金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

JULY

15

新聞購読のお申込み

顧客の一歩先ゆく技術力
焼入れ鋼数ミクロンを安定ーホクト精工

がんばれ!日本の金型産業(連載シリーズ)
ホクト精工 竹森 勝彦 専務

使い勝手考慮し図面も渡す

ホクト精工 技術

自動車や光学部品の超精密プラスチック金型を手掛けるホクト精工では図面流出にかかる問題は存在しない。必要なら納品時に全てデータを渡してしまうからだ。「金型は商品で顧客にとっては投資。中身がブラックボックス化しているのはおかしい」(竹森勝彦専務)。同社の金型は海外で使われることも多く「補修などを考えると顧客は図面があったほうがいいに決まっている」とも話す。流出の懸念より「技術は自社で育てる部分もあるが、顧客との擦り合わせの中で揉まれてアップする」と信頼関係による技術向上を重視している。

そんな同社の強みの一つが、HRC60程度の焼入れ鋼でも数ミクロンを安定して出せる切削ノウハウ。例えば光学部品の枠の金型(写真は成形品)。10数枚のレンズを保持し、画像化させるため、同軸度10μ、真円度15μm以下の高い精度が求められる。この金型も切削で仕上げた。しかし「今や国内ではほとんどない」という。技術進化による海外移転はあり得ることで、こうした状況を乗り越えていくためには「常に顧客の一歩先を行く技術力を付けなければならない」。

最近取り組むのは、融点が高いポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂など、成形が難しい素材向けの金型だ。成形しづらい材料でも、高い寸法精度や、正確なガスベントなど高度な技術が要求される。その分、付加価値は高くなる。「金型メーカーは設備負担が大きいので規模ではなく、技術力で付加価値を上げていくことで勝負すべきだと思う」。

多能工とエキスパートのハイブリッド人材を育成

ホクト精工 人

「金型の技術力は人と設備」(竹森専務)との考えから、人材育成を経営の最優先の一つに位置付けている。求める人材は、技術同様にハードルも高く、「多能工でかつマシニングや研削加工など特定分野に強いエキスパート」というハイブリッドな人材だ。育成法もそうなるように工夫している。基本路線は多能工化。入社後は順番に多くの工程を学んでいく。一定のレベルになれば「適正を見極めて、得意な分野や、やりたい分野に特化させる」という。エキスパートには、若手を付けることで、技能継承にもつなげている。

また、育成の一つとして活用しているのが国家技能検定だ。会社を挙げて積極的に取得を後押しているという。「人は自己啓発で成長するしかない。そのための空気づくりが重要だから」だ。学ぶことが当たり前の環境にいればそれが当然になる。

人材の底上げを図る一方、「経験値を高めるだけではダメ」との考えから、解析ソフトも導入し、成形条件などの検証を行うことで、理論的な部分と経験値のすり合わせを進めている。「人の経験値は時間をかければ何とかなる。それを会社の力に変えていくには、暗黙知的なものを形式知に変えていく必要があるからだ」。

竹森専務は言う。「一つ上のレベルに挑戦することはその時は難しい。けれど何度かやればそれが普通になる。ただしそれを継続させるには時間がかかるし、根気も必要。人材育成は常に先行投資だ」。


会社メモ

竹森勝彦専務

竹森勝彦専務

代表者=竹森松雄社長
資本金=1500万円
創業=1970年
従業員数=60人
本社工場=長野県千曲市大字羽尾1562
電話=026・276・2464
Fax=026・276・5647
主な業務内容=精密プラスチック金型の設計製造及び成形加工販売
設備機械=立形マシニングセンタ(MC)「YBM640」(安田工業)、「V56」(牧野フライス製作所)など4台、ワイヤカット放電加工機「MV1200R」(三菱電機)1台、NC放電加工機「EDGE2S」(牧野フライス製作所)2台、平面、成形研削盤「PSG63DX」(岡本工作機械製作所)など4台、流動解析「MoldFlow」(オートデスク)1台、三次元測定機「Crysta―ApexC」(ミツトヨ)1台、成形機「PS40E」(日精樹脂工業)など18台―など


金型新聞 平成29年(2017年)6月2日号

関連記事

ニチダイ 上期好調で増収増益 22年3月期

自動車生産減が影響で下期停滞 ニチダイの22年3月期決算は、売上高123億100万円(前年同期比13.7%増)、営業利益2億1700万円(前年同期は3億3900万円の赤字)となり、増収増益だった。 主力の冷間鍛造金型など…

【この人に聞く】トーヨーエイテック 表面処理開発担当役員・山中 敏雄氏「アルミの凝着抑える新被膜 」

トーヨーエイテック(広島県南区、082-252-5212)が今年2月に発表したアルミのプレス金型用DLCコーティング「TOYO Arc‐DLC」。高硬度で強固に密着するため、軟質で融点の低いアルミをプレス加工しても金型に…

米社製治具の3Dモデル製作
NKワークス

無料ツールをウェブで公開  NKワークス(東京都千代田区、03-3864-5411)はこのほど、5thAXIS社(米)の製品選定に役立つ3Dモデル製作ツール「3D COMPATIBILITY TOOL」の日本語版操作方法…

日本の金型変わる経営環境 未来の扉どう開く<br>セントラルファインツール 三宅 和彦 社長に聞く

日本の金型変わる経営環境 未来の扉どう開く
セントラルファインツール 三宅 和彦 社長に聞く

研究開発が新たな道  リーマン・ショック以降需要が回復しているものの、これがいつまで続くのか。自動車の電気化やインターネットの技術革新が産業構造にどんな影響を及ぼすのか。それが、日本の金型メーカーの多くの経営者が抱く未来…

【金型生産実績】前年同月比 6.5%増の294億3,100万円

プレス型は4.6%減、プラ型は13.5%増 2021年7月の金型生産は、6.5%増の294億3,100万円となった。前月比でも3.7%増と前月に続き回復した。数量は前年同月比0.8%減と微減。前月比でも3.4%減の3万9…

関連サイト