金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

DECEMBER

16

新聞購読のお申込み

カールツァイス X線CT「METROTOM」
金型修正の時間短縮

 X線で樹脂成形品の形状や内部を計測し製品図面との誤差を金型図面にフィードバック。そんな類の無い方法で金型修正の時間短縮を提案する装置メーカーがある。3次元測定機などで世界的に知られるカールツァイス(大阪府吹田市、06・6337・8031)だ。日本ではいまだ馴染みが薄いが、競争力を高める新たな技術として注目されている。

成形品の形状・内部を計測

 要求される品質に近づけるため金型の修正に手間が掛かる。そんな悩みを抱える成形品や金型メーカーは少なくない。その大きな理由の一つは試作品の寸法や形状、内部の状態を正確に把握できていないためだ。

 カールツァイスが提案するのはX線CT装置「METROTOM」を活用し、そうした金型修正時間を大幅に短縮するというもの。METROTOMの特長は医療検査などで使われるX線を用いること。成形品を360度回転させてX線を当て、あらゆる部位の寸法や形状を測定する。

 X線は樹脂などを透過するため、凹凸が連なる複雑な形状や、非接触式3次元測定機でプローブが入り込めない狭い部位の測定もできる。その測定精度は最も小型の「METROTOM800/130kV」で「2・9μm+L/100」だ。

 X線を用いることで内部の状態も把握できる。成形品はガスや異物が混じり品質不良になることがあるが、その位置や大きさを的確に確認できる。非鉄金属やガラスなども透過するためインサート成形したアルミ部品との境界面やガラス繊維の配向を調べることも可能だ。

金型修正の時間を大幅に短縮


インターモールド名古屋にはマルチセンサ測定機なども出展

METROTOM(※写真はモックアップ)で成形品の寸法や形状を測定

 
 その測定した点群データを製品図面と照合し、凹凸や歪みの誤差を確認。金型図面にも照らし合わせて誤差が無くなるように調整し、その指示をCAMに落とし込むことで金型修正の加工プログラムが完成する。

 大きさや形状でばらつきはあるが、手の平サイズの成形品で測定時間は数分、変更が少なければ1時間程度で補正できるという。また発見した内部の気泡や異物は最適な成形条件を導く目安にもできる。

 近年、自動車や電機製品の部品は軽量で高強度の特殊な樹脂が使われたり、樹脂と繊維強化プラスチックを一体成形したりする手法が用いられる。アッセンブル成形など独特な成形工法の金型を手掛けるセントラルファインツールの三宅和彦社長はMETROTOMの魅力についてこう話す。

 「寸法や形状の計測結果を数値化でき、内部の状態を知るために成形品を切断する必要が無いこと。活用することで金型開発の技術力を高めることができるかもしれない」。

 カールツァイスはX線CTによる受託測定もしており最近、利用する企業が増えているという。6月に名古屋で開かれたインターモールド名古屋ではX線CTや受託測定に加え、マルチセンサ測定機や非接触デジタイザなどによる金型修正のトータルソリューションをアピールした。

 X線CTや測定機の国内販売を統括する久保田雄志マネージャーは「測定のデジタル技術は進化し続けている。より多くの成形品や金型の技術者に当社の測定技術を活用して貰うことで、日本のものづくりの成長に貢献したい」。

金型新聞 平成30年(2018年)7月4日号

関連記事

東京都金属プレス工業会 取引適正化、価格転嫁支援を要望 中企庁などに提言書

東京都金属プレス工業会(増田靖治会長、増田製作所社長)は、金属プレス製造業が直面する課題の解決に向けた要望をまとめた提言書を東京都や中小企業庁、経済産業省に提出した。燃料価格の変動に対応する「燃料サーチャージ」制度の検討…

【INTERMOLD・金型展・金属プレス加工技術展 総集編】
小出会長オンラインレポート

出展各社の見所、小出会長(日本金型工業会)がレポート  新型コロナの感染が拡大し金型関連企業も県外への外出を自主規制する動きが広がる中、インターモールド2021では初の試みとして開催初日の4月14日、展示会場の様子を撮影…

ニチダイ トヨタと鍛造DXで協力

塑性加工見える化へ 冷間鍛造金型などを手掛けるニチダイは昨年、トヨタ自動車と同社が開発しているセンシング技術「鍛造DX(鍛造加工のリアルタイム統合可視化技術)」の実用化に向けて協力することで合意。鍛造加工におけるデータを…

【金型テクノラボ】岡本工作機械製作所 大型プレートの高精度、高効率な平面研削技術

順送プレス金型などの大型プレートは、平面度を維持するために再研削によって何度も繰り返し使用されている。また、焼き入れ処理を行うため、反りが発生し、加工時間の増加や測定方法などが課題となっている。ここでは、このような金型プ…

ミスミグループ本社 24年3月期売上高1.5%減の3676億円

世界的な設備投資需要が低迷 ミスミグループ本社(東京都千代田区)の2024年3月期決算は、売上高が前年同期比1・5%減の3676億4900万円となった。製造業を中心にグローバルで設備投資需要が低迷し、減収。今期の売上高は…

トピックス

関連サイト