金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

JULY

03

新聞購読のお申込み

エクセディ 3Dで金型設計

トルコンの金型、月産60面強
 

 金型の開発から製造までの工程を3D技術で繋ぎ、開発期間を2分の1に短縮し、コストを30分の1に低減した自動車部品メーカーがある。自動車のオートマチックトランスミッション(以下AT)のトルクコンバータ(同トルコン)とマニュアルトランスミッション(同MT)のマニュアルクラッチなどを生産するエクセディ(本社:大阪府寝屋川市)は、昨年末、3D CAD(設計)―3Dプリンタ(造形)―3D測定の一気通貫で工法の短縮に成功した。日本でものづくりをする企業やマザー工場を目指す企業にとってエクセディの強さは、注目される。

 同社は、日本の四輪車メーカー12社の全てと主要ユニットメーカー、海外の四輪車メーカーにトルコンとクラッチを納入している。13年度のトルクコンバータ生産量は854万台。過去最大を記録した。世界シェアは、トルコン生産が24%(同社調べ)、クラッチ生産が11%(同)を占め、トルコンは世界№1の生産量を誇る。
連結中期経営計画の中期目標「チャレンジ活動」によると、13年度の連結売上高は2342億円、営業利益は194億円で、2015年度の連結売上高は2500億円を計画している。その骨格は、①勝てる開発、②売上拡大、③収益拡大、④組織構造改革、⑤勝てる生産技術 から成っている。
 同社は、技術の中核に金型を置いている。現在、国内外23カ国、41社(国内12社、海外29社)でトルコンとクラッチを生産販売しているが、多くの顧客から「日本と同等の品質」(小島義弘取締役執行役員生産技術本部長)が求められており、同社にとって金型の開発・生産は重要な技術になっている。

金型は技術の生命線
 12年1月1日、同社は基幹システムを一新した。「20年以上使い込んできたシステムが陳腐化し、高速でグローバルに対応できるシステムに切り換えた」(鹿崎良裕管理本部副本部長兼情報システム部長)。
 IT技術を活用し開発から製造までの工程を3Dで繋ぎ、設計のスピードアップを図った。
目的は「勝てる生産技術」。
 例えば、3D‐CADを導入するまでは構想設計‐詳細設計‐金型設計と個別に開発をしていたが、3D設計で1本に束ねた。「これで試作修正FBが不要になり、開発期間を約半分に短縮することができた」(浦川佳寿彦生産技術本部生産設計部標準化チーム長)。小島本部長は、「3Dプリンタで形を造り、それを見て生産検討を同時に行うことを日常茶飯事にしている」(同)と言う。
 金型1面あたりの設計が大幅に短縮する。従来は、30時間ほど掛かっていた金型設計作業は、一気に「1、2時間で完成」(浦川チーム長)する早業をやって退けた。

図面より〝これ〟
 さらに同社は、3Dプリンタをいち早く導入し、トルコンの造形を始めた。これまでお客様との仕様打ち合わせは、平面図やCADデータで行っていたが、3Dプリンタを導入し、実物に近い3次元形状にすることができた。「トルコンの実寸造形にすることで、その場でデジタルに確認することができ、お客様に喜ばれている」(浦川チーム長)。
 また、小島取締役執行役員は、「我々、スタッフだけでなく、現場の人たちも図面でどうこう言うより“これ”と、見せた方が早く、簡単。不具合が出そうなところを事前に潰しておくこともできるようになった」メリットを上げる。開発から3D設計、3D測定、3Dプリンタと繋ぐことで、一気に設計を短縮することができた。
 これにより月約60面、多い時は70面にのぼる金型生産は、金型の手直し、出戻りなどと言ったマイナス面は皆無になる。「近年、トルコンは、部品点数が増え、複雑形状のものが多くなった。一方で、ダウンサイジングが進み小さくなる、軽量になる、材料が変わっている。われわれは、これらお客様の要望にスピーディに応え、しかも高精度に仕上げるところで差別化を図っている」。小島取締役執行役員はさらにその先を目指している。

【会社概要】
本社:大阪府寝屋川市木田元宮1-1-1▽設立:1950年7月、▽社長:清水春生氏▽資本金:82億8,400万円▽従業員数:1万7,404人(14年3月、連結)▽主要事業セグメント:MT(クラッチディスク、クラッチカバー、2マスフライホイール)、AT(トルクコンバータ、オートマチックトランスミッション用部品)、その他(パワーシフトトランスミッション、リターダ、2輪車用クラッチ)。

金型新聞 平成26年(2014年)12月10日号

関連記事

マイクロヴェルト 技能問わずどこでも使える測定機【金型応援隊】

マイクロヴェルトは4月にもレーザー式の回転工具外径測定機「マイクロヴェルトナノ9」を発売する。設置環境や技術者のスキルを問わず、極めて短い時間で高精度に測定できる。 工具を独自のVブロックにセット。ボタンを押すと工具が回…

黒田精工 モータコア金型の生産強化【金型の底力】

2025年までに2.5倍に 黒田精工は昨年12月、モータコア金型などを手掛ける長野工場(長野県池田町)を拡張した。新たに設立した工場棟には300t大型高速プレス機や磁石の樹脂固着システムなどを導入。電気自動車(EV)市場…

【クローズアップ】碌々産業<br>感性に響く機械デザイン

【クローズアップ】碌々産業
感性に響く機械デザイン

洗練された直線的なフォルム、フロントカバーに縁取られた鋭い眼のような「アーモンドアイスリット」、高剛性を視覚化した鋳物部―。碌々産業(東京都港区、03・3447・3421)の高精度加工機シリーズは、性能だけでなく、デザイ…

がんばれ!日本の金型産業特集 <br>近藤精機製作所 近藤 雅之 専務

がんばれ!日本の金型産業特集
近藤精機製作所 近藤 雅之 専務

膜厚精度の高いゴム金型 機上測定で精度追究 ゴム金型専業メーカーの近藤精機製作所が手掛けるのは450㎜角までのサイズの精密金型だ。これまで多くの種類の金型を作ってきたが、近年注力するのがスイッチやダイヤフラム用など、いわ…

「品質の安定化を図る」阪村エンジニアリング社長・松井大介氏

EV化への対応加速 まつい・だいすけ1975年生まれ。大阪府出身。2000年龍谷大学国際学部卒。1999年同社入社(在学中にアルバイト入社)、2009年取締役製造部長、21年代表取締役に就任。座右の銘は「意志あるところに…

トピックス

関連サイト