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OCTOBER

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がんばれ!日本の金型産業特集
キャステム 石井 裕二 係長

高度な金型技術で鋳造自在
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過去の豊富なデータ、金型づくりに生かす

同社の製造方法であるロストワックス精密鋳造とメタルインジェクション(金属粉末射出成形)は一般産業機械部品から医療機器に至る高精度で複雑形状(薄肉3次元形状含む)部品を生み出す。
ロストワックスは航空機部品用の7000系アルミを材料とする金型にワックスを注入しワックス模型にした後、軸棒と呼ぶ芯材に模型を接着させ、ツリー状に組み立ててから砂(セラミック)をまぶしていく。細かい砂から徐々に粗い砂を原型が分からないほどまぶして乾燥させ、160℃のオートクレーブでワックスを溶かし出す。中が中空になったツリーはさらに焼成炉(約1000℃)で焼き固めると鋳型になり、1700℃の溶けた鉄を流し込む鋳込み作業へ。冷却後、鋳型をバラして製品を軸棒から切断、検査と仕上げ加工で完成品となる。
メタルインジェクションは通常の射出成形と異なり、金属粉末と樹脂を混ぜ込んだものを高い圧力で金型に射出するため、耐久性のあるHRC50の硬度に熱処理された鋼材を使用。後工程で成形体を焼き固める焼結時の収縮率が15~20%(ロストワックスでは2~3%)で計算が難しく、収縮率が製品の各部位で微妙に異なり、100~1000分台の加工と手仕上げで金型を製造し、高精度で面質の良い製品が生まれる。
同社は金型設計図を作成する際に自動で収縮率の予測を反映させる自社システムを構築した。過去の豊富なデータを活かすためだ。すべて3次元型図面で海外工場との連携から顧客や製品情報も含めたシステムの構築を図っている。

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ローテクとハイテクで職人の勘を養う

「弊社の故戸田昭三会長も金型職人として生涯現役で、金型や道具、設備に至るまで独自のアイデアと手作業で作り上げていた。それを引き継いでいく」と石井係長は人材育成をこう語った。
同社の工場は高精度マシニングセンタと並んで、汎用フライス盤が設置されている。システム関係など、ハイテク技術を取り入れながらも、ローテクと呼ばれる手でものづくりを行うことも忘れない。それは会長の意思が社員に伝わっているからだろう。「ここは国家技能検定の会場にもなっており、職人技の勘を養う」と石井係長。タイ・フィリピンの海外工場への指導力も必要になることから、職人技・勘を養成するため、やすりや汎用フライス盤を使い、1ミクロンの仕上げができる金型技能者を育てている。工場の片隅には故戸田昭三会長の写真と共に愛用した汎用フライス盤なども展示されている。「日本の技を大切」にと、温かい眼差しで社員たちを見守っているかのようだ。
今後の取り組みについて石井係長はロストワックスの製造工程の長さに触れ、「ロストワックスの製造方法は昔から変わっていない。7年前から海外・派遣社員も含むグループ全社員で改善報告会を戸田拓夫社長に3か月毎に行っており、工程を含む基盤技術の見直しや材料変更、各作業のコンマ単位での時間短縮まで目を向け、取り組んできた。今後はものづくりのスタートである金型製作を先頭に、より高度で難しい製品をスピーディーに対応できる体制を作りたい」。


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代表者=戸田 拓夫社長
本社所在地=広島県福山市御幸町中津原1808-1
電話=084・955・2221
FAX=084・955・2065
URL=http://www.castem.co.jp
ブログ、フェイスブックなど多数。
事業内容=ロストワックス精密鋳造部品・セラミック射出焼結部品・金属射出焼結部品・FRP射出成型品の製造、自動車・電気用プレス・モールド金型部品製作など。
創業=1970年
資本金=7996万円
従業員数=203人
海外グループ=キャステム・フィリピン、キャステム・タイランドなど4拠点。
主な設備=マシニングセンタ(安田工業、牧野フライス製作所など)、ワイヤーカット(三菱電機)、放電加工機(ソディック)、3次元CAD/ CAM(コダマコーポレーションなど)、三次元測定機(ミツトヨ)、そのほか、鋳型焼成炉、溶解炉、脱脂炉、真空加圧焼結炉など多数。


金型新聞 平成27年(2015年)4月14日号

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