金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

APRIL

02

新聞購読のお申込み

【この人に聞く】テクノア社長・山﨑耕治氏「システムにおける中小企業の専門医として導入検討時の不安を取り除く」

 一品一様の世界である金型産業は生産や技術面で人に頼ることが多く、デジタル化が喫緊の課題。そこで生産管理システムで生産性向上や経営のサポートに取り組んでいるのがテクノア(岐阜県岐阜市)だ。金型など中小企業向けで多品種少量生産型に特化した生産システムを開発し、工程進捗管理などで課題を持つ金型メーカーに訴求している。どのような考えで製品を開発し、課題に対応しているのかを、同社の山﨑耕治社長に聞いた。

多品種少量生産の専門医

1974年生まれ、大阪府出身。福井大学工学部、2000年テクノア入社。生産管理システム「TECHSシリーズ」の営業に従事。08年からTECHS事業部長、営業統括部長を歴任。14年執行役員、取締役、16年社長に就任。

   

顧客の不安を取り除く

販売状況について。

 おかげさまで生産管理システム「TECHS」シリーズは1994年の発売以降、順調に実績を伸ばし、全国3800社のユーザーに導入してもらっている。金型など中小企業で多品種少量生産型の製造業に特化しているのが特長で、工程進捗管理に重きを置き、バーコード付き指示書を出し、現場はハンディターミナルで読み込むと、どの工程まで進んだか可視化できる仕組みだ。特に金型は部品の納入をはじめ、特急対応や修理・メンテナンスなど日々のスケジュール管理が難しく、組付け時にすべての部品が揃っていないと成立しない。それを可視化することに重点を置いた。

システムの特長は。

 金型はどんな工程で製作するか現場判断も多い。当社のシステムは最初のマスターデータに縛られず、走りながら修正できる柔軟な仕組み。また、ユーザーは生産管理がほしいのではなく、生産管理を使った後の姿が見たいと思っているので、生産管理以外の要素にも注力している。

どんなことですか。

 製造原価の見える化をサポートしている。実績ベースで原価を算出しないと、いくら金型にコストがかかり、本当に儲かっているのか判断ができない。これを紙ベースや人の経験で算出すると、異なる結果になる。これはITを活かせる部分だ。また、中小企業診断士が社内に在籍しITを次の経営にどう役立たせていくかをサポートしている。少しずつ実績も出ていて、ユーザーの中にはIT経営力大賞を受賞するなど、年間100件ほどの喜びの声が届いている。「顧客の価値をみんなで生んでいこう」と社内も活気をもって取り組んでいる。

今後について。

 中小企業白書(2018年版)をみると、生産・販売など基幹業務統合ソフト(ERP)を導入している企業は約5割。十分活用できているのは全体の2割ほどで、まだ十分活用されていない。国の施策でシステム導入の機運は高まる中、当社はシステムの総合医ではなく中小企業向けの専門医として、事例紹介セミナーや導入実績を持つユーザーへの工場見学会を通じ、企業に導入前・後の効果を見てもらい、導入検討時の不安を取り除こうと工夫している。直近は「A‐Eyeカメラ」によるIoTに取り組み、IoTで何ができるのか事例を集めたアイデアブックを無料公開している。ユーザーに何か気づいてもらうことが我々の役目の1つだと思っている。

金型新聞 2020年9月10日

関連記事

この人に聞く2016<br>牧野フライス製作所 井上 真一社長

この人に聞く2016
牧野フライス製作所 井上 真一社長

要望に合わせ創造と変革  「色々と教えると新しい経営はできないだろうから、あなたには多くは教えない」―。工作機械業界のカリスマ、牧野二郎前社長がそう伝えるほど、全幅の信頼を置く。 顧客重視をより進化  入社時に「機械もソ…

この人に聞く
トヨタ自動車 大竹 知之部長

100年に一度の変革期 どうする金型づくり  エンジン、トランスミッション、カムシャフト、最近では電池やモータなど、自動車を動かすほぼ全ての内蔵部品の金型を手掛けるトヨタ自動車のパワートレーン工機部。豊田章男社長が「自動…

【この人に聞く】MOLDINO・鶴巻 二三男社長

切削工具メーカーのMOLDINO(東京都墨田区、03-6890-5101)は金型加工に特化した工具の開発に取り組んでいる。昨年4月にはこれまでブランド名だった「MOLDINO」を社名に改め、これまで以上に金型加工の課題を…

日本発条がササヤマと資本提携する理由【ササヤマ challenge!Next50】

自動車のシートなどを手掛ける日本発条は2015年、ササヤマと資本提携した。日本発条にとって技術連携のパートナーであるササヤマはどんな存在なのか。魅力、期待すること、今後取り組みたいことは。シート生産部の岡井広行氏と安田雅…

コアコンセプトテクノロジー CTO 田口紀成氏に聞く
〜DXがなぜ必要か〜

 あらゆる業界で叫ばれているDX(デジタルトランスフォーメーション)。各企業には、デジタル技術を使い、ビジネスモデルや組織、働き方など会社そのものの構造を大きく変えていくことが求められている。金型業界も例外ではない。次代…

トピックス

関連サイト