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小出製作所 大型化へ対応し、持続可能な企業体目指す【Innovation〜革新に挑む〜vol.4】

自動車の電動化によって、手掛ける金型が変化している金型メーカーは少なくない。ダイカスト金型メーカーの小出製作所(静岡県磐田市、0538・37・1147)もその1社。これまで主力だったエンジン関連の需要が減り、モータやバッテリーなどのEV関連の需要が増加している。金型が大型化する中、MOLDINO(モルディノ)の工具を駆使し、新たな加工課題に挑む。“持続可能な企業体”を目指し、取り組みを進める同社を取材した。

モータやバッテリーなどの金型が増加している

EV関連の金型が増加

小出製作所は型締め力800tクラスの中小物部品用から3000tクラスの大物部品用まで幅広いダイカスト金型を得意とし、年間約50~60型を生産する。これまでは二輪・四輪車のミッションケース、シリンダブロック、オイルパンなどの金型を主力とし、エンジン関連の金型で売上の8~9割を占めていた。

しかし近年、自動車の電動化によって、手掛ける金型が大きく変化。モータハウジングやバッテリーケースなどといった電気自動車(EV)に搭載される部品の金型が増加している。「エンジンの開発案件が少なくなり、関連部品の新規金型の需要は減少している。一方で、EV関連の金型を手掛けることが多くなっている」(小出悟社長)。

左から鈴木克征部長、小出悟社長

進む大型化、深物への対応

EV関連の金型で特に顕著なのが大型化だ。「モータハウジングの金型は当初1650t程度だった。それが部品の一体化によって、だんだん大型化が進み、現在では2500t程度になっている。大物金型をいかに効率良く加工するかが目下の加工課題だ」(生産企画部の鈴木克征部長)。

特に課題となっているのが深物への対応だ。これまで手掛けてきたエンジン関連の金型でも深物加工は多かったが、EV関連の金型で大きく異なるのが加工精度。モータハウジングの金型では、深さ300㎜の底面で100分の1㎜、立壁で100分の2~3㎜の加工精度が要求されるという。

「金型の構造が中子交換式となり、中子をはめ込む母型のポケット穴に高い精度が要求されるようになった」(鈴木部長)。従来の工具や工法でも加工は可能だったが、加工時間の長さが課題となっていた。

門型マシニングセンタ

多刃仕様工具で加工時間半減

そこで導入したのが、MOLDINOの刃先交換式工具「アルファポリッシュミルVタイプ(ASPV形)」。従来使用していた工具は2枚刃で等高加工を行っていたが、多刃仕様の「ASPV」では送り速度を向上させることが可能。φ35㎜の工具で加工した際、加工時間をほぼ半分まで短縮することができたという。

目下の課題は加工精度の向上。「寸法精度内に一発で入るように加工したい。現状は一回でできることもあれば、複数回加工することもある」(鈴木部長)。また、今後は工具径がφ21㎜以下での加工にも取り組む。「L/Dが大きくなるため、加工難度がさらに上がる。導入に向けて加工テストを重ねている」(鈴木部長)。

小出製作所ではこれまでもMOLDINOの工具を多く用いてきた。ソリッド工具は荒加工や、深いリブなどの特殊な仕上げ加工で採用し、仕上げ加工では刃先交換式工具も使用している。「製品形状の深い仕上げ加工などでは、他社にはない長さの工具があり、重宝している」(鈴木部長)。

刃先交換式エンドミル「ASPV」(MOLDINO)

長崎に製造拠点を新設

一方、短納期化が進む中、さらにリードタイムを短縮するには、工具の改善だけでは不十分だという。現在、加工段取りを効率化する取り組みを進めている。「より簡単かつ早く段取りができる仕組みの構築を検討している」(鈴木部長)。

また、今後の需要拡大が予測される超大型ダイカスト技術「メガキャスト」への対応も進める。2021年に長崎工場を新設し、本社にあった一部の門型マシニングセンタや横中ぐり盤を移設した。同工場は60tの超大型クレーンを設置することも可能。EVの車台やバッテリーケースなどを一体成形する「メガキャスト」の採用が広がる中、型締め力が6000tを超える超大物金型の製造やメンテンナスなどが可能な体制を整えている。

工具取り付けを自動化するロボットシステム

事業を多角化し、持続可能な企業体へ

小出製作所では現在、金型製造だけでなく、多角的な事業展開を目指している。昨年には本社工場に真空ガス軟窒化炉を設備。スリーブ内部に特殊な処理を施すことで性能を向上させる「Ko‐Cas(コーキャス)処理」を開発し、今年から本格的に受注を開始した。同処理は離型剤塗布量の低減効果などが見込め、金型の付加価値向上につながるという。

また、人工知能(AI)やロボットの開発を進めるAI・FA開発事業も開始する。現在、ツールホルダへの工具取り付けを自動化するロボットシステムを開発している。将来的には社内で活用するだけでなく、外販も行う。同事業では今後も製造現場の自動化やデジタル化につながるさまざまなシステム開発に取り組んでいく考えだ。

金型製造事業ではMOLDINOとともにより付加価値の高い金型加工に取り組む。加えて、表面改質事業やAI・FA開発事業などの新規ビジネスを展開し、変化の激しい時代に挑んでいく。「持続可能な企業体に向けて、今後もさまざまな取り組みを進めていきたい」(小出社長)。

真空ガス軟窒化炉
  • 本社: 静岡県磐田市森本1045
  • 電話:0538・37・1147
  • 代表者:小出悟氏
  • 創業:1963年
  • 従業員:87人
  • 事業内容:ダイカスト用金型(小型〜大型)、鋳造用金型の設計・製造など

金型新聞 2023年7月10日

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