金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

OCTOBER

22

新聞購読のお申込み

【この人に聞く】テクノア社長・山﨑耕治氏「システムにおける中小企業の専門医として導入検討時の不安を取り除く」

 一品一様の世界である金型産業は生産や技術面で人に頼ることが多く、デジタル化が喫緊の課題。そこで生産管理システムで生産性向上や経営のサポートに取り組んでいるのがテクノア(岐阜県岐阜市)だ。金型など中小企業向けで多品種少量生産型に特化した生産システムを開発し、工程進捗管理などで課題を持つ金型メーカーに訴求している。どのような考えで製品を開発し、課題に対応しているのかを、同社の山﨑耕治社長に聞いた。

多品種少量生産の専門医

1974年生まれ、大阪府出身。福井大学工学部、2000年テクノア入社。生産管理システム「TECHSシリーズ」の営業に従事。08年からTECHS事業部長、営業統括部長を歴任。14年執行役員、取締役、16年社長に就任。

   

顧客の不安を取り除く

販売状況について。

 おかげさまで生産管理システム「TECHS」シリーズは1994年の発売以降、順調に実績を伸ばし、全国3800社のユーザーに導入してもらっている。金型など中小企業で多品種少量生産型の製造業に特化しているのが特長で、工程進捗管理に重きを置き、バーコード付き指示書を出し、現場はハンディターミナルで読み込むと、どの工程まで進んだか可視化できる仕組みだ。特に金型は部品の納入をはじめ、特急対応や修理・メンテナンスなど日々のスケジュール管理が難しく、組付け時にすべての部品が揃っていないと成立しない。それを可視化することに重点を置いた。

システムの特長は。

 金型はどんな工程で製作するか現場判断も多い。当社のシステムは最初のマスターデータに縛られず、走りながら修正できる柔軟な仕組み。また、ユーザーは生産管理がほしいのではなく、生産管理を使った後の姿が見たいと思っているので、生産管理以外の要素にも注力している。

どんなことですか。

 製造原価の見える化をサポートしている。実績ベースで原価を算出しないと、いくら金型にコストがかかり、本当に儲かっているのか判断ができない。これを紙ベースや人の経験で算出すると、異なる結果になる。これはITを活かせる部分だ。また、中小企業診断士が社内に在籍しITを次の経営にどう役立たせていくかをサポートしている。少しずつ実績も出ていて、ユーザーの中にはIT経営力大賞を受賞するなど、年間100件ほどの喜びの声が届いている。「顧客の価値をみんなで生んでいこう」と社内も活気をもって取り組んでいる。

今後について。

 中小企業白書(2018年版)をみると、生産・販売など基幹業務統合ソフト(ERP)を導入している企業は約5割。十分活用できているのは全体の2割ほどで、まだ十分活用されていない。国の施策でシステム導入の機運は高まる中、当社はシステムの総合医ではなく中小企業向けの専門医として、事例紹介セミナーや導入実績を持つユーザーへの工場見学会を通じ、企業に導入前・後の効果を見てもらい、導入検討時の不安を取り除こうと工夫している。直近は「A‐Eyeカメラ」によるIoTに取り組み、IoTで何ができるのか事例を集めたアイデアブックを無料公開している。ユーザーに何か気づいてもらうことが我々の役目の1つだと思っている。

金型新聞 2020年9月10日

関連記事

難しい金型<br>日本へUターン

難しい金型
日本へUターン

日本工業大学大学院教授 横田 悦二郎氏に聞く 「ユニット」や「軽量化」がカギ  日本金型工業会で学術顧問を務める、日本工業大学大学院の横田悦二郎教授は「国内に戻る金型は出て行った時と内容は異なり、高度化して回帰している」…

田口型範社長・田口 脩一郎さん 70年以上続く鋳造用金型メーカーを継いだ

埼玉県川口市で70年以上続く老舗鋳造用金型メーカーに生まれた。幼い頃から創業者の祖父に「3代目はお前だ」と言われて育ってきた。 高校に上がる頃には自然と会社を継ぐことを意識した。大学は理工学部に入り、機械工学を学んだ。後…

【金型応援隊】日本精密機械工作 プロに喜ばれるツールを

「徹底したプロ志向を目指した」と語るのは、日本精密機械工作の伊藤俊介社長。このほどハンドグラインダー、「リューターフレックス極 LF‐300」を発売した。 「LF‐300」は、同社の過去の人気商品「リューターフレックス」…

特集〜世界の需要どう取り込む〜
金型のサムライ世界で挑む –欧州–

 新天地を求めて、世界に進出していった日本の金型メーカーは、何を考え、どんな苦労や課題を乗り越えて、取り組みを進めてきたのか。また、さらなる成長に向け、どんな青写真を描いているのか。中国、タイ、メキシコ、アメリカ、欧州そ…

リーダーの条件[part1] 経営のカリスマが心掛けていること

サイベックコーポレーション 顧問 平林 健吾氏  1944年生まれ、長野県出身。工作機械メーカー、プレス部品メーカーを経て、73年に信友工業(現サイベックコーポレーション)を設立。2009年顧問。18年旭日単光章を受賞。…

トピックス

関連サイト