金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

JULY

05

新聞購読のお申込み

– 成形をゆく- シマファインプレス(和歌山県)

世界の衣料支える 横編み機の精密部品

 親会社である島精機製作所の横編み機は、複雑な形状のワンピースでも縫い目なく編める“ホールガーメント”という独自技術(写真①)で、6割近い世界シェアを占める。機能性に加え、長時間使っても壊れないなど、世界中の評価を得ており、シマファインプレスはその横編み機に必要な高精度部品を供給している。同社は、さらに、横編み機以外の分野でも、社名の一部にもあるファインブランキング(FB)や超精密な射出成形技術で、世界中の衣料業界を支え続けている。

①ホールガーメントで作ったワンピース

機械を極限まで使いこなす

 創業は1980年。当時採用していた欧州の部品に満足できず、それを内製化するために立ちあげた。創業時29歳で島精機から移籍した西村定夫社長は「金型も成形ノウハウもゼロ。分かっていたのは高精度な部品を作らなければならないことと、そのために高精度な機械が必要だということ」。だから設備にはこだわった。持論は「100分台の機械を何台並べても1000分台はできない」だ。

最高の機械にこだわる

この方針通り、最高級の機械をそろえた。しかし、西村社長は「重要なのは機械だけではなく、使いこなす力」と話す。「安全率などを考慮し、メーカーのカタログにあるチャンピオンデータより少し低い領域で機械を使うことが一般的。しかし当社は違う。メーカーのカタログ値にある極限のレベルまで機械を使いこなす。それがノウハウになる」。技術者にもその意識を徹底させるため、自ら機械を選択させる。

 最高級の機械とそれを使いこなす気概。こうした姿勢があったからだろう。創業からたった半年でFB用の金型を製作した。8年後には「金型を作る機械があるのだから樹脂型もできるだろう」と射出成形を始めた。

 こうしてスタートした同社だが、今や手がける部品は高度なものばかりだ。例えば、編み機を正確に制御するには欠かせない主力のニードルプレートという部品(写真②)は、厚み1~2㎜、長さ200~250㎜の焼き入れ材からなる。1台数千本を使用するこの部品は、1日8万本も製造される。また、樹脂でも特殊な部品を製造。布地や炭素繊維など新素材のフィルムを寸法通りに裁断するための部品(写真③)であり、フィルムをこの部品の上に乗せ、吸着しながら切断する。きれいに切断するために、約100㎜角に8100本ものピンを立てる必要があり、この金型も数か月かけて製作した。

②編み機の制御に不可欠なニードルプレス

③新素材のフィルムに裁断する部品

 

自動化で良いものを早く

こうした高品質なものづくりができるのは子会社だからという見方もあるかもしれないが、むしろ逆だ。子会社だからこそ要求は厳しい。そのために自動化で安く作ることも追求する。例えばニードルプレートでは、それまで2時間かけてその先端部を研磨していたが、専用機メーカーと共同で、10数秒で研削する画期的方法を開発。また、抜け穴でのカスを金型内で処理できるよう、自動化対策にも取り組んできた。

挑戦なくして成長なし

こうした工夫や新技術へ挑戦は尽きない。最近では、「後処理を考えるとレーザーのほうが早い部品も多い」ことから、レーザー加工による部品づくりを始めた。また、年内には650tクラスの成形機を導入し、大きなサイズの部品製造が進行中である。さらに、まだ具体的なアクションには至っていないが、ソディックが開発したアルミ用の射出成形機の活用も検討している。
 「生産性にしても、利益を上げるにしても新しいことに挑戦しなくて成長はない」西村社長の言葉は、同社の成長の源泉となっている。


西村 定夫社長


会社概要

本社:和歌山県和歌山市神前357
代表者:西村定夫社長
従業員数:110人
設備:フィンブランキングプレス機10台(アサイ産業など)、射出成形機14台(住友重機など)、放電加工機、マシニングセンタ、5軸加工機など多数
事業内容:ファインブランキングや射出成形によるニードルプレートなど横編み機部品の製造など

金型新聞 平成30年(2018年)9月10日号

関連記事

ミスミグループ本社「meviy」に新機能

ミスミグループ本社(東京都千代田区、03・6777・7800)はこのほど、オンライン機械部品調達サービス「meviy(メビー)」に「2D図面自動作成・ダウンロード機能」を新たに追加した。「Meviy」にアップロードした3…

堀江亜衣奈さん 醍醐味は職人技の瞬間【ひと】 

「六角パンチやピンの研削加工では多少寸法のズレが発生するため、補正するのが常ですが、狙い通りに寸法がハマッた瞬間はヨシッとガッツポーズします」と笑顔を見せるのは堀江亜衣奈さん(22)。精密鍛造金型や部品を手掛ける阪村エン…

MF ‐ TOKYO 出展者募集開始

日本鍛圧機械工業会が来年7月開催 日本鍛圧機械工業会(北野司会長、アイダエンジニアリング常務)は、7月1日から「MF-TOKYO2023第7 回プレス・板金・フォーミング展」の出展募集を開始した。日刊工業新聞社と共催。2…

価格の引き上げ急務 業界を挙げた取引環境是正へ【特集:どうする値上げ】

金型の製造コストが上昇している。金型の母材として多く使われる工具鋼や、各種金型部品などが相次いで値上げされたためだ。加えて、工場稼働に必要な電気料金も依然、上昇傾向にある。金型メーカー各社は、取引先への価格の引き上げ交渉…

現場の思いを尊重<br>天青会 野口 賢太郎 会長

現場の思いを尊重
天青会 野口 賢太郎 会長

企業見学会に注力  日本金型工業会東部支部の若手経営者らが集まる天青会の会長に今年5月、就任した。現場至上主義を自身のテーマとして掲げ、「今年は、工場見学会など現場に足を運ぶということをメインに活動していきたい」と意気込…

トピックス

関連サイト