金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

NOVEMBER

19

新聞購読のお申込み

【この人に聞く】テクノア社長・山﨑耕治氏「システムにおける中小企業の専門医として導入検討時の不安を取り除く」

 一品一様の世界である金型産業は生産や技術面で人に頼ることが多く、デジタル化が喫緊の課題。そこで生産管理システムで生産性向上や経営のサポートに取り組んでいるのがテクノア(岐阜県岐阜市)だ。金型など中小企業向けで多品種少量生産型に特化した生産システムを開発し、工程進捗管理などで課題を持つ金型メーカーに訴求している。どのような考えで製品を開発し、課題に対応しているのかを、同社の山﨑耕治社長に聞いた。

多品種少量生産の専門医

1974年生まれ、大阪府出身。福井大学工学部、2000年テクノア入社。生産管理システム「TECHSシリーズ」の営業に従事。08年からTECHS事業部長、営業統括部長を歴任。14年執行役員、取締役、16年社長に就任。

   

顧客の不安を取り除く

販売状況について。

 おかげさまで生産管理システム「TECHS」シリーズは1994年の発売以降、順調に実績を伸ばし、全国3800社のユーザーに導入してもらっている。金型など中小企業で多品種少量生産型の製造業に特化しているのが特長で、工程進捗管理に重きを置き、バーコード付き指示書を出し、現場はハンディターミナルで読み込むと、どの工程まで進んだか可視化できる仕組みだ。特に金型は部品の納入をはじめ、特急対応や修理・メンテナンスなど日々のスケジュール管理が難しく、組付け時にすべての部品が揃っていないと成立しない。それを可視化することに重点を置いた。

システムの特長は。

 金型はどんな工程で製作するか現場判断も多い。当社のシステムは最初のマスターデータに縛られず、走りながら修正できる柔軟な仕組み。また、ユーザーは生産管理がほしいのではなく、生産管理を使った後の姿が見たいと思っているので、生産管理以外の要素にも注力している。

どんなことですか。

 製造原価の見える化をサポートしている。実績ベースで原価を算出しないと、いくら金型にコストがかかり、本当に儲かっているのか判断ができない。これを紙ベースや人の経験で算出すると、異なる結果になる。これはITを活かせる部分だ。また、中小企業診断士が社内に在籍しITを次の経営にどう役立たせていくかをサポートしている。少しずつ実績も出ていて、ユーザーの中にはIT経営力大賞を受賞するなど、年間100件ほどの喜びの声が届いている。「顧客の価値をみんなで生んでいこう」と社内も活気をもって取り組んでいる。

今後について。

 中小企業白書(2018年版)をみると、生産・販売など基幹業務統合ソフト(ERP)を導入している企業は約5割。十分活用できているのは全体の2割ほどで、まだ十分活用されていない。国の施策でシステム導入の機運は高まる中、当社はシステムの総合医ではなく中小企業向けの専門医として、事例紹介セミナーや導入実績を持つユーザーへの工場見学会を通じ、企業に導入前・後の効果を見てもらい、導入検討時の不安を取り除こうと工夫している。直近は「A‐Eyeカメラ」によるIoTに取り組み、IoTで何ができるのか事例を集めたアイデアブックを無料公開している。ユーザーに何か気づいてもらうことが我々の役目の1つだと思っている。

金型新聞 2020年9月10日

関連記事

特集〜世界の需要どう取り込む〜
金型のサムライ世界で挑む –欧州–

 新天地を求めて、世界に進出していった日本の金型メーカーは、何を考え、どんな苦労や課題を乗り越えて、取り組みを進めてきたのか。また、さらなる成長に向け、どんな青写真を描いているのか。中国、タイ、メキシコ、アメリカ、欧州そ…

金型にも「情報管理」の波

金型にも「情報管理」の波

「技術等情報の管理認証制度」設立  IoT化やグローバル化などによって、情報流出のリスクが高まる昨今、製造業には技術などの情報の適切な管理が求められている。金型業界も例外ではなく、「顧客情報がしっかり管理、保護できている…

【金型の底力】エフアンドエム 5軸機導入をコンサル

企業間連携でフィールド広げる 自動車骨格部品などのアルミ押出金型を手掛けるエフアンドエムは今年1月、5軸加工機の導入コンサルティングサービスを始めた。長年運用してきた経験やノウハウを活かし、金型や部品メーカーのニーズにマ…

金型産業の未来・トヨタ自動車<br>高見 達朗氏に聞く

金型産業の未来・トヨタ自動車
高見 達朗氏に聞く

粗形材改革の〝要〟 孫の代まで続く金型産業 「金型は、常に進化させながら孫の代まで延々と続く重要産業」――トヨタ自動車ユニット生技領域長、常務理事高見達朗氏はこのほど、日本の金型産業について熱く語った。日本産機新聞の自動…

【鳥瞰蟻瞰】スワニー 社長・橋爪良博氏 一気通貫の体制で生産性向上

分業せずに生産性向上一人で開発から製造まで育成には失敗できる環境が大事 大企業に限らず日本の製造業の多くが分業でものづくりを行っています。複数の人員が役割を分担して行う分業という仕組みは、効率良く生産するための有効な手段…

トピックス

関連サイト