金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

DECEMBER

16

新聞購読のお申込み

ハイテン加工のカギはCAE【特集:プレス加工最前線】

自動車部材のハイテン化が進み、CAEの需要は一層高まっている

スプリングバック、材料特性のばらつきに対応

ハイテン材加工に不可欠とされるCAE解析。すでに多くの金型メーカーが活用し、生産性や品質の向上につなげている。近年は自動車部材のハイテン化が進み、これまで以上に強度の高い超ハイテン材の採用や新たにハイテン材を用いる部品が増加。CAEの需要はより一層高まっている。

CAEメーカーも日進月歩で開発を続け、ハイテン化への動きに追従する。特に強化している一つが、スプリングバックへの対応だ。ハイテン材はその強度からスプリングバックが大きく、金型づくりではいかに変位量を見込み、補正するかが重要となる。

こうした見込み補正機能はこれまでも多くのCAEに搭載されてきたが、近年注力されているのが自動化機能だ。オートフォーム社では、これまで人が補正値を入力しながら行っていた見込み補正を自動でできるモジュールを開発。検証スピードの向上や効率化を提案している。

また、JSOLの「JSTAMP」でもスプリングバックの見込み作業を効率化する「金型見込み機能」を強化。従来手作業で行っていた多くの作業を自動化し、寸法公差を満たすまで成形計算、スプリングバック計算、見込み計算を繰り返し自動で実行可能にした。

オートフォームジャパンの今井洋徳部長は、「ハイテン化が進むと、これまでの知見が通用せず、見込み通りにいかないことが多くなり、シミュレーションの回数が増える。作業効率を上げるために、自動化やスピードを求める声は多い」と話す。

スプリングバックに加え、ハイテン材のもう一つの大きな課題が材料特性のばらつきだ。ハイテン材は材料特性値のばらつきが大きくなるため、シミュレーションと実加工に乖離が生じ、課題となっていた。CAEメーカーは材料特性値のばらつきを考慮した解析技術の開発や機能強化に取り組んでいる。

オートフォーム社ではばらつきをバーチャル上で再現し、不具合を事前検証できるモジュールで対応する。今年4月には部品単体だけでなく、複数の部品が組み合わされたユニット品の検証も可能な機能を追加。材料特性値にばらつきがあっても寸法精度の要求を満たすためのCAE検証を可能としている。

また、ハイテン材加工は成形時に大きな荷重が発生するため、金型にたわみが生じる。JSOLの「JSTAMP」では、金型のたわみを考慮したシミュレーション技術「強連成金型たわみ機能」で、被加工材の成形と金型の変形を同時に計算し、さまざまな不具合の予測精度を向上させている。

今後、ハイテン化が進むことでCAEへの要求はますます高度化することが考えられる。CAEメーカーは開発を進め、解析精度の向上や使い勝手の向上などを図り、対応していく。CAEのさらなる進化に注目だ。

金型新聞 2023年7月10日

関連記事

水素エンジン車に生かされる型づくり技術とは?【変わるトヨタの型づくり】

PART3:新たなクルマづくり 若手の挑戦と育成両立 新たなモビリティの一つである、水素エンジン車でも新たなモノづくり技術が生かされている。昨年7月に大分県のオートポリスで行われたスーパー耐久シリーズ。ここに出走したカロ…

切削条件を最適化
データ・デザイン

Eureka Chronos  データ・デザインが手掛ける「Eureka」は物理ベースの加工解析エンジンを搭載したNC切削やロボットに対応したマシン・シミュレータ。  切削条件を最適化する機能の「Eureka …

三菱マテリアル 高硬度鋼加工用エンドミルに小径サイズを追加

三菱マテリアル(東京都千代田区、03-5252-5200)はこのほど、高硬度鋼加工用エンドミルシリーズの2枚刃ロングネックボールエンドミル「VFR2XLB」にボール半径(RE)0.3㎜以下の小径サイズを追加し、発売した。…

製造プロセス研修開催<br>中産連

製造プロセス研修開催
中産連

生産シミュレータを活用  中部産業連盟はこのほど、金型製造プロセスデジタル設計人材育成講座を、中産連ビル(名古屋市東区)で開催する。  受講対象者は製造部門や生産技術部門、生産管理部門の従業者。バーチャル工場を構築できる…

加工現場でも対応進むカーボンニュートラル CO2排出量の見える化【特集:2022年金型加工技術5大ニュース】

金型づくりの世界では、自動化やAM、脱炭素向けなどの最新技術が数多く登場し続けている。その進化は止まることがなく、4年ぶりに開催されたJIMTOF2022でも多数の最新技術が披露され、注目を集めた。今年最後となる本特集で…

トピックス

関連サイト