くのではないでしょうか。ますます海外の比率が増えると思います。

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▲野田金型 堀口氏 技術生かし他分野の道探す

-堀口社長お願いします。

堀口 昨年はまずまずの水準でした。現在、金型の売上は全体の3割程度で、機械加工や精密部品加工の方にシフトしています。独自のブランドを作って、海外に売り込もうとしているので、昨年は海外の展示会に積極的に出展して、日本の金型加工の技術レベルが高いことをアピールしました。経済産業省から戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン)の助成金を頂いたので、新しい取り組みをして、もっと海外に展開できれば忙しくなると思います。

-海外の展示会はいかがでしたか。

堀口 昨年、上海、シンガポール、フランス、ドバイと4回出展しました。ドバイは日本車だらけでした。現地の人に聞くと、日本車は長持ちして素晴らしいと言っていましたし、日本の金型のニーズも高いと感じました。というのも、海外の展示会で現地の人々が口を揃えて「日本の金型加工技術はこんなに凄いのに、なぜ海外に出ないんだ」というのです。アベノミクスによる円安の効果で、海外では高く売れるので、中小企業であっても海外に売るべきです。たとえば、以前に80万円で売っていたものを国内であればさらに値を下げないと売れないのに対して、海外だったら120万円で売れるわけですよね。5割も高く売れる。

-でも円高になったら厳しいですよね。

堀口 もちろんそうなのですが、円高になっても国内の市場は変わらないですよね。むしろ人口が減っていくのだから、金型も増えていくことはない。海外でどういうふうにするのかを考えたほうが良いと思います。それから、金型専業メーカーはあくまで受注産業ですから、最終ユーザーに左右されるというのは永久的に変わらない。そこで、自分たちの金型加工技術をどのように展開していくかが必要になりつつあると思います。

-いつごろから部品加工のウェイトが高まりましたか。

堀田 3年前から部品加工が金型を上回っています。現在売上の6割以上が部品加工です。

-金型技術が活きていますか。

堀田 間違いなく活きています。金型で鍛えられました。我々は金型加工で培った技術を活かして、難削材を削り出して製品を製作するなど新しいことに取り組んでいます。その新製品で特許や商標が取れればブランドとして守られます。最終的に「この製品を使いなさい」といった設計段階から入り込めるようになるのを狙っています。

-野田金型ブランドを作るのですね。

堀口 そうですね。またそれは日本の金型業界でも言えることだと思います。日本の金型はブランドとしては定着していません。ジャパンブランドとして展開すれば海外に日本の金型がアピールできると思います。工業会としてももっとアピールして、金型だけでなく、部品も含めた受注ができるのではないかと考えています。

-堀口社長は産業ビジョンにもある「他分野への進出」を具現化されていますね。なぜ実現できたのでしょうか。

堀口 今後どう生きていくかを考えたからでしょうか。明確な数字はないですが、金型業界の8割ぐらいが自動車関連だと思います。ただ、日本の産業自体の8割が自動車関係かといったら違いますよね。就業人口だけ見れば6300万人のうち、550万人で10%未満です。だとすると、医療や発電、航空機など他の業界にも仕事があるのに探してないだけではないかという発想を持つべきだと思うのです。

-発想を持っても動くことが難しい気もします。

堀口 例えば医療の業界で、アメリカのヒューストンにメディカルセンターという企業があり、売上高が約2兆円で、患者数は約550万人と世界中から来ます。そこで一番のニーズはなにか。金型です。今使っている金型の9割が中国製、1割が日本製らしいです。でも、売上は逆です。日本の金型が9割だそうです。医療だから自動車以上に命の問題があるから、重要な部分は日本に任せなさいということになる。日本の金型メーカーもそういうところに進出の可能性があると思います。ユーザーが海外へ出ているので、自らも出ることも一つでしょう。しかし、中小企業はなかなかそれができないので、他を探さなければなりません。逆に10人くらいの会社なら、他の分野に移ることはそう難しくはないはずです。

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▲小出製作所 小出氏 「競争力とは」を突き詰める

-小出社長お願いします。

小出 昨年はリーマンショック前のピーク時の売上に比べ、8割まで回復しました。ただ、安値で受注し過ぎてしまったのが大きな反省です。というのも、リーマン前の景気が良い時は8~9カ月先まで仕事が埋まっていましたが、今はそういうことはまずありません。一昨年から3~4カ月先までストックを持てるように動いてきて、もっと売上を伸ばそうということで、安値で受けてしまった。フタを開けてみれば赤字受注です。そこで、営業には「こんな安い値段ではできません」と言って、お客様を回らせました。ここにきてようやく持ち直すことができたという状況です。

-ある意味で値上げになりますが、受注は減りませんでしたか。

小出 あるお客さんでは半年仕事がなくなりました。ただ、昨秋には2900万円で受けていたものが、3800万円で戻ってきました。でもまだ安いです。もう少し上げていきたいと考えていますが、ここにきてそれも容認されるような雰囲気もありますね。

-価格是正に向かうということですか。

小出 お客さんにも安くできないものが見えてきたのではないでしょうか。だから日本の金型産業が弱気になる必要はないと思います。ただ、金型産業ビジョンでも営業力を一つのテーマに挙げられていますが、営業力とはなんぞやということを考えないといけないですね。

-小出社長の営業力とは。

小出 私たちの場合は海外進出です。今、日本のお客さんの選択肢を減らしてでも、中国とインドのお客様に集中しています。日本の顧客だけだとどうしても日本のお客様の顔色を見て弱気になってしまいますよね。そうなったとたんに自分たちの思ったような営業や運営はできません。だから、日本の顧客だけではなくもう一つ別の柱として顧客層を持てるように、中国やインドに進出しています。

-今年の見通しは。

小出 今年も今の段階ではかなり仕事はあるという状況です。正直に申し上げますと、今の段階で12月まで受注があります。私どものお客様が中国での仕事を大量に取ってこられたので、先まで伸びたという状態です。結局、自分のお客様ががんばっていると自社も潤います。ただ、選んでもらうには、やはり自社の競争力を強化しなければどうにもならいというのは事実です。「競争力とはなんぞや」を突き詰めて考えていくべきです。いずれにせよ、複合的な優位度を出さないと、ここから先は厳しいような感じがします。

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▲エムエス製作所 迫田氏 魚のいるところで仕事をとる

-では、迫田社長お願いします。

迫田 自動車産業自体、国内は減っていますので、国内の仕事は低減しています。自動車メーカーもエンジン関係や電気系統関係の開発などに投資していますが、我々の金型が使われる外装部品関係は少ないです。また共通部品化が進み、新しい金型が必要なくなっているので低迷しています。逆に海外は増えていますが、今まで日本で作っていたものが海外に移ったというだけで、トータルで見ると増えてないですね。だから我々はある意味、遠洋漁業にならざるを得ない。魚がいるところ(仕事があるところ)に行かないことには、獲れません。仕事を取れないと油賃(給料)がでないという非常に不安定な受注活動となってしまいます。

…次号に続く

金型新聞 平成27年(2015年)1月10日号

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