DXの本質は利益を生み出すことにある。以降では、DXによって「売上げを上げて利益を生み出す」方法と「コストを下げて利益を生み出す」企業のそれぞれの取り組みを取材した。 CAEの活用、データ作成の効率化 自動車用プレス金型…
ハイテン加工のカギはCAE【特集:プレス加工最前線】

スプリングバック、材料特性のばらつきに対応
ハイテン材加工に不可欠とされるCAE解析。すでに多くの金型メーカーが活用し、生産性や品質の向上につなげている。近年は自動車部材のハイテン化が進み、これまで以上に強度の高い超ハイテン材の採用や新たにハイテン材を用いる部品が増加。CAEの需要はより一層高まっている。
CAEメーカーも日進月歩で開発を続け、ハイテン化への動きに追従する。特に強化している一つが、スプリングバックへの対応だ。ハイテン材はその強度からスプリングバックが大きく、金型づくりではいかに変位量を見込み、補正するかが重要となる。
こうした見込み補正機能はこれまでも多くのCAEに搭載されてきたが、近年注力されているのが自動化機能だ。オートフォーム社では、これまで人が補正値を入力しながら行っていた見込み補正を自動でできるモジュールを開発。検証スピードの向上や効率化を提案している。
また、JSOLの「JSTAMP」でもスプリングバックの見込み作業を効率化する「金型見込み機能」を強化。従来手作業で行っていた多くの作業を自動化し、寸法公差を満たすまで成形計算、スプリングバック計算、見込み計算を繰り返し自動で実行可能にした。
オートフォームジャパンの今井洋徳部長は、「ハイテン化が進むと、これまでの知見が通用せず、見込み通りにいかないことが多くなり、シミュレーションの回数が増える。作業効率を上げるために、自動化やスピードを求める声は多い」と話す。
スプリングバックに加え、ハイテン材のもう一つの大きな課題が材料特性のばらつきだ。ハイテン材は材料特性値のばらつきが大きくなるため、シミュレーションと実加工に乖離が生じ、課題となっていた。CAEメーカーは材料特性値のばらつきを考慮した解析技術の開発や機能強化に取り組んでいる。
オートフォーム社ではばらつきをバーチャル上で再現し、不具合を事前検証できるモジュールで対応する。今年4月には部品単体だけでなく、複数の部品が組み合わされたユニット品の検証も可能な機能を追加。材料特性値にばらつきがあっても寸法精度の要求を満たすためのCAE検証を可能としている。
また、ハイテン材加工は成形時に大きな荷重が発生するため、金型にたわみが生じる。JSOLの「JSTAMP」では、金型のたわみを考慮したシミュレーション技術「強連成金型たわみ機能」で、被加工材の成形と金型の変形を同時に計算し、さまざまな不具合の予測精度を向上させている。
今後、ハイテン化が進むことでCAEへの要求はますます高度化することが考えられる。CAEメーカーは開発を進め、解析精度の向上や使い勝手の向上などを図り、対応していく。CAEのさらなる進化に注目だ。
金型新聞 2023年7月10日
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