金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

DECEMBER

13

新聞購読のお申込み

この人に聞く
日本デザインエンジニアリング岩壁 清行社長

 「設計の効率化は業務フロー全体を見直さないと意味がない」。そう話すのは、日本デザインエンジニアリングの岩壁清行社長。同氏は長年自身も金型づくりに携わり、近年ではフィリピンで設計支援を手掛ける。また、20年以上前から、日本金型工業会の東部支部で設計の効率化などを推進するシステム研究会のリーダーを務めている。金型も設計も熟知する同氏に、型設計の効率化を進める上での課題やその手法について聞いた。 

設計効率化は会社改革

 日本デザインエンジニアリング社長、NDE DIGITECH,INC(フィリピン)社長、1958年生まれ、東京都出身。日本金型工業会では、理事、国際委員会 委員、技術委員会委員、金型生産システム研究会 代表幹事を務める。

全体最適を意識すべき

設計の効率化を課題にする金型メーカーは多い。

 確かに、3次元(3D)CAD/CAMの導入が進み、2Dの時代から比べると設計作業自体は便利にはなってきた。しかし、設計だけの改善を考えるから、金型製造全体の効率化にはつながらない。

どういうことか。

 例えば設計データを3D化しても、加工や組み立て現場が2D図面を求めれば図面を起こす作業が増える。外注のための2D作図が発生するし、3D設計データができても自動で部品発注まで行っていないなど、企業や型種によって異なるが、金型加工全体の効率化するには、設計だけでなく、こうした小さな課題の多くの「丘」を乗り越えなければいけない。設計という部分最適でなく、加工プロセス全体を最適化する必要があると思う。高機能なCAD/CAMを入れたら終わりではない。うまく進めている企業も実際には、改善にかなり時間をかけている。

どう進めるべきか。

 まずは、設計業務のフローチャートを作成することは必要だ。どの工程で、どんな情報が必要で、そのためにはどんな設計をするべきか。それが分からないと先に進めない。金型ノウハウを熟知した技能者と、金型を知らなくてもITスキルの高い(頭の柔らかい)若者を組ませることも一つの方策だと思う。技能者の頭の中にあるプロセスや考えを明確にできればいい。いずれにしても、3Dが主流の金型づくりには会社全体のITリテラシーの向上が必要だ。

設計者に時間を与えよ

他には。

 設計者に時間を与えるべきだと思う。ソフトの新しい機能やスキルを学ぶ時間は当然だが、なぜ3D化が必要なのか、設計プロセス全体を俯瞰的に考えてもらえる時間を与えるべきだ。

しかし、人手不足で余裕がない企業も多い。

 協力企業を使うのもの一つだと思う。基本設計や構想設計を自社で行い、3D化を協力先に分担してもらってもいい。3Dで部品やベースを発注できるサービスを使うことも必要だし、人の配置の工夫も重要だ。2Dの時代は現場で微調整ができたが、3Dではそうはいかず、今の金型づくりは設計者への負担が大きい。そうした負荷を見直すことも大切だろう。

 人手不足が進む今、1社では限界があるのかもしれない。金型メーカー同士がネットワークを組み、負荷を分け合うなど、新たな取り組みが必要かもしれない。

金型しんぶん 2019年11月10日

関連記事

己が戦力知り戦略
日本金型工業会学術顧問 /日本工業大学客員教授
横田 悦二郎氏に聞く

〜世界の需要どう取り込む〜  世界の金型需要を取り込むには何が必要か—。世界各地の金型工業会の設立に関わり、世界中の金型業界をよく知る日本金型工業会学術顧問の横田悦二郎氏は「コロナで世界の金型需要は高まるが、需要を確保す…

電動系、車体系部品へ事業拡大【特集:自動車の電動化とダイカスト】

自動車の電動化が金型に及ぼす影響は大きい。エンジンなどの減少が懸念される一方、軽量化ニーズでアルミの採用が期待されるなどダイカスト金型は変化を迫られている。では電動化でダイカストはどう変わっていくのか。昨秋のダイカスト展…

切削油をオーダーメイド
サンコーオイル

 「お客様が求める油を作りたい」と語るのは、サンコーオイルの菅大祐専務。同社ではユーザーが求める価格帯や性能、さらには環境への影響まで考慮し、オーダーメイドで切削油の製造を行い、好評を得ている。  切削油のオーダーメイド…

切削加工の領域を拡大 矢野雄介氏 (碌々スマートテクノロジー社長)【この人に聞く】

微細加工機メーカーの碌々スマートテクノロジー(東京都港区、03・3447・3421)は昨年、「碌々産業」から社名を変更した。創立120周年を迎え、これまで標榜してきた「微細加工機のリーディングカンパニーへ」から「微細加工…

東洋研磨材工業〜我ら金型応援隊〜

職人技術により近い研磨を  東洋研磨材工業(東京都港区、03-3453-2351)は、鏡面ショットマシン「SMAP」を手掛ける研磨材商社。商社ながら、創業者の「いかなるニーズにも応え得る商社でありたい」という思いから、設…

トピックス

関連サイト