金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

JANUARY

28

新聞購読のお申込み

高濃度セルロースファイバー
パナソニック

材料と成形方法を確立 

新素材で成形したワーク

 パナソニックマニファクチャリングイノベーション本部はセルロースファイバーを55%以上の高濃度で樹脂に混ぜ込む複合技術と、その成形技術を確立した。素材の軽量化やプラスチックの削減、木目調の自然な外観などの利点を生かし、アサヒビールと共同でビール用カップ(写真)も開発した。強度や色彩など素材の特性をさらに高め、パナソニックの家電製品などへの採用を広げる考えだ。

 一般的にセルロースナノファイバーはパルプ繊維をほぐすのに水を使用し、再乾燥させるため多くの二酸化炭素を排出する。同社では水を使わず、溶けた樹脂内で繊維をほぐし、二酸化炭素の排出も少なくて済む「全乾式プロセス」を開発した。このプロセスで製造した素材は「セルロースファイバーは直径10~20μmのものが多く、一部にナノサイズのものも含むことが特長」(マニュファクチャリングソリューションセンターの大熊崇文課長)だ。

 18年には、この素材を柄の部分に採用したクリーナも発売し、従来比で1割以上の軽量化に成功した。今回はこの時よりも高い55%以上の濃度で樹脂に混ぜ込む複合技術を開発した。高い濃度ながら、白色の材料の生成を可能にし、着色の自由度も増したという。「ここまで高い濃度のものはあまりない」(大熊氏)という。

 合わせて、高濃度な素材を成形する加工技術も確立。「金型、成形ともに様々なノウハウが盛り込まれている」(成形技術開発センター峯英生課長代理)ため、詳細は明らかにできないが「流動性や金型の温度管理、ガス抜きなど様々な工夫を凝らしている」(峯氏)という。

アサヒビールとカップ開発

 今夏には、この55%以上の高濃度なセルロースファイバーを使ったビール用カップをアサヒビールと共同で開発した。従来のポリプロピレン(PP)を使ったカップに比べ、大幅にプラスチックの使用量削減につながった。着色剤がなくても、自然な木目調の外観や、色合いをランダムに変えて成形もできるという。

 今後について、峯氏は「素材の特性を高めるとともに、独特の色合いを出したり、色むらの再現性を高めたりしていく。まずは家電製品を中心にパナソニックの製品群に提供していくが、アサヒビールのようなパートナーとも手を組み、採用を拡げていきたい」としている。

金型しんぶん 2019年12月10日

関連記事

研削盤3機種を発表 長島精工 

研削盤3機種を発表 長島精工 

省スペース設計・自動化も対応  研削盤メーカーである長島精工(京都府宇治市、0774・45・3611)は先日開かれたJIMTOF2018で新製品の精密小型ネジ研削盤2機種(内径ネジ及び外径ネジ)と、超精密高効率円筒研削盤…

極短パルスレーザーによるパンチエッジの先鋭化とナノ構造化【金型テクノラボ】

ダイヤモンドコーティングは工具寿命を向上させるために広く用いられている。一方でその表面粗さおよび高硬度ゆえに、モータコアやコネクタなどの製造用精密パンチが求める目的形状に加工するのが難しいという課題がある。本稿では極短パ…

イスカルジャパン °90肩削りフェースミルを販売開始

高効率加工と高い経済性 イスカルジャパン(大阪府豊中市、06-6835-5471)はこのほど、90度肩削りフェースミル「NEODO(ネオドゥー)」の販売を開始した。高い剛性を持ち、高能率加工を可能にする一方、経済性も高め…

日本精機 水管内部の形状を崩さない化学研磨液を開発

日本精機(愛知県名古屋市、052-736-0611)は、金属3Dプリンタで造形した水管内部の形状を崩すことなく、面粗度も改善できる化学研磨液「N FCP100」を開発した。プリンタで造形した金型以外の水管研磨にも有効で、…

エクストリームダイメイト 金型用などインサート追加
ダイジェット工業

リニューアル発売  ダイジェット工業(大阪市平野区、06-6791-6781)は、丸駒ラジアスカッタ「エクストリームダイメイト」に金型加工用や耐熱合金用のインサートを追加し本体鋼種も見直すなどリニューアルし、発売した(写…

トピックス

AD

AM金型の冷却効率を自動設計で最大化!サイクルタイム短縮・成型品の反り問...

応用技術株式会社が展開する製造業向けデジタル支援サービス「toDIM」は、Additive Manufacturing技術(以下、「AM」)を活用した金型製作において、オ... 続きを読む

関連サイト