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ワンパスでミリ単位の加工が可能な研削技術【金型テクノラボ】
精密金型の製造では、エンドミルでの切削やワイヤー放電加工の後に成型研削を行うのが一般的。しかし、研削量が少なく加工に時間がかかるのが課題だった。本稿では、ワンパスでミリ単位の材料除去を可能とする「クリープフィード研削技術」を用い、複雑なプロファイル形状の金型や刃物、機構部品を高速に加工できる技術を紹介する。
クリープフィード研削とは
クリープフィード研削とは、砥石でワーク材を研削する際、深い切り込み量を与えながらゆっくりと研削送りを行うことで、ワンパスでミリ単位の研削を可能とする技術。
元々、同技術は日本でも以前から知られていた。しかし、実際にその工法を採用するには、研削盤に非常に高い剛性や主軸スピンドルにもパワーが必要になるため、研削焼けやビビりにも対応をしなければならないなど課題も多かった。
それゆえ、一般的な平面研削盤では上手く加工をすることが難しく、日本ではタービンブレード加工や、ねじ転造ダイス、油圧ポンプ部品の加工などニッチな加工業界での採用にとどまっていた。
金型業界でも、パンチ・ダイスや刃物、機構部品などの加工・再研磨に活用できるにもかかわらず、その加工法が取り沙汰されることはなかった。
専業メーカー、ブロームユング社
ドイツ・ブロームユング(Blohm Jung)社は、そんなクリープフィード研削盤の専業メーカーとして、ニッチな業界向けに以前よりクリープフィード研削盤を提供してきた。特にタービンブレード業界では、その存在は広く知られている。特に、ブレード翼の根元にあたる「クリスマスツリー」とも呼ばれる部品のプロファイル研削で有名だ。
同部品はブレードの取り付け部の波形状をあらかじめ最終的な波形状にするために、ダイヤモンドロール搭載テーブルドレッサーで成型した砥石を用いて、台形のインコネル材から砥石で一気にミリ単位で削り込む。このようにプロファイル形状を一気に完成させる工法を確立させている。
機械的な特長
こうした加工を可能にする、ブロームユング社のクリープフィード研削盤は、研削盤の要となる土台にモノブロックのダクタイル鋳鉄を用い、その研磨テーブル上にX-Z軸精密リニアガイドウェイを直接締結。またY軸コラムに搭載の研削主軸は最大62kWの可変速ドライブを搭載している。
クリープフィード研削で必要な材料除去量を得るため、砥石の目詰まりを防止しながら摩擦力を抑えて研削効率を確保するために、研削クーラントは50barで高圧噴射。また、研削場所にピンポイントに狙い撃ちするための、ノズル追従システムを搭載した。それにより、クリープフィード研削盤で必要な深い切込みを与えた場合でも、焼けやビビりを発生させず安定した研削が可能になる。
日本の金型業界に参入
日本国内では、ブローム社の総代理店であるイリス(東京都品川区)が、2021年から、この技術を金型業界の型・部品の製造の工法革新になる手法として日本市場に提案している。これまでインターモールドや研削向けの専門展「グラインディングテクノロジージャパン」などの展示会に出展。実績のあるねじ転造ダイスの平面プロアイル研削に加え、特に精度が求められるFBパンチ・ダイスや再研磨、ダイセット向けに提案してきた。
加工時間を1/18に
では、金型ではどれほどの効果が得られるのか。同研削盤でファインブランキング(FB)パンチを製造する欧州の企業では大幅な加工時間の短縮に成功している。従来はワイヤー放電での形状加工に18時間、表面をダイヤモンドラップによる磨きをかける必要があったパンチを、2個取り60分での成型を可能にした。また、加工表面も研削仕上げ品質を確保できているという。
インターモールド名古屋で同技術を紹介
ブロームユング社は今年6月開催の「インターモールド2023名古屋」にも出展する。また、10月の「メカトロテック2023」では、ブロームユング社として初めてクリープフィード研削盤「Planomat XT608」の実機を展示する予定で、展示後即納可能であり、購入相談も受け付けている。
イリス
- 執筆者:MPIテクノロジー部 平井 誠治氏
- 住所:東京都品川区上大崎3–12–18
- 電話番号:03・3443・4051
記者の目
超精密部品が増加している中で、精密研削技術は今後もより重要になる。一方で、これまで切込み量の問題から加工時間には課題を抱えていた。クリープファイド研削をうまく活用できれば、改善というレベルではないのほど、時間短縮も可能になりそう。インターモールド名古屋でも注目したい(山)。
金型新聞 2023年5月10日
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