金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

NOVEMBER

20

新聞購読のお申込み

この人に聞く
日本デザインエンジニアリング岩壁 清行社長

 「設計の効率化は業務フロー全体を見直さないと意味がない」。そう話すのは、日本デザインエンジニアリングの岩壁清行社長。同氏は長年自身も金型づくりに携わり、近年ではフィリピンで設計支援を手掛ける。また、20年以上前から、日本金型工業会の東部支部で設計の効率化などを推進するシステム研究会のリーダーを務めている。金型も設計も熟知する同氏に、型設計の効率化を進める上での課題やその手法について聞いた。 

設計効率化は会社改革

 日本デザインエンジニアリング社長、NDE DIGITECH,INC(フィリピン)社長、1958年生まれ、東京都出身。日本金型工業会では、理事、国際委員会 委員、技術委員会委員、金型生産システム研究会 代表幹事を務める。

全体最適を意識すべき

設計の効率化を課題にする金型メーカーは多い。

 確かに、3次元(3D)CAD/CAMの導入が進み、2Dの時代から比べると設計作業自体は便利にはなってきた。しかし、設計だけの改善を考えるから、金型製造全体の効率化にはつながらない。

どういうことか。

 例えば設計データを3D化しても、加工や組み立て現場が2D図面を求めれば図面を起こす作業が増える。外注のための2D作図が発生するし、3D設計データができても自動で部品発注まで行っていないなど、企業や型種によって異なるが、金型加工全体の効率化するには、設計だけでなく、こうした小さな課題の多くの「丘」を乗り越えなければいけない。設計という部分最適でなく、加工プロセス全体を最適化する必要があると思う。高機能なCAD/CAMを入れたら終わりではない。うまく進めている企業も実際には、改善にかなり時間をかけている。

どう進めるべきか。

 まずは、設計業務のフローチャートを作成することは必要だ。どの工程で、どんな情報が必要で、そのためにはどんな設計をするべきか。それが分からないと先に進めない。金型ノウハウを熟知した技能者と、金型を知らなくてもITスキルの高い(頭の柔らかい)若者を組ませることも一つの方策だと思う。技能者の頭の中にあるプロセスや考えを明確にできればいい。いずれにしても、3Dが主流の金型づくりには会社全体のITリテラシーの向上が必要だ。

設計者に時間を与えよ

他には。

 設計者に時間を与えるべきだと思う。ソフトの新しい機能やスキルを学ぶ時間は当然だが、なぜ3D化が必要なのか、設計プロセス全体を俯瞰的に考えてもらえる時間を与えるべきだ。

しかし、人手不足で余裕がない企業も多い。

 協力企業を使うのもの一つだと思う。基本設計や構想設計を自社で行い、3D化を協力先に分担してもらってもいい。3Dで部品やベースを発注できるサービスを使うことも必要だし、人の配置の工夫も重要だ。2Dの時代は現場で微調整ができたが、3Dではそうはいかず、今の金型づくりは設計者への負担が大きい。そうした負荷を見直すことも大切だろう。

 人手不足が進む今、1社では限界があるのかもしれない。金型メーカー同士がネットワークを組み、負荷を分け合うなど、新たな取り組みが必要かもしれない。

金型しんぶん 2019年11月10日

関連記事

【金型応援隊】ミサト技研 熟練した技術と知見による磨き

高品質な鏡面磨き ミサト技研はプラスチック金型やダイカスト金型、機械部品などの鏡面磨きを手掛けている。「納期に遅れず、顧客が希望する品質に応えることができる」(牧野聖司社長)と強調するように、熟練した技術と知見による高品…

【ひと】明輝 技術部・センシル クマールさん 高度な技術に挑むインド出身の金型設計者

インド・ムンバイ出身。2018年に来日し、プラスチック金型メーカーの明輝に入社した。担当は設計。自動車内外装品や機能部品など大小様々な金型を手掛けている。 金型技術者だった父親の影響で幼い頃から金型に興味を持っていた。地…

コアコンセプトテクノロジー CTO 田口紀成氏に聞く
〜DXがなぜ必要か〜

 あらゆる業界で叫ばれているDX(デジタルトランスフォーメーション)。各企業には、デジタル技術を使い、ビジネスモデルや組織、働き方など会社そのものの構造を大きく変えていくことが求められている。金型業界も例外ではない。次代…

金型の異常をAIで検知するカメラシステム【金型応援隊】

AI・ロボット開発のベンチャー企業a‐roboは2023年2月、プラスチック成形中の異常を検知し、成形機を制御するカメラシステム「GROW‐V」を発売した。 カメラの画像情報をもとにAIが金型の異常を検知する。既存のシス…

金属3Dの金型で革命を ムトー精工が挑むコスト削減と新価値の創造[金型の底力]

樹脂部品の金型から成形、組み立てまでを手掛けるムトー精工は金属3Dプリンタによる金型づくりを進めている。成形サイクルを上げ、コストダウンや成形機の設備削減などを狙う。さらに、他の技術と組み合わせ、付加価値の向上にもつなげ…

トピックス

関連サイト