金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

JANUARY

30

新聞購読のお申込み

鳥羽工産 甦れ!往年の名車たち【金型の底力】

「コロナ禍で航空機など需要が落ち込み、試作車市場も変化している」と語ったのは鳥羽工産の傍島聖雄社長。同社は金型製作(プレスや射出成形)から量産(少ロット)まで一貫生産体制を強みに、これまで自動車の試作型や試作車の製作、航空機部品などを手掛けてきたが、時代の変化を感じ取った傍島社長は新市場の開拓に踏み切った。

大型プレス機など設備も充実

今年で創立65年を迎える同社は航空機向けの治工具製造から得た鋳造技術を活かし、自動車の試作や開発に特化した金型から部品製作、レーザー加工、車体組立まで行う。プレス機(加圧力2000㌧)、射出成形機(型締め力3000㌧)の大型設備や3Dスキャナなども保有し、様々な自動車メーカーの試作車を手掛けてきたが、近年は「試作車作りもシミュレーションが主流となり、試作開発案件も減少している」と傍島社長。市況の変化は製造現場のモチベーション低下にもなり、何か新しい市場はないかと模索していた。

目を付けたのが旧車の部品のリバースエンジニアリング。昨今、旧車ブームで、金型や部品製作など一貫生産体制の強みを活かせると、大橋潔専務と社内プロジェクト(選抜チーム)を立ち上げ市場調査を開始する。最初に手掛けたのはフェアレディZ(日産)のS30のフェンダー部品だ。

フェアレディZ S30のフェンダーを3Dスキャン

だが、図面もなく当時の部品を蘇らせるのは簡単ではない。「やり始めると現代の車は1部品で構成されているが、当時の車は複数の部品で構成されていることが分かった」と大橋専務。そうしていると、トヨタ自動車のトヨタスポーツ800(通称ヨタハチ)のオーナーと出会い、ホイールキャップのリバースエンジニアリングに挑戦する。「作っても何かが違う。オーナーの方に指摘してもらい、前期型・後期型で形が異なることが分かり、改良を加えた」と培った金型や部品製作のノウハウを活かし、見事にホイールキャップ復活に成功。展示会にも出展し、旧車のレストア需要に応える。傍島社長は「まだ需要は少ないが、秘密の案件も動き出している。当社ではボデー部品(インナー・アウター)はもちろん、内装部品以外なら何でも作れることを強みにしたい」。現在、自動車のアフターマーケット市場は20兆円とされ、今後も成長すると言われる。「旧車の部品作りは当社の技術を網羅したもので、現場のモチベーション向上やブランディングに活用したい」とし、インスタグラムに『鳥羽部品商会』を立ち上げ、将来は事業化も見据える。

トヨタスポーツ800の前期型・ホイールキャップ

傍島社長が考えるのは自動車試作、航空機部品に次ぐ第3の柱の構築だ。豊富な技術、設備を活かし、旧車のリバースエンジニアリングほか、様々な企業の研究開発支援も行っている。そこで『顧客ニーズに応じた金型提案』を掲げ、型の材質や納期、ショット数、型不要など分かりやすく体系化することで、型費を抑えたい、またはショット数を増やしたいなど様々なニーズに対応し、顧客も安心して製作依頼ができる。「量や質に応じた型提案を武器に、鉄道や建機など顧客開拓につなげたい」と傍島社長。自動車業界はEV化やデジタル化で変化の真っ只中にあるが、チャンスも広がっている。金型から部品生産まで一貫生産体制で得た経験と技術を活かし、新市場の開拓は始まったばかりだ。

傍島 聖雄社長

会社の自己評価シート

金型から部品製造まで一貫生産できる「技術力」「チーム力」「設備力」は高い評価で様々なニーズに応えることができる。また、旧車のリバースエンジニアリングなど次世代を見据えた「対応力」や「投資力」も同社の魅力の1つ。今後はPRや収益力も高めていく。

会社概要

  • 本社: 岐阜県可児市姫ケ丘市4-1-5
  • 電話: 0574・60・1500
  • 代表者: 傍島聖雄社長
  • 創立: 1958年
  • 従業員: 308人
  • 事業内容:自動車や航空機部品の金型設計・開発・製作、試作車、旧車部品のリバースエンジニアリング。

金型新聞 2023年7月10日

関連記事

【鳥瞰蟻瞰】三条市立大学学長・アハメド シャハリアル氏 「創造性豊かなテクノロジスト」の育成を

技術とその価値を理解し市場を創る人を育成企業と共に未来考える場に 三条市立大学は、4月に開学した、技術とマネジメントに特化した一学部一学科で「創造性豊かなテクノロジスト」の育成を目的としています。その定義は、技術が生み出…

田岡秀樹氏

【プレス型特集】
本田技研工業 田岡 秀樹氏に聞く
プレス型メーカーの目指すべき方向性

自分の強み生かす道を 本田技研工業 完成車新機種推進部 主任技師 田岡 秀樹氏に聞く 高級車か、低価格車か、2極化も 金型なくして新車開発ならず 自動運転、ライドシェア、電気自動車(EV)の進化―。自動車業界では急激な変…

倉敷機械 1台で複数加工がこなせる機械、金型加工の効率化を実現

工作機械メーカーの倉敷機械は、金型加工の効率化を実現する機械の提案を強化している。 今年1月には5軸マシニングセンタ(MC)に横中ぐり機能を搭載した「KTR‐1200」を発売。この新型は中ぐり主軸を繰り出すことで、特殊工…

【新春特別インタビュー⑤】稲垣金型製作所取締役・稲垣 武洋氏「イノベーションを起こし新しい収益モデルを創る」

常識にとらわれない金型 イノベーションを起こし新しい収益モデルを創る 〜新ビジネス〜  1975年生まれ、静岡県出身。98年立命館大学卒業後、富士通に入社し、システム販売などに従事。2004年稲垣金型製作所に入社、18年…

【金型応援隊】ワンテラス 豊富な人材ネットワークで日本のものづくりに貢献

ベトナム人技術者の採用支援 ワンテラスは、ベトナムを中心にアジア人の機械加工、設計に特化した人材の採用支援を行う。昨年度は、168人のベトナム人らの日本企業への採用をサポートした。 高い実績を誇る理由は豊富な人材のネット…

トピックス

関連サイト