培った技術活かす 自動車の電動化、医療関連や半導体関連需要の拡大などで、国内のものづくり産業に求められるものも大きく変化している。自動車の電動化ではモータやバッテリーなどの電動化部品や材料置換による軽量化部品などが増えて…
学生教育でCAEを活用 岩手大学【特集:シミュレーションの使い方再発見!!】
CAEを活用しているのは企業だけではない。岩手大学では、樹脂流動解析ソフト「3DTimon」(東レエンジニアリングDソリューションズ)を学生の教育で利用している。樹脂を流す際、最適なゲート位置などを自らの勘や経験から教えるのではなく、数値を用いた指導をしている。同大学で学生の指導に携わっている吉田一人特任教授に話を聞いた。

三現主義ベースに技術を数値化
岩手大学大学院の「金型・鋳造プログラム」の授業で、「3DTimon」を活用しています。例えば、学生は樹脂を流す際、どこから流せば良いか分かりません。CAEを活用することで、樹脂がどのように流れるかをイメージできるため、ウェルドラインが発生しない最適なゲート位置を科学的に理解することができます。
昔の金型設計は、設計者の勘や経験で行われることがほとんどでした。そのため、設計を教わるのではなく、トライ&エラーを重ね、経験を積むことで覚えていきます。しかし、教育機関で学生に教える場合、それだけでは不十分です。勘ではなく数値を用いて科学的な根拠を伝え、理解してもらうのが望ましい。そこで、2006年から授業でCAEを活用しています。
近年、CAEの重要度は高くなってきていると感じます。ものづくりの製品サイクルが短くなっているため、金型も短納期化が求められており、試作をなくして、良い金型を一発で作らなくてはならない。今後もこの流れは続くと思われるので、学生時代からCAEを使えるようになっておいたほうが良いと思います。
一方で、CAEを使えるだけでは駄目です。学生には、自ら設計した金型を実際に作り、シミュレーション上と何が違うのかを検証してもらいます。そして、うまくいかない理由を自分で考え、試行錯誤してもらうことが重要です。シミュレーションは現物に近いことは事実ですが、あくまで参考でしかない。
私は「三現主義(現場・現物・現実)」を重視しています。机上のデータを用いることは大切ですが、学生には現場で実物を見て、良し悪しを判断できる人材になって欲しい。
今後、熟練者が減る中、今と同じレベルの仕事ができなければなりません。そのためには、技術を数値化することが重要です。CAEはその手助けとして、うまく活用していくのが良いのではないでしょうか。
金型新聞 2023年5月10日
関連記事
勝負は中身だ 他社よりも一歩先へ 好循環生まれる体制を 〜技術開発の必要性〜 1939年生まれ、滋賀県出身。立命館大学法学部卒、61年に大垣市内にある会社に就職したのち、68年に同社(大垣精工)を創業。超精密プレス金型…
切削は高速、研削は高効率 超硬合金を金型材料として使う動きが広がりつつある。これまでは長寿命化などのメリットはあるが、加工しづらいことがボトルネックとなり、一部の金型でしか利用されていなかった。しかし近年、切削加工がで…
デジタル技術を活用してビジネスモデルや業務プロセスを変革するデジタルトランスフォーメーション(DX)。金型でもその重要性は誰もが認めるところ。しかし、金型づくりでは、人が介在する部分が多かったり、デジタル化を進めづらかっ…
生産性の向上、人手不足への対応、人を介さないことによる品質向上—。目的や狙いは様々だが、金型メーカーにとって自動化は待ったなしだ。しかし、自動化には様々な変化が伴う。機械設備の内容もこれまでとは異なるし、自動化を進めるた…