金型業界のいまを届けるニュースサイト「金型しんぶんONLINE」

AUGUST

10

新聞購読のお申込み

スコープ3の対応進む【特集:カーボンニュートラルに向けたはじめの一歩】

2050年に温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル(CN)」の実現を目指す動きが加速している。欧州の規制強化などに伴い、サプライチェーン(供給網)全体でのCO2排出量を示す「スコープ3」への対応を進める企業が増加。国内の自動車メーカーは、CO2排出量の把握・削減を取引先に求め始めており、金型メーカーも無関係ではない。また、足元では電気料金の高騰が企業経営を圧迫しており、CNの有無に関わらず、エネルギー使用量削減に取り組む必要がある。

※トヨタ自動車資料より引用

供給網全体で脱炭素達成へ

2050年のCN実現に向け、直接的または間接的なCO2排出量を示す「スコープ1、2」に加え、サプライチェーン全体での排出量を示す「スコープ3」の対応を進める企業が増えている。背景にあるのは、欧州を中心とした「スコープ3」開示への動きだ。

ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)は6月、気候変動に関する情報開示の国際的な基準を公表。この基準に従う企業は、今後「スコープ3」の開示が必要になってくる。

規制が厳しい欧州などグローバルにサプライチェーンを持つ世界の大手企業は、「スコープ3」の削減に先行して取り組んでいる。米アップルはサプライヤーと協力し、2030年までに全世界のサプライチェーンをCNに転換することを発表した。同社の200社以上のサプライヤーは、すべてのアップル製品製造時に風力や太陽光などのクリーン電力使用を約束しているという。

日本の自動車メーカーも「スコープ3」を視野に入れ、脱炭素化を進める。トヨタ自動車は2050年に向けて、ライフサイクル全体でCN実現を目指している。サプライチェーン全体でCNへ取り組み、製造や物流なども含めたCO2排出量を削減する。

また、同社は5月に開かれた「人とくるまのテクノロジー展」で、CNをテーマに講演を行った。講演では、CN先行開発センターの荻村友彦氏が、仕入先との連携について言及。サプライチェーン全体でのCO2排出量の見える化を目指し、ティア1(一次サプライヤー)の総量把握から、品目単位の把握まで検討している。これに加え、同社のノウハウを仕入先と共有し、CO2削減活動を共に行っていく考えだ。

ホンダは2050年に、同社が関わるすべての製品と企業活動を通じたCNを目指している。日産自動車も材料採掘から製造、走行、廃棄に至る車のライフサイクル全体におけるCNを2050年までに実現する目標を発表した。

風力発電機 ※トヨタ自動車資料より引用

電気代高騰、喫緊の課題

こうした国内外の動きは、金型メーカーも無関係ではない。すでにCO2削減、排出量把握の要請を受けた企業も出てきている。ある金型メーカーでは取引先から前年比約27%のCO2排出量削減を求められたという。要請に応じられない場合、取引停止や罰則といった厳しい措置ではなく、製造現場に入り、改善点や対策を教えてくれるケースもあるようだ。

一方、金型メーカーの喫緊の課題となっているのはCNではなく、電気料金の高騰だ。足元では「仕事量が少ない上に電気料金が高いので、より一層経営を圧迫している」という声も挙がっている。このような現状から、エネルギー使用量削減の一環としてCNに取り組んでいる企業も少なくない。

金型新聞 2023年9月10日

関連記事

リーダーの条件Part3
いま活躍するリーダーの心得

 新型コロナで需要が減速し、自動車の電動化で産業構造が変わるかもしれない。先の見通しにくい混沌とする時代に、リーダーはどういったことを心掛け、自らの指針としているのか。時代をリードに考えを聞いた。 伊藤製作所 伊藤 澄夫…

日本金型工業会 魅力度WGリーダー 平岡良介氏に聞く【特集:日本金型工業会第14回定時総会】

ラジオ、YouTube、インスタ、金型フェス 「魅力度WG」が取り組むのは、金型の魅力を世の中に発信すること。その主なターゲットは工学系の大学や工業高校の学生です。金型に興味を持ち、金型業界で働いてみたいと思う学生を増や…

武林製作所 「マスクのほね」がヒット」

培った技術活かす 自動車の電動化、医療関連や半導体関連需要の拡大などで、国内のものづくり産業に求められるものも大きく変化している。自動車の電動化ではモータやバッテリーなどの電動化部品や材料置換による軽量化部品などが増えて…

成形品の一体化や多数個取り【特集:進む設備の大型化】

既設機よりも大型の設備を導入する金型メーカーが増えている。成形品の一体化や成形工数の増加、多数個取りなどによって、金型が大型化し、既設機だけでは対応が難しくなっていることなどが背景にはあるようだ。各社、大型の加工機やプレ…

特集 : 金型づくりを変える6大テーマ

 次世代自動車による自動産業の変革や、少子高齢化による人手不足など金型産業を取り巻く環境は大きく変化し、新型コロナウイルスの感染拡大によって、そのスピードはさらに加速している。一方で、金型づくりを支える製造技術も進化を遂…

トピックス

関連サイト