「CASE」(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)に代表されるように、「百年に一度の変革期」と言われる自動車業界。金型にとってもその影響は大きく、舵取り次第では将来の成長を左右しかねない。特に、金型へのインパ…
進化する金型のスマート化
ITやセンシング技術を駆使した「金型のスマート化」が進んでいる。温度や圧力など様々なセンサを金型に取り付け、インターネットに接続することで、金型の状態がいつでもどこでも把握できるようになるほか、取得したこれらのデータを分析することで成形条件の最適化や不具合の予知などにも活用できる。熟練技能者の不足や製造現場のIoT化などによって、こうした「スマート化」の需要は増している。ここでは、「金型のスマート化」を推進する最新事例とそれを支える最新機器を紹介する。
旭(長野県諏訪市)
ダイカスト金型メーカーの旭が「金型のスマート化」に取り組み始めたのは、3年前。コンサルタント企業の三井共同建設コンサルタント(東京都品川区、03-3495-1321)と共同で遠隔監視クラウドシステム「FieldChecker(フィールドチェッカー)」を開発してからだ。
遠隔監視システムを開発
ダイカストでは、金型の温度が成形品の出来を大きく左右する。その一方で、きちんとした温度管理ができている現場は少なく、ほとんどが熟練技能者の経験や勘に頼っていた。「金型の不具合や成形不良が発生した場合、トラブル時の状況が分からず原因究明に手間取ることが多かった」(増澤久臣社長)という。
こうした課題を解決するために旭では、「フィールドチェッカー」を開発し、このシステムを活用した金型を提案するようになった。提案するのは、金型に熱電対を取り付けて温度を計測し、金型の状態を数値化するというもの。「フィールドチェッカー」に接続することで、計測データを常時クラウドに上げ、リアルタイムで金型の温度が把握できる。
クラウドとの接続には、SIM回線を使用するため、100V電源と電話回線があれば簡単に使うことが可能。また、金型の温度以外にも現場の室温や照度、カメラ映像のデータなども取得できる。
ユーザーは、これらの取得したデータをパソコンやタブレットで、金型の状態や稼働状況を見ることができる。成形不良や不具合が発生した時には、データを分析し、原因究明や改善につなげることも可能。そのほか、「今まで見えなかった“チョコ停”なども見えるようになり、生産効率の改善などにもつなげられる」(増澤社長)。
今後は各種センサのワイヤレス化を進めていく考えだという。現在、匠ソリューションズ(仙台市青葉区、022・342・1888)の温度センサ「TWINS‐T」を活用したシステムを構築しており、「より使いやすい形に改良していく」(増澤社長)。また、AI(人工知能)を活用し、自動で不良予測できる仕組みなども研究中だ。
将来的には、同システムを使ったコンサル事業への展開を目指す。「製造現場のスマート化は間違いなく進んでいく。まずは取り入れて、その世界を知ることが重要。これからさらに知見を深め、新しい金型づくりにつなげていきたい」(増澤社長)。
金型しんぶん 2019年9月日10
関連記事
金属3Dプリンタで造形した金型部品のトラブルを分析・解決する「診断士」のような業務を担当する。珍しいトラブルほどテンションが上がるそうで、「難しい問題を解明できた時の達成感が何よりも気持ちがいい」。 大学では金属材料を研…
産業用ガスメーカーの大陽日酸はガスの高い知見を武器に金属AMによる金型づくりを提案している。海外製の金属AM装置販売のほか、粉末の管理、シールドガスによる水分や酸素濃度の管理、造形ノウハウまでトータルでサポートするのが特…
特殊鋼材料の販売や金型のメンテナンスを手掛ける商社の南海モルディ(22年9月に南海鋼材から社名変更)は、オリジナル製品「予熱くん」や「肉盛りくん」を開発、販売し好評を得ている。 「予熱くん」は、製造前の金型予熱、焼き嵌め…
三井精機工業(埼玉県川島町、049-297-5555)が、金型分野に注力している。今春、新型の微細加工機と、ジグ研削盤を発売。今後需要の拡大が期待される電気自動車(EV)や電子部品関連の金型加工向けを中心に売り込んでいく…